はじめに
最近はもっぱら邦画ばかり観ているが、だからといって洋画をまったく観ないというわけではない。
だが、洋画然とした派手な作品はあまり得意ではない。
だからアクション映画はあまり観ない。
では、いったいどんな洋画なら観るのか?
本稿では好んで洋画を観ようとしない人間でも、何度でも観たいと思った洋画をご紹介したいと思う。
アメリカ映画(1987年)
アンタッチャブル
『アンタッチャブル』とは
『アンタッチャブル(原題:The Untouchables)』は、1987年のアメリカ合衆国のクライム映画。
監督はブライアン・デ・パルマ。
出演はケビン・コスナー、ロバート・デ・ニーロ、ショーン・コネリー、アンディ・ガルシアなど。
禁酒法時代のアメリカ・シカゴを舞台に、正義のためにギャングのボスであるアル・カポネを逮捕しようとするアメリカ合衆国財務省捜査官たちのチーム「アンタッチャブル」の戦いの日々を描いた実録映画である。
捜査チームの主任捜査官だったエリオット・ネスの自伝を基にしている。
なお自伝はテレビドラマ化され大ヒットしている。
主人公を助ける初老の警官ジム・マローン役のショーン・コネリーが第60回アカデミー賞助演男優賞、第45回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞した。
また、日本でも第30回ブルーリボン賞外国作品賞を受賞している。
主役のエリオット・ネス役に抜擢されたケビン・コスナーは、この作品での好演により、ハリウッド・スターの仲間入りを果たした。
また、ジョージ・ストーン役のアンディ・ガルシアは、大階段でのアクションで注目を集め、そのキャリアスタートとなった。
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ノンフィクション作品と呼びたいけど…
実話との相違点
『アンタッチャブル』は、実話を基にして作られている。
過去に実際に起きた事件や、実在した人物が登場する作品である。
だが、あくまでも実話を基にしたというだけで、脚色がまったく無いというわけではない。
映画『アンタッチャブル』と実話との相違点はいくつかある。
その中でもストーリーの本筋に直接関係しているものだけを挙げてみよう。
- カポネ傘下の酒醸造所を摘発しているが、銃撃戦を交えたり、メンバーが殺されたこともない。
- 自伝にも銃撃戦の描写があるが、メンバーは「一度も銃を撃つことはなかった」と証言している。実際のネスのチームは誰も喪うことなく職務を全うしている(ただし、正式メンバーでないネスの運転手が殺されている)。
- 誰も買収には応じなかったとされているが、実際はメンバーの数人は買収されていた。
- 映画では、脱税での立件もネスが主導しているが、実際は脱税チームが起訴したもので、ネスの禁酒法違反容疑での立件は見送られている。
- ネスが生のカポネを目にしたのは、法廷での審理が初めてである。
- フランク・ニッティ(※)は映画中では死ぬことになっているが、実際は逮捕・収監されたカポネの跡を継いでボスになり、1943年に逮捕される恐怖から自殺している。ちなみにこのフランク・ニッティ。当初はアンディ・ガルシアが演じる事になっていたが、ガルシアの演技力の高さからアンタッチャブル側のジョージ・ストーン役へと変更となり、ビリー・ドラゴがニッティ役へとなった。(※.フランク・ニッティとは、劇中でショーン・コネリー演じるジム・マローンを殺害した白スーツの人物のこと。)
相違点ならまだあるが、ザッと挙げればこんなものだろう。
映画『アンタッチャブル』は、主人公であるエリオット・ネスの自伝「アンタッチャブル」が基になっているが、自らの手柄を描いた自伝だけに派手な脚色が多い。
だが娯楽映画に仕立てるのならば、この程度の脚色は当然だろう。
何より、現実との相違点が判明してさえいれば、何の問題はないと考える。
あらすじ
1920年代から30年代初期の禁酒法は闇酒場を横行させ、アル・カポネをボスとする犯罪組織は酒の密造とカナダからの密輸により莫大な利益をあげていた。
地元の警察や裁判所を買収しているギャングたちが市民への殺人も厭わない状況に、政府はアメリカ第三の大都会であるシカゴへ財務省のエリオット・ネスを派遣する。
大張りきりで自信満々のネスは、赴任早々、シカゴ市警の警官たちを引き連れて密造酒摘発で手柄を立てようとするが、ギャングに買収されていた警官が情報を漏らしていたため失敗。
さらに新聞記者に失敗した場面の写真を撮られて世間の失笑を買い意気消沈するが、帰り道で会った初老の警官ジム・マローンに「警官の仕事は手柄を立てる事ではなく、無事に家に帰る事だ」と教えられる。
翌日、屈辱に耐えながら出勤したネスに、抗争の巻き添えになって死んだ少女の母親が面会に訪れる。
改めてその悲しみを訴えられ、諦めないでと励まされたネスは、新たな決意を胸にマローンを呼び出す。
ネスはシカゴを牛耳るアル・カポネを逮捕する決意をマローンへ打ち明け、信頼できる仲間と班を編成するために協力してほしいと頼む。
