はじめに
まだ音楽が今ほど手軽に手に入らなかった頃。
お小遣いではなかなかCDが買えなかった子供にとって、ラジオやレンタルショップは、音楽への見識を広める貴重なツールだった。
そこで必要になるのがカセットテープだ。
借りてきたCDやラジオから流れる音楽を残しておける記録媒体・カセットテープは、今では考えられないほど面倒な記録媒体だが、その頃聴いていた音楽やラジオ番組の思い出がいっぱい詰まっている。
本稿ではカセットテープの遍歴や、現在のカセットテープがどうなっているのか。
そしてそれにまつわる思い出を記録したいと思う。
磁気テープメディア
カセットテープ
カセットテープとは
カセットテープは、磁気テープメディアの種類で、テープが露出するオープンリールに対し、カセットに納めた状態で使用するものである。
データレコーダ専用の規格はカセットではなくカートリッジと称する場合が多いが、技術的な差異はない。
オーディオビジュアルテープ用カセットはテープを巻き取る回転軸を2本設ける場合が多く、コンピュータテープドライブ用データカートリッジは体積データ密度を高めるために回転軸が1本の場合が多い。
「カセットテープ」は「コンパクトカセット」を表す場合も多い。
長所は、汚れにくく、取り扱いが容易であることである。
テープはリールであるハブやスリップシートなどと共に、ハーフやシェルと呼ばれる筐体に収まる。
小窓がある標準ハーフと透明のシースルーハーフが存在する。
カセット本体とインデックスシールやインデックスカードなどを紙や樹脂ケースに納めて販売する事例が多い。
切り貼り編集に繊細さを要することが短所である。
技術的に必然な特徴ではないが、カセットテープは小型で可搬性に優れるが、収録時間か音質が犠牲となる。
音声用でもっとも普及したカセットテープ(コンパクトカセット)は、オランダのフィリップス社の技術者ルー・オッテンスが開発して特許を申請せずに公開技術として広く普及させた。
当初はモノラルでのちにステレオ方式が追加され、1970年代にハイポジション(クロムポジション、IEC TYPE-II)用テープが普及した。
ほかに、RCAビクターが1958年に開発したテーペット、アイワが1964年に開発したマガジン50テープカートリッジなど、独自規格のカセットテープも乱立した。
2000年、消費者物価指数の対象品目から除外された。
カセットテープの普及
1970年代には携帯が容易な音楽用メディアとしてカセットテープは広く普及。
メディアが廉価で長時間再生に適することもあって、録音媒体としてレコードのダビング、放送番組を録音するエアチェックなどに幅広く活用された。
1980年代まではレコードのダビングとラジオ録音に。
1990年代まではCDのダビングとラジオ録音に多く用いられることになる。
音楽の交換のためステレオやラジカセなどを用い、カセット同士でのダビングも良く行われていた。
カーオーディオの分野においても、先行する8トラックカートリッジ方式に比べて小さなカセットテープはスペースの限られる自動車のダッシュボードにデッキを配置しやすく、実用上の耐久性にも優れ、1970年代から1980年代にかけ隆盛を極めた。
また、全盛期にはカセットテープはある種のファッションと見做され、デザイン面で大きな変化を遂げた。
まず、1979年のウォークマンの発売で、場所を選ばず音楽を聴く事が可能になると、カセットテープ自体がファッション化した。
1980年代のカセットテープのデザインは、若者が外に持ち出す用途を考慮して徐々にカラフルになって行ったが、あくまで同じ形のプラスチックケースに同じ形のシールを貼り付けた程度の、統一的なデザインであった。
しかし、全盛期としては末期の1990年代になると、プラスチックケース自体に画像を印刷したカセットテープがソニー,TDK,マクセル,AXIAを筆頭として多数発売された。
例えば、ソニーのCDixシリーズでは、グラフィティやレトロフューチャーのデザインを全面に用いた製品が存在した。
カセットテープ利用者の減少
民生用の録音規格として大きく普及したカセットテープ。
1980年代以降は新しく台頭したデジタルメディアのCDと比較されるようになったため、カセットテープのパッケージでも技術的な用語を用いて高音質を謳い、デジタル感を押し出すようになった。
1990年代初頭にはカセットテープの後継として、音声データをデジタルで記録・再生でき、カセットテープとの再生互換性を持たせたデジタルコンパクトカセット(DCC)がフィリップスと松下電器産業(現・パナソニック)との共同開発で誕生した。
ほぼ同時にソニーから登場したミニディスク(MD)とポータブルオーディオ戦争を繰り広げるかと思われたが、音質ではMDを凌駕していたものの、DCCレコーダーでは設計段階から(アナログ)カセットテープの録音ができなかったこと、テープ方式に起因する欠点を引きずったこと、さらにMDはおろかDATに対してもポータブル録再機のラインアップが非常に少なかったことなどで結果的にMDの圧勝に終わり、DCCは姿を消した。
こうして1990年代後半から若年層を中心に録音メディアの主流がMDに移行し、2000年頃からポータブルMDプレーヤーなどの小型化、再生時間の長時間・大容量化が進み、発売当初の本体の巨大さや短い電池持続時間が解消され、2000年代後半からはデジタルオーディオプレーヤーやICレコーダー(リニアPCMレコーダー含む)も台頭し、それらデジタルオーディオの安定した高音質やランダムアクセスによる容易な選曲などの使い勝手の良さに慣れたユーザーは次第に新しい媒体へと移行した。
