短編アニメーション
岸辺のふたり – Father And Daughter
第73回アカデミー賞短編アニメ賞受賞作品
観た人の数だけ答えがあるわずか8分の名作線画アニメーション
短編アニメーション『岸辺のふたり – Father And Daughter』とは
「スクリーンで見たい!」。
一人ひとりの感動が渦となって、たった8分間のアニメーションが奇跡をおこした。
人が人を想い続ける切なくも美しい気持ちを、わずか8分の物語の中に豊かに謳いあげた奇跡のアニメーション『岸辺のふたり』。
2003年6月にDVD発売後、静かで深い感動の波は広がり続け、「スクリーンでぜひ見たい」という熱いリクエストが殺到、ついに翌年35mmプリントでの大スクリーンでの上映が決定。
わずか8分間の上映時間の短さとともに、DVD発売後のロードショーは、世界でも異例な出来事。
日本からのこの信じられない劇場公開のニュースに、マイケル・ドュドック・ドゥ・ヴイット監督自身も驚いた。
そして一年を通じての再上映。
2001年米国アカデミー賞、英国アカデミー賞をはじめ数々のアニメーション映画祭で激賛をもって迎えられ、ロシア・アニメの巨匠ユーリ・ノルシュテインに「この作品に初めて出会った時『これは事件だ』と思った」とまで言わしめた。
見終わった後に残る強い感動と余韻。
濃密で静謐な時間を与えてくれる『岸辺のふたり』は、いつまでも自分の宝物としてそばにおいておきたくなるだろう。
デザイン、ストーリー、そして監督と三役を務めたマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットは、オランダ生まれの世界的な評価を受ける映像作家。
『岸辺のふたり』では、最新のデジタルセルアニメーション制作システム「ANIMO」を使い、極めてシンプルながらも深い味わいのある絵づくりに成功した。
セリフを一切使わず、アコーディオンとピアノによる背景音楽によって、その絵はますます雄弁に語りかけてくる。
音楽監督は、「老人と海」「木を植えた男」など名作をてがけてきているノルマン・ロジェと、「大いなる河の流れ」のドゥニ・シャルラン。
今回、彼らが選んだ曲は、日本でも愛されている「ドナウ川のさざ波」で、哀愁を帯びた旋律が清澄な世界を一層深めている。
岸辺のふたり HDリマスター版 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット作品集 [DVD]
あらすじ
8分間の永遠(エタニティ)。
あなたの大切な人はいま、どこにいますか?
幼い娘を置いて、岸辺からボートに乗って行ってしまったまま戻ることはなかった父。
遠い日の父の面影を求めて、娘は父と最後に別れた場所である岸辺を訪れ続ける。
少女から大人へ、そこはまた彼女の成長を記す場所でもあった。
繰り返される四季。
移り変わる自然。
それでも変わらず、娘は岸辺に立ち止まり、父を想う。
そうして時は過ぎ、そのひたむきな強い想いはある奇跡を起こす__ 。
観た人の数だけ答えがある
セリフや物語の背景をあまり語らないという作品がある。
絵本であれば絵や構図によって。
映画などの動画では絵やモーション、音によって物語の展開やメッセージを受け手が積極的に読み解いていく、いわば能動的な関わりを持って楽しむ、芸術性が高い作品である。
一見すると難解でとっつきにくいかもしれない。
だが、そういう作品が知的好奇心をくすぐる。
そういう作品こそが、脳内シナプスを刺激する。
本作はそんな、言葉による物語進行や背景の説明を排して、絵やアニメーション、音によって表現した美しい作品である。
わずか8分のシンプルな線画アニメーション。
そのほとんどモノクロに近い、水墨画を思わせる映像美に加え、シンプルかつ詩情豊かな展開が観る者の心に訴えかける、鮮烈かつ繊細な作品。
愛する父を待ち続ける娘の姿を、これ以上足し引きできないギリギリのバランスで美しく描いている。
親子の絆、大切な人に対する想い、死別、時間の流れ。
込められたメッセージを推察すればきりがない。
すれ違う人、人数、自転車の種類。
すべての表現が何らかのメタファーになっているようで、考え出したらきりがない。
事実、ネットにはその手の考察で溢れている。
シンプルな作品だからこそ、その限られた短い時間の中で描かれたすべてに、何らかの意味を求めてしまう気持ちは痛いほどわかる。
しかし、本作の本領はそこにはない気がしてならない。
大切なのは真っ新なまま作品と向き合える初見の印象なのだと、本作は語っているように感じた。
そして著者が初見で得た印象は、ただただ切なくて淋しくて、思い浮かぶのは大切な人に対する様々な想いだけだった。
観る者にそういう純粋な感情を思い起こさせることだけが、本作の狙いであるように思う。
本作を前にして、複雑な読み解きなど無粋な気がしてならない。
ただシンプルすぎる作品が故に、いたずらに意味を求め、自分勝手に複雑化させただけにすぎない。
メタファーなど、あってもなくてもそれほど大きな意味はない。
頭でごちゃごちゃ考えるのではなく、心で感じればいい作品。
観た人の数だけ答えがある。
それを単一的に言語化するのは野暮というもの。
本作はそういう作品。
そんな気がする。
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