アニメ
ソードアート・オンライン アリシゼーション
『ソードアート・オンライン』とは
『ソードアート・オンライン』(Sword Art Online)は、川原礫先生によるライトノベル。
小説のイラストはabecが担当している。
公式略称は「SAO」。
小説の他にも、漫画化・アニメ化・ゲーム化・テレビドラマ化など様々な展開が行われている。
本作は当初、第9回電撃ゲーム小説大賞(2002年)応募用に執筆された作品であった。
しかし、初稿が応募規定枚数を大幅に超過し、改削も不可能な状態だったため応募は見送られ、「九里史生」名義で川原先生のウェブサイトにオンライン小説として掲載された。
本編の連載は2002年11月から2008年7月まで続いた。
そんな中、連載の気分転換に川原先生が書いた『アクセル・ワールド』が第15回電撃小説大賞(2008年)の大賞を受賞し、その際に本作を読んだ担当編集者の提案で電撃文庫から商業作品として刊行される運びとなった。
なおウェブサイトの連載は、商業化にあたり全て取り下げられている。
タイトルの『ソードアート・オンライン』は作中に登場するオンラインゲームの名称であり、作品自体にもゲームと同じく「SAO」という略称が使われる。
また作者によると、製作には自身もプレイした『ウルティマオンライン』や『ラグナロクオンライン』の影響があるという。
アーネスト・クラインとの対談では2人とも、押井守監督の『アヴァロン』にインスピレーションを受けたと挙げている。
特に川原先生は、「僕は『アヴァロン』に影響を受けて『ソードアート・オンライン』の銃で戦うチャプターを書いた。」と話している。
原作小説の累計発行部数は2017年4月25日の第1巻増刷発行分で国内1300万部を突破し、第1巻は電撃文庫で史上初の国内単巻発行100万部を達成している。
国外では、2018年11月時点で世界13か国以上において翻訳版が展開され、2020年4月時点で全世界累計発行部数は2600万部を突破している。
2011年発行の『このライトノベルがすごい!2012』では、作品部門ランキングで1位を獲得。
翌年の『このライトノベルがすごい!2013』においても2位以下に大差を付けて1位の座を守り、『このライトノベルがすごい!』刊行史上初の作品部門2連覇を達成した。
『このライトノベルがすごい!2020』で発表された「2010年代総合ランキング」でも1位となり殿堂入りすることとなった。
『第12回オリコン上半期 “本” ランキング 2019』ジャンル別「文庫」では、第21巻がライトノベル作品で初めて同部門の1位を獲得した。
さらに「ライトノベル(BOOK・文庫)」部門では、2015年から5年連続、通算6度目の同部門1位を記録した。
ソードアート・オンライン14 アリシゼーション・ユナイティング (電撃文庫)
ソードアート・オンライン プロジェクト・アリシゼーション5 (電撃コミックスNEXT)
アニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』
『ソードアート・オンライン アリシゼーション』(Sword Art Online Alicization)は、A-1 Pictures制作によるアニメ作品。
川原礫先生によるライトノベル『ソードアート・オンライン』を原作としており、テレビシリーズおよび劇場アニメが製作されている。
Web小説版では同シリーズの最終章にあたる。
もともとのタイトルは『ソードアート・オンライン4 “アリシゼーション”』。
『アリシゼーション』は本作の造語で、「アリス化」という意味である。
「Alice(アリス)」に接尾辞の「-zation(ゼーション)」を付けた言葉。
「-zation(ゼーション)」は「〜になる」や「〜化する」という意味の接尾辞。
『ソードアート・オンライン アリシゼーション』は、2017年10月の「電撃文庫 秋の祭典2017」内で制作が発表され、翌2018年9月に全4クールで放送されることが発表された。
前半2クールは2018年10月から2019年3月まで放送され、原作の人界編が映像化された。
初回の第1話は1時間枠で放送されたほか、シリーズとしては初めてAbemaTVでの地上波同時配信が行われた。
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あらすじ
人界編
GGOで起きた「死銃事件」から半年が経った2026年6月。
