コントドラマ
SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜 (2015年)
今や人気女優・岸井ゆきのをはじめて知った作品
『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』とは
『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』は2015年10月10日未明(10月9日深夜)から12月26日(12月25日深夜)まで、テレビ東京他で放送されていたバラエティ番組である。
おぎやはぎとオードリーの4人をメインに、お笑いタレント、アイドル、俳優などをレギュラーメンバーに迎えて、全編オールロケーションで展開するコント仕立てのバラエティ。
媒体によってはサスペンスドラマやコントドラマと紹介される。
登場人物はそれぞれ何かしらの「病気」にかかっている設定で、病気の登場人物たちはビンに入った錠剤の薬を常用している。
序盤は各コントがばらばらでオムニバス的に展開されていたが、中盤からは登場人物が入り乱れつつそれまでは別々と思われていたコントが繋がりを持ち始めていく構成となっており、サスペンスドラマ風の展開とコントが交錯するストーリーとなる。
第9回からは全てのコントが1本のストーリーで繋がったサスペンスコメディ調のドラマへと変貌し、錠剤の薬の秘密が明かされる。
そして、最終回で再びオムニバスコントの構成に戻る展開で締めくくられた。
そのため各コント毎に、キャストは別の配役と思われていたが、全て同一人物である。
ギャラクシー賞・2015年12月度月間賞を受賞。
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コント例一覧
イケ!イケ!イケ!
- 病名 - 撮れ高病
- 症例 - 想定したオチのためには手段を選ばない。気合いだけはある。
異常なハイテンションと番組で撮れ高をもぎ取るTVディレクターを小木氏が演じる。
国会中継で答弁に立つ議員ではなく居眠りしている議員にズームするなど、視聴者が求めてもいない過剰な演出を追求する現代のバラエティ番組が産んだ病人。
ADは別のシークエンスで展開される薬に関係した闇組織的な何かの構成員であることが判明。
永世認定処女
- 病名 - ガチ恋病
- 症例 - 妄想と現実の区別がつかず、見てみぬふりを繰り返す。
職業・AV女優であるにもかかわらず、処女性を求めるあまり「でも彼女は処女なんだ」と言い張る男と、そのパラドックスに困惑する友人のコント。
男の歪んだ愛情と思考の幼さが産んだ病人。
この店は俺が育てる
- 病名 - レビュアー病
- 症例 - 何事にも上から目線の評価をしてしまう。人の傷みがわからない。
中華料理屋の味や内装、客層などを採点し、頼んでもいないのに新メニューの提案をするという謎の使命感を発揮するブロガーを描いたコント。
何でもかんでもとりあえず批評することで優位に立ちたがる人間の哀しい本性と、誰もが容易に自己発信できるようになったインターネット社会が生んだ病人。
第5回では、春日氏が演じるブロガー「中華の魔人」が機械だったことが判明する。
「永世認定処女」に登場するAV女優・つばめはこのコントに登場する中華料理店の娘。
危機管理意識が低すぎる男
- 病名 - リテラシーゼロ病
- 症例 - IT・危機管理意識が極端に欠如してしまう。
一流企業から官公庁までが平気で顧客情報や機密事項を漏洩してしまう現代を反映したコント。
研究成果のプレゼンの最中、スライドに自らが盗撮した女性患者のあらわな画像を映しだしてしまい、もう終わりだと開き直った結果「せっかくなので」とその女性たちとの情事をプレゼンする医師。
腐った友情
- 病名 - フルボッコ病
- 症例 - 思い通りにならない事象に全力で攻撃してしまう。
擬人化BL作家の日常会話をコントに昇華したギリギリを攻めすぎたコント。
