宮崎駿監督がただ描きたかったという理由だけで制作されたという「紅の豚」。
「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」、「となりのトトロ」などは間違いなく家族で楽しむ娯楽映画だ。
しかし「紅の豚」のテイストはそれまでとはまるで違う。
当時のアニメといえば、まだまだターゲットは子供だった。
しかし「紅の豚」はまったく子供に向けられていない。
完全に宮崎駿監督の趣味の世界だった。
それは主題歌の違いをみてもわかる。
『風の谷のナウシカ / 安田成美』
『君をのせて / 井上あずみ』
『さんぽ / 井上あずみ』
ここまでは子供向けに作られたと考えられる。
しかし「紅の豚」になるとどうか。
いや、いきなりおかしいだろう。
あまりにアダルティーである。
劇中ではただひたすらに宮崎駿監督が大好きな飛空艇を見せられる。
登場人物たちは皆、今どきのコンプライアンスに抵触しまくり。
飛空艇にそんな概念があるのかは知らないが、飲酒運転は当たり前だ。
ワインを飲んでひとっ飛び。
あちらこちらで喫煙シーン。
吸ったタバコは海へポイ捨て。
コンプライアンスなんかまったく気にしてない。
公開当時はコンプライアンスなんて言葉すら世間は知らなかったから、当たり前といえば当たり前なのだが。
いくらおおらかな時代とはいえ、これが子供向けだったらさすがにPTAが黙っていないだろう。
しかしそんな騒ぎがあったという話は聞いていない。
まぁこれがR指定もつかず普通に上映できたのだから、やはりおおらかな時代だった。
今がうるさすぎるだけだ。
ところでこの「紅の豚」。
これだけ好き勝手やったのだから興行収入はイマイチかと思われるだろう。
ところが興行収入を調べてみると、前述した過去作品を凌駕している。
だからといって上位というわけでもないのだが。
個人的にも何故か前述した作品の中で、たまに無性に観たくなるのは「紅の豚」だ。
特段ヤマがあるとは思えないストーリーだし、宮崎駿監督の趣味を垂れ流されているのも理解しているはずなのに、「紅の豚」には不思議な魅力がある。
時々無性に観たくなるなる「紅の豚」、なのだ。
宮崎駿監督は「紅の豚」以後、それまでの子供向けイメージを払拭するかのようにあらゆるジャンルの原作を映像化している。
そのうち明らかに子供をターゲットにした作品は数えるほどしかない。
年を重ねるごとに豚がどんどん格好良く見えてくるから不思議だ。
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