和人は菊岡からの紹介で、謎多きベンチャー企業ラース」の開発した次世代フルダイブ実験機「ソウル・トランスレーター」のテストダイバーのアルバイトを行っていた。
ある日、和人は「ダイシー・カフェ」での談笑からの帰りに「死銃事件」の実行犯最後の1人によって薬剤を注射され、昏睡状態に陥ってしまう。
和人が目を覚ました時、眼前には現実世界と遜色なく豊かな感性を持つNPCたちが住まう仮想世界「アンダーワールド」(UW)が広がっていた。
ログアウト不可という旧SAOと同じ状況に際したキリトは現実世界への道を求め、親しくなった少年・ユージオと共に世界の中心「セントラル・カセドラル」を目指す。
一方、現実世界の和人は搬送先の病院から昏睡状態のまま連れ出され、行方不明になっていた。
明日奈たちは和人の行方の手がかりを求め、藁をも掴む思いで茅場の恋人だった神代凛子にコンタクトを取り、「ラース」に潜入する。
そこで菊岡の口から明かされたのは、UWの根幹にあるボトムアップ型人工知能開発計画「プロジェクト・アリシゼーション」だった。
より現実味を増した仮想世界
「アンダーワールド」
「アンダーワールド」とは
「アンダーワールド」とは『ソードアート・オンライン(SAO)』に登場する第四の仮想世界。
略称はUW。
自衛隊の極秘計画「プロジェクト・アリシゼーション」によって開発された新機軸のAI「人工フラクトライト」達が暮らす仮想世界である。
人間の「フラクトライト」に直接量子的なアクセスが可能な実験機「ソウル・トランスレーター(STL)」、人工フラクトライトを封入する「ライトキューブ(光量子ゲート結晶体)」など実験段階の非公開技術を用いて組み上げられた機密の塊であり、VRMMOどころかゲームですらない。
強いてゲームに例えるならば文明シミュレータに近い。
「アンダーワールド」はゲームではないものの、開発にあたっては作中2026年の世間一般のVRMMOと同様の「ザ・シード」が使用され、世界はカーディナルシステムによって管理されている。
コンバート機能も搭載されているため、システム上はVRMMOからアバターをコンバートすることも可能。
その際、アバターの状態はUWの規格に合わせて変化する(ALOアバターは種族が人間に、GGOアバターの装備は銃からクロスボウになるなど)が、一部データはそのまま引き継がれる(ソードスキルなど)。
後述のFLAが起動していない状態ならば民生のVRゲーム機であるアミュスフィアでダイブすることも可能である。
しかしUWはゲームとして遊ぶようには作られていないため、ユーザーインターフェースが設定されていない。
そのため、もしダイブしてしまえば現実側からの干渉がない限り、アバターのHPが全損するか、内部のシステム・コンソールを操作する以外に脱出方法が存在しない。
しかも前者の手段を取ろうとする場合、UWにはペインアブソーバー(痛覚制限の操作機能)が存在していないため、HPを減らそうと負傷をすれば現実世界同様の苦痛を味わうことになる。
そして最悪の場合は、現実世界に戻っては来れなくなってしまうことも考えられる。
さらにSTLを使用したダイブの場合、「ニーモニック・ビジュアル・データ(記憶的視覚情報)」と呼ばれる意識レベルに直接仮想世界を出力する形式のためにもはや五感では仮想世界と現実世界が一切区別不可能(解像度無限という言い方が近い)となる。
すなわち、痛覚だけでなく視覚的恐怖なども現実のそれと同様である。
また、アミュスフィアでダイブした人間も痛覚は同様に襲いかかる。
フラクトライトとFLA
普段のUWは後述のフラクトライトの特性とSTLの機能を用いて「フラクトライト・アクセラレーション(FLA)」と呼ばれる時間加速がかけられている。
UW内部では理論上主観時間を無限に加速する事が可能であり、通常時は5000倍、人間が外部から干渉する際でも1000倍の速度で時間が流れている。
文明シミュレータというのは、これが理由である。
プロジェクト・アリシゼーション
そして研究の末に得られたものが、誕生直後の赤子の精神をライトキューブ内に複製し、母胎内や出産中の記憶と思しき個人差を修正した「精神原型」。
自我や自意識が発生する前の人間のまっさらな意識体であり、これを更に他のライトキューブ内に複製し、仮想空間内で培養したものが上記の最新型AI「人工フラクトライト」である。
つまりAIといいつつも肉体の有無を除けば生身の人類と全く同質の知性である。
