これを悲報と呼ばずして、何を悲報を呼ぶのか?
『魔女の宅急便』について書くにあたりあれこれ調べていたら、いつしかこんな質問に辿り着いていた。
以下、要約したものを記載する。
「これをキキという女の子に届けて欲しいの…」というセリフがありましたが、おばあちゃんはボケていたんですか?
引用:Yahoo!知恵袋(2004年)より
まず『魔女の宅急便』を観たことがないという人のために、これがどういう意味なのかを簡単に説明しよう。
『魔女の宅急便』には「ニシンのパイを焼くのが得意なおばあちゃん」というキャラクターが登場する。
※写真はSTUDIO GHIBLIからお借りしました。
劇中では、焼きたてのニシンのパイを孫の誕生日に届けてもらいたいと主人公・キキに依頼する、心優しいおばあちゃんだ。
いろいろあってキキは何とか依頼に応えることができるのだが、これがきっかけでキキは「ニシンのパイを焼くのが得意なおばあちゃん」に大変気に入られる。
しばらくして「ニシンのパイを焼くのが得意なおばあちゃん」はキキに再度お届け物の依頼をする。
お届け物はキキをモチーフにしたケーキだった。
「ニシンのパイを焼くのが得意なおばあちゃん」はキキにこう伝える。
「これをキキという女の子に届けて欲しいの…」
実はこれで終わりではない。
このセリフにはまだ続きがある。
「この前、とってもお世話になったから。
そのお礼なのよ。
ついでに、その子のお誕生日を聞いてきてくれると嬉しいんだけど。
またケーキを焼けるでしょ。」
キキは感激してこう答える。
「きっと…きっとその娘もおばさまの誕生日を知りたがるわ。
だってプレゼントを考える楽しみができるもの。」
さて。
これを聞いた皆さんはどう感じただろうか。
ここでもう一度、冒頭で記した質問を思い出してみよう。
「これをキキという女の子に届けて欲しいの…」というセリフがありましたが、おばあちゃんはボケていたんですか?
引用:Yahoo!知恵袋(2004年)より
この質問者は、このシーンを観て、こう感じたようだ。
キキ本人に向かって、お届け物をキキへ届けてほしいと伝える「ニシンのパイを焼くのが得意なおばあちゃん」は、実はボケてしまっている。
すなわち認知症なのだと。
…なんと嘆かわしいことだろう。
いちいち細かく説明しなければわからないのだろうか?
いや、説明はたしかにされているのだ。
キキの受け答えがすべての説明になっているではないか。
そのことにすら気づけていない。
いちいち考察する必要すらない。
答えはすべて描かれているのだから。
どうやらこの程度が今の日本人の読解力らしい。
これでは『魔女の宅急便』屈指の粋なシーンが台無しである。
こんなにもわかりやすく、こんなにもスマートなお礼に対していちいち考察するなんて、それこそ野暮というものである。
「わかってる?これはお礼だからね。」
まるで押売りのような口上だ。
クリエイターがどんなに深みのある素晴らしい表現法を思いついても、観る側にはそれが伝わらない。
せっかく良いものを作り出しても、受け手が理解できなければ意味がない。
『魔女の宅急便』での件のシーンは、間違いなく良いものだった。
余計な説明を排除したキキとおばあちゃんのやり取りは屈指の名シーンといっていい。
だからこそ人は感動するのだ。
いちいち説明なんか入れていたら感動もへったくれもない。
これではクリエイターも、作り甲斐がなくなるというもの。
注釈ばかりの物語なんぞ観たくもない。
日本のアニメーションは世界に誇れる文化である。
そんな最高の文化に、世界に先駆けいち早く触れられる日本人の感じる力が衰退している。
これほど嘆かわしいことが他にあるだろうか。
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