カポネの実力を知るゆえに躊躇うマローンだが、警官としての生き方を貫くことを決意する。
警察学校の生徒だった新米のジョージ・ストーン、財務省から応援にきた簿記係のオスカー・ウォレスといった個性派だが優秀な四人が揃ったところで、マローンが全員に銃を持たせて密造酒の摘発に向かう。
実績を挙げたネスの元にギャングから賄賂が贈られてくるが、彼は賄賂を拒否したため家族の身に危険が迫り、妻子と離れて暮らすことになる。
家族と別れたネスは、ウォレスのアドバイスでカポネを脱税の罪で起訴する方針を固める。
ネス一行はマローンの情報を元に、カナダ警察と協力してカポネ・ファミリーの密造酒密輸の現場を押さえることとなった。
銃撃戦の末にギャングたちを殺すことになったが、ファミリーの帳簿係と帳簿という証拠が手に入った。
しかし、カポネは報復としてウォレスと帳簿係を殺害し、さらに部下のフランクに命じてマローンも殺害する。
証人を失った検察は及び腰となり起訴を取り下げようとするが、ネスとストーンはマローンの死に際のメッセージを頼りに、逃亡を図るファミリーの会計係を確保するためシカゴ・ユニオン駅に向かう。
列車の発車時刻寸前に現れたカポネ・ファミリーとの銃撃戦を経て会計係を確保したネスとストーンは予定通りにカポネを起訴するように働きかけ、カポネの予備審問が開始される。
予備審問で会計係がカポネの脱税を認めるが、カポネが余裕の表情を見せたため、ネスは疑問に感じる。
ネスは、フランクがカポネにメモを渡したことを不審に思い、彼が銃を携帯していることを理由に法廷から追い出し身体検査をさせる。
フランクの所持品の中からマローンの自宅の住所が書かれた紙マッチが見つかり、彼がマローンを殺したことを確信するが、フランクは廷吏に発砲して逃走する。
ネスはフランクを裁判所の屋上に追い詰め殺さずに拘束するが、フランクがマローンの死を侮辱したことに激怒し、彼を屋上から突き落とす。
屋上から戻ったネスは、ストーンから「フランクがカポネに渡したメモは買収された陪審員のリストだ」と聞かされ、ネスは陪審員を入れ替えるように判事に要求する。
判事はメモの信憑性を疑問視して拒否するが、ネスは「カポネの帳簿に判事の名前がある」と脅迫し、陪審員の入れ替えを認めさせる。
追い詰められたカポネの弁護士は有罪を認め、激怒したカポネは弁護士に殴りかかる。
後日、カポネに有罪判決が下った記事を読み終えたネスは、ストーンと別れの言葉を交わしてシカゴ市警を後にする。
路上で記者から声をかけられた彼は、「禁酒法が廃止になるが」との問いかけに、大いに飲むと答えるのだった。
特大スター・オールスターズが勢揃いの大傑作
1930年代、禁酒法の時代にシカゴで暗躍していた犯罪組織のギャング、アル・カポネ逮捕の実話をベースにした実録活劇である映画『アンタッチャブル』。
タイトルは映画の主人公にもなった、財務省の捜査官だったエリオット・ネスの自伝「アンタッチャブル」を由来としている。
故に、あらかた実話ではあるが脚色も多分に含まれている。
だがその脚色も物語の大筋である、アル・カポネがエリオット・ネスの追及によって逮捕されたのは事実であることから、ほぼノンフィクション作品といっていいだろう。
映画『アンタッチャブル』は、キャスティングがとにかくもの凄い。
大スターならぬ、特大スターばかりだ。
ケビン・コスナー、ロバート・デ・ニーロ、ショーン・コネリー、アンディ・ガルシアが共演している作品なんて他にあるだろうか。
なかでも若かりしアンディ・ガルシアの演技には特に注目だ。
どうしても悪役のイメージが強いアンディ・ガルシアだが、『アンタッチャブル』では強い正義感をみせている。
これがまたメチャクチャ格好良い。
おまけに新鮮なアンディ・ガルシアの演技とは反対に、ロバート・デ・ニーロの悪役ぶりは『アンタッチャブル』からのイメージが強い。
バットで部下を撲殺するシーンは必見だろう。
『アンタッチャブル』で演じる彼らを観ていると、彼らは大スターになるべくしてなったのだと思い知らされる。
あまりにも豪華なキャスティングといわれるのも、本作で結果を残し得られた、後世の評価なのだから。
今観てもハラハラドキドキの演出にも注目
ショーン・コネリー演じる初老の警官ジム・マローンが自宅で襲われるシーンは、今観てもハラハラドキドキさせられる。
犯人側の視線で自宅にいるジムに接近し襲うシーンは、今ではお馴染みでも、当時としては斬新な演出だったのではないだろうか。
しかもこのシーンはそれだけではない。
そのカット割りでホラー映画なみのドキドキ感が得られる上に、さらに二転三転のサプライズな展開が待っている物語屈指の名シーンといえる。
このことからも『アンタッチャブル』が時代を超えた名作だということがお分かりいただけるだろう。
何度でも観たい傑作洋画の名に恥じない名作中の名作だ。
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