であるはずなのだが、なぜか法規を逸脱できない欠陥を抱えており、これが物語に関わってくる。
また、(これは器であるライトキューブ側の問題のようだが)生体脳と比べてエラー訂正機能がかなり低く、大きな混乱に見舞われる(「自分がコピーであると認識させられる[全く同質の魂が二つ存在する]」「法と自分の命の二者択一を迫られる」「強固に信じていたものが覆る」など)と不安定化、最悪の場合バグを起こしたかのような奇声を発し、体もノイズが走ったように明滅して崩壊に至る。
プロジェクト・アリシゼーションの最終目的は、そんな彼らを高度なボトムアップ型のAI「Artificial Labile Intelligent Cyberneted Existence(人工高適応型知的自立存在)」、通称「A.L.I.C.E」へと昇華させて無人兵器に軍事転用することであり、そのための「魂の箱庭」こそがUWの正体である。
AI異なる2つの開発手法
トップダウン型AIとボトムアップ型
この『SAOアリシゼーション』は、人類が未来に直面しうる問題をリアルに描いたものだと言える。
なぜなら本作が描くAI開発のあり方は、現実の議論とも大きくリンクしているからだ。
『SAOアリシゼーション』は、生命とは何かという問いにAI開発の視点から迫った物語をいえる。
AI開発は現実世界でもブームとなっている。
ディープラーニングという学習方法によってAIの学習速度は飛躍的に高まり、様々な分野での活躍が期待されている。
第6話「アリシゼーション計画」の中で、AI開発には2種類のアプローチがあると説明されている。
実はこれはフィクションではなく、現実でも同様なのだ。
アニメ本編の6話では、この2つのアプローチを以下のように説明されている。
トップダウン型は、プログラムに知識と経験を積ませ、学習によって最終的に本物の知性へと近づけようというものだ。
だがトップダウン型は学習していないことには、適切な反応ができない。
つまり、現状では真に知能と言えるレベルには達していないんだ。
対して、ボトムアップ型。
これは人間の脳、脳細胞が1千億個連結された生体器官の構造そのものを人工的に再現し、そこに知性を発生させようという考え方だ。
慶応義塾大学理工学部教授の栗原聡氏は、「ほぼすべての工学製品がトップダウン型の設計方法でつくられるのに対し、生物はボトムアップ型の方法で進化してきました」と語る。
機械と生物は真逆のアプローチで進化してきた、真逆の存在なのだ。
現在のAIはディープラーニングの登場以降、加速度的な進化を遂げているが、その開発アプローチはほとんどトップダウン型である。
その意味で、今のAIが今後どれだけ進化するかはわからないが、それが生物と見なせるような存在になるかは不透明といえる。
トップダウン型では学習していないことには的確な判断を下せないからだ。
対して『SAOアリシゼーション』では、ボトムアップ型のAI開発に成功している。
前述の栗原氏は、ボトムアップ型の進化とは、個々のパーツが生き残るために他のパーツと結合し、それを繰り返すことで進化していく過程を指す。
確かにAIがそのように進化するとなれば、それは生物の進化と同等のものであるといえるかもしれない。
その意味で、ディープラーニングによってどれだけ多くのことを学習させたとしても、トップダウン型のAIはどこまでいっても「ものすごく頭の良い機械」でしかないのかもしれない。
その点を鑑みても、『SAOアリシゼーション』で生み出されたAIは、新しい人類と呼んでもさしつかえない存在なのかもしれないのだ。
AIには人間としての権利があるのか?
小難しいことを長たらしく書いてきたが『SAOアリシゼーション』で生み出されたAIとは、要するにほとんど人間と変わらない魂を持っている存在ということだ。
唯一の違いは、肉体を持つか否かという点のみ。
こうなると、とてつもなく大きな問題に直面することになる。
それが「AIには人間としての権利があるのか?」ということである。
今まで機械として、道具として使ってきたAIに人権を与えるのかどうか。
この大きすぎるが、遠くない未来に直面するであろうリアルな問題は、次作『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』に持ち越される。
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