このように若年層を中心とした利用者減少のため、1990年代に見られたカセットテープのファッショナブルな製品ラインナップは順次生産終了となった。
一方で、小売店では売価2,000 - 5,000円程度のモノラルラジカセ、CDラジカセと録音済音楽テープが引き続き廉売されており、取り扱いが簡易なこともあって主にカセットテープで育った高年齢層のカセットテープ(コンパクトカセット)支持は依然として根強い。
また発展途上国や一部の先進国でも、音楽・音声用メディアとして今なお広く使われている。
カセットテープの再評価
2010年代には、デジタル配信によってCDなどのメディア自体を所有しないで音楽を聴くスタイルが普及する一方、アナログ回帰の一環としてカセットテープが注目され始め、様々なデザインのカセットテープが少量生産されるようになり、カセットテープを知らない若い世代の一部に、真空管アンプ、アナログレコードなどと同様な新鮮味を感じる人が出現している。
これも一種のファッション的な流行である。
新世代による、アナログ回帰だけに留まらない現代的なファッションとしてのカセットテープの流行も起き、ヴェイパーウェイヴ界隈で特に際立っている。
2019年9月現在では、新たにノーブランド(販売網ブランド)のカセットテープの販売が復活しているが、安価な無地のノーマルポジションテープのみであり、新機種に関してもクロム(ハイポジション)テープ録再(ただしティアック製の据置き型単品オーディオコンポーネント用カセットデッキを除く)、メタルテープ録再、ドルビーBタイプなどにみられるノイズリダクション録再、オートリバース、倍速ダビングなどの各種機能に非対応(すでに必要なパーツを作れない、いわゆるロストテクノロジー)である。
90分でも60分でもない?
10分間のカセットテープが今一番売れている理由
カセットテープが全盛期を迎えたのは、1980年代だ。
背景には、1970年代にラジオ受信機とカセットテープレコーダーが一体となった「ラジオカセットレコーダー(ラジカセ)」が、一般家庭に普及したことがある。
ラジオ番組から流れてくるお気に入りの音楽を録音する「エアチェック」や、屋外にラジカセを持ち出して環境音を録音する「生録」など、カセットテープはさまざまな用途で使われるようになっていった。
その後も売り上げを伸ばし、バブル経済が絶頂を迎えていた1989年には国内で年間約5億本以上の需要があったという。
その後、CDやMDなどのデジタル録音ができる記録媒体が主流となったことで、カセットテープ人気は徐々に陰りを見せていった。
2000年代以降は、iPodに代表されるMP3音楽プレーヤーの登場に続き、インターネットを介した音楽のダウンロードやストリーミングといったデジタル音源が浸透してきたことで、カセットテープの需要は全盛期と比べると大きく減少してしまった。
しかし、スマホやPCで音楽を聴くのが一般化した現在でも、カセットテープはコアなファンとシニア層に愛され続けている。
現在は、全盛期に比べ需要が減っていることもあり、同社が販売しているカセットテープは「UR」シリーズのみ。
それも、カセットテープ全盛期に見られた150分や120分のテープは取り扱っておらず、90分から10分までの4種類のタイムバリエーションで展開しているそうだ。
そんななか、4種類の長さのうち「10分テープ」が意外なニーズにはまって一番人気を誇っているという。
それがシニア世代を中心としたカラオケ需要だ。
そのほか、英会話の勉強やカラオケ大会へ提出する際のデモ音源など、シニア世代の勉強や娯楽目的に10分テープは有効活用されているという。
マクセル カセットテープ(10分/10巻パック) UR-10M 10P
マクセル カセットテープ(10分/4巻パック) UR-10M 4P
あの頃どうしても欲しかったコンパクトステレオ《KENWOOD ROXY J5》
あの頃どうしても欲しかったコンパクトステレオ・KENWOOD ROXY J5。
メーカー希望小売価格はなんと193,000円。
ステレオも販売していたCDショップに通いつめて、PioneerやSONYの製品と必死に聴き比べた。
その時流れていたのが、B'zの『Easy Come, Easy Go!』だった。
ようやく手に入れたKENWOOD ROXY J5で初めて聴いた曲は、もちろんB'zの『Easy Come, Easy Go!』だった。
その後はラジオやCDの録音に大活躍。
もう30年ほど前のステレオになるが、いまだに現役で、今でも美しい音楽を我が家で奏でてくれている。
《KENWOOD ROXY J5》で録音したラジオ
これまで記事にしてきた昔のラジオは、皆ことごとく録音して聴いていた。
あの頃から今も変わらず続いている『JET STREAM』は、初代パーソナリティ・城達也氏のものも、探せばあるのではないだろうか。
カセットテープには何十年も前の、たわいもない大切な思い出がたくさん記録されている。
データ化が進み、手元に音源が残らない今、思い出の音楽を皆はどうやって残すのだろう。
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