カップリングに関する会話などを高速で言い合い、「ワイ」「大正義」などのネットスラングが頻出しその度にテロップでスラングの解説が表示される。
煽りの神様
- 病名 - バズりたい病
- 症例 - 人の注目を集めるためなら手段を選ばず煽ってしまう。
インスタグラムに寝起き姿を公開した女優に「ベッドでパックリ無修正写真流出」「無修正写真に称賛の声〈色キレイすぎ!〉」等といった下世話な見出しを付けるコント。
このコントで散々な見出しをつけられた女優・中田杏(柳英里紗さん)は「撮れ高病」の酒井ディレクターの番組にも出演している。
公務員戦隊コンプラー
- 病名 - 叩かれたくない病
- 症例 - コンプライアンスを気にするあまり出動できなくなる。
「悪を蔓延らせたままでは、我が戦隊の沽券に関わる」と宣言する隊長に対し「悪と断定するのはコンプライアンス的にまずいと思います」などと反論する隊員たち。
最終的には「行くとなにか問題あるから行くのやめよう」となるコント。
業務上の過失による炎上や裁判で人生ごと一発アウトな風潮が生み出した病人。
鬼女探偵事務所
- 病名 - 晒したい病
- 症例 - 自分に直接関係ないことまで知りたい、調べたい、晒したくて仕方なくなる。
病的なスピードで一心不乱にキーボードを叩きまくり、ネットにアップされた画像などからターゲットの居場所や時間帯を特定する姿をコミカルに描いたコント。
あらすじ(永世認定処女)
発田(若林正恭)は、友人の高見沢(オクイシュージ)とともに、セクシー女優のつばめ(岸井ゆきの)の握手会に来ていた。
高見沢との付き合いで、いやいや来ているように発田は装っていたが、発田はつばめの作品を全て見ていた大ファンだった。
さらに発田は、つばめのことを「処女だ」と信じて疑わなかった。
「セクシー女優なのに、そんなことあるわけないだろ」と高見沢はツッコむが、発田は高見沢の言葉に耳を耳を貸さない。
また、つばめの言葉から発田が毎回のようにつばめの握手会に来ていることが判明し、高見沢は呆れてしまう。
後日、高見沢は発田とファミレスにいた。
そこで、発田が「彼女を紹介する」と、現在交際しているという彼女を高見沢に会わせる。
そこに現れたのは、なんと握手会に行ったセクシー女優・つばめだった。
高見沢は、思わぬ人物が発田の彼女として現れてきたことに戸惑う。
「セクシー女優だぞ」と言う高見沢に、発田は相変わらず「つばめちゃんは処女だから」と繰り返す。
つばめも「処女だから」と言い、高見沢は「ウソつけ!」と思わず言ってしまい、さらには作品の中で大変なことまでしていると言うと、つばめは羞恥で顔を覆う。
発田は高見沢のことを叱り、「つばめちゃんは、下ネタとかダメな人だから」と彼女のことを庇うのだった。
発田はつばめとともに、つばめの父親のもとを訪れ、挨拶しようとする。
だがそんなところに高見沢が現れ、思わず口を挟んでしまう。
現れたつばめの父親(入江雅人氏)に発田は真面目に挨拶をするが、そこで高見沢はつばめがセクシー女優であることや、それにも関わらず発田が「処女だ」と信じて疑わないことを明かしてしまう。
つばめの秘密を知ったり、発田の様子に父親は混乱し呆然としてしまう。
発田とつばめ、高見沢はつばめの父親の中華料理店で食事をしていた。
だが父親は、つばめの秘密や発田との話で混乱し、仕事に手が付かない様子だった。
そんなつばめの父親の様子を見て、高見沢は発田とつばめに「付き合ってるなら、セッ○スしろ!」と店内で叫ぶ。
そうすれば、父親の混乱も少しはおさまるのではないかと考えたのだった。
だが発田は「それとこれは話が別」と言って、素直に応じようとはしない。
その言葉を聞いたつばめの父親は、「セッ○スしてくれよ!」と発田に頼む。
だが発田は、「世の中には、願っても、ままならないことがあるんですよ」と事も無げに言う。
土下座する父親にも「頭を下げて、なんとかなると思わないでください」などと言って、偉そうにつばめとともに立ち去るのであった…。
もともとは「現代病」をテーマにしたオムニバスコント番組
最初はただのコント番組だと思っていた。
現代ならではの病に侵されている人々を笑う、いろいろな場面。
AV女優に恋をしながらも、「彼女は処女だ!」と言い張る男(オードリー・若林正恭氏)。
研究発表のスライドにうっかりエロ画像を映写してしまい、「もうおしまいだー!」と開き直って、自らエロファイルを解説し始める天才医師(アンガールズ・田中卓志氏)。
常に上から目線で中華料理屋のおやじに無茶なアドバイスをするグルメブロガー(オードリー・春日俊彰氏)。
そんなお笑い勢の中でも圧巻だったのが、清水富美加さんと中島早貴さん(アイドルグループ「℃-ute」)によるコント「腐った友情」だった。
同人作家マユ(清水)とリコ(中島)の表情や独特の動きが腐女子そのものなのだ。
ネット用語をてんこ盛りにした膨大なセリフ。
そして光の速さで消えていく用語解説テロップ。
基本的な構成はマユが何か(推しの声優の結婚等)にキレて、「ちっくしょおおお!」とゲスい復讐を計画。
それを聞いたリコが「それやったら、ウチらおしまいじゃない?」と、グウの音も出ない正論を吐き、「百理ある」(一理あるの百倍の意)と、マユが納得する流れ。
これがアホほど面白かった。
そして自由自在にヲタク用語を使いこなせる人は心の底から凄いと思った。
コント同士がつながりはじめひとつのストーリーに
清水富美加さんと中島早貴さんの放つ暑苦しいまでの熱量に爆笑していたら、ちょっと待った。
これ、ただのコント番組じゃなかった。
第3回からそれぞれのコントのキャラが垣根を越えて交わりはじめ、これが独立したコントではなく、ひとつのストーリーの一場面だったことが明らかになっていく。
やがて物語は「シックス」という薬のカプセルをめぐるサスペンス色を帯び、第5回ではグルメブロガーの春日氏が人造人間(薬を生成するロボット)であることが判明。
シナリオ自体は結構無茶苦茶ww
陰謀による致死性ウイルスの蔓延という国家の危機に、「世の中救ってやんよ!」と、立ち上がる同人作家マユ&リコ!……
って、あれよあれよとコントが世界規模の話に転がっていく様は、まさに小劇場の舞台の如し。
すっかりコントだと思って爆笑していたAV女優との純愛や、マユ&リコの腐った友情が、最後にはちょっと感動しちゃう「いい話」に見えてくるから不思議だ。
ハイクオリティのコント
本作のコントは何よりも着眼点が素晴らしい。
例えば、岸井ゆきのさんが演じるAV女優・つばめのキャッチフレーズは「清純派AV女優」。
しかしそもそもの話、清純派でAV女優という職業が成立するのか?
その他にもコンプライアンスを気にするあまり、何も出来ない戦隊ヒーロー。
飲食店の経営にまで口を出すグルメブロガー。
日常の盲点をついてくるようなアイデアは、まさに灯台下暗しで、そして何より面白かった。
そこへ演者の面白さまで加わってくるのだから、これがつまらないわけがない。
ひとつひとつのコントのクオリティが高かったからこそ、ひとつのストーリーに集約された時に新たな化学反応が起こり、不思議な感動が生まれたのだろう。
本作のコントは過去の人気コント番組と比べても何ら遜色のない作品ばかりなのだ。
今や人気女優!
岸井ゆきのをはじめて知った作品
今や人気女優の岸井ゆきのさんをはじめて知ったのが本作(だったと思う)。
清純派AV女優という、意味不明で非常に難しい役柄を演じていたのがとても印象的で、この時から陰ながら密かに応援し続けてきた。
長年にわたり脇役を演じることが多かったが、NHKドラマ『恋せぬふたり』で高橋一生氏と共に主演を務めた時は、イチファンとして心の底から嬉しかった。
そんな岸井ゆきのさんがついに有名人気女優への道を歩み出した。
あのモンスタードラマ枠・TBS日曜劇場『アトムの童(こ)』で、ついにヒロインの座を射止めたのだ。
作品の評価がそのまま演者の評価に直結してしまう昨今の風潮が心配ではあるが、そこは数多のモンスタードラマを輩出してきた伝統枠である。
無事ドラマが成功し、岸井ゆきのさんの名が広く知れ渡ることを切に願っている。
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