日本映画
そして、バトンは渡された
『そして、バトンは渡された』とは
『そして、バトンは渡された』は、瀬尾まいこ先生の小説である。
2018年2月に文藝春秋より出版された。
2019年に同作は本屋大賞を受賞した他、TBS「王様のブランチ」ブランチBOOK大賞2018、紀伊國屋書店・キノベス!2019などで大賞を受賞している。
また、2019年の「二十歳が一番読んだ小説ランキング」では3位にランクイン。
2021年10月時点で累計発行部数は110万部を突破している。
第31回山本周五郎賞で候補に選ばれている。
3人の父、2人の母、血の繋がらない親の間を「リレー」され、水戸→田中→泉ヶ原を経て、現在は3人目の父親・森宮壮介と暮らす17歳、高校2年生の主人公・森宮優子が成長していく様子を描いている。
映画は2021年10月29日に公開された。
監督は前田哲氏、主演は永野芽郁さん。
【Amazon.co.jp限定】(初回仕様)そして、バトンは渡された ブルーレイ プレミアム・エディション(2枚組)(Amazon限定映像特典Disc1枚付) [Blu-ray]
あらすじ
高校3年の森宮優子は、優しい父の壮介と二人暮し。
泣きたい場面でも無駄に笑顔を降りまく優子は、その習性ゆえにクラスでも浮いた存在だった。
技術不足にも拘らず、卒業式の合唱のピアノ奏者を押し付けられる優子。
一方で、「みぃたん」と呼ばれる小学生の少女の家に、梨花という新しい母親がやって来た。
梨花は浪費家でお調子者だが、その一方で気立てが良く、「みぃたん」を手放せないほど愛してしまった。
ある日、「みぃたん」の実父の水戸秀平が、突然ブラジルに移住すると言い出した。
妻の梨花は移住を拒否して離婚。
「みぃたん」と離れたくない梨花は、言葉巧みに「みぃたん」を日本に残らせ、自分の旧姓の田中姓にしてしまった。
「みぃたん」が友達の影響でピアノに興味を持つと、義母の梨花は、大金持ちの泉ヶ原という老人と再婚した。
泉ヶ原の屋敷にはグランドピアノがあったのだ。
優しい泉ヶ原に大切にされる「みぃたん」。
ところが義母の梨花は、大金持ちの生活が窮屈だと家を飛び出し、新しい結婚相手を見つけてしまった。
この時、梨花が再婚した相手が森宮壮介。
連れ子として森宮姓になった「みぃたん」こそが、優子の幼い頃の姿だったのだ。
義母の梨花はその後に森宮家も飛び出し、行方不明になっていた。
同学年の早瀬賢人や、義父の壮介に励まされ、優子は何とか卒業式のピアノ演奏を成功させた。
数年後、早瀬賢人と再会した優子は、結婚を誓い合った。
そんな優子の元へ、行方不明の義母の梨花から便りが届いた。
実父の水戸秀平が日本に帰っていると言うのだ。
実父の秀平と再会した優子の元へ、二番目の父である泉ヶ原から、梨花の死を看取ったとの知らせが届いた。
実は梨花は以前から重い病気を患っていた。
ブラジルに同行しなかったのも、優子を置いて失踪したのも、病気を隠すためだった。
再婚を繰り返したのは、自分の亡き後、優子に最適の父親を用意するためだったのだ。
やがて結婚式の日、式場には3人の父が揃っていた。
三番目の父である壮介は、「親たちから渡されたバトンを、しっかり受け取れ」と、花婿の早瀬に優子を託すのだった。
登場人物
森宮優子
演 - 永野芽郁
継母の梨花に振り回される形で、現在までに3回苗字が変わるという複雑な環境で過ごしている。
現在の父の壮介のことは敬意をこめて「森宮さん」と呼んでいる。
森宮壮介
演 - 田中圭
優子の継父で現在の父親。
梨花との結婚式直前で娘の優子がいることを知らされ、結婚後に梨花は去ってしまう。
優子との距離感に少し困惑しながらも、優子を誰よりも大切に思っている。
早瀬賢人
演 - 岡田健史
優子の高校の同級生で、ピアノがすごく上手。
優子に惹かれている。
みぃたん
演 - 稲垣来泉
友達思いで泣き虫。
いつもみぃみぃ泣いていたことから呼ばれ出した。
継母ではあるが、梨花を慕っており、梨花に言われたとおり頑張って笑顔になろうとしている。
梨花
演 - 石原さとみ
何度も夫を代える奔放な女性に思えるが、実は優子の幸せを一番に考えて行動している。
水戸秀平
演 - 大森南朋
梨花が選んだ最初の夫。
優子の実の父親。
夢を叶えようとしてブラジルで事業をしようとする。
ブラジル行きは梨花に反対され、優子も梨花と日本に残ることを希望したため、単身でいくことになる。
泉ヶ原茂雄
演 - 市村正親
梨花が選んだ2番目の夫。
優子の希望でピアノを習わせるための手段として梨花が結婚したが、優子のことはとても大事にしてくれる。
家族というコミュニティの在り方
著者個人としては非常に面白かった作品だが、観る人によってはもしかしたら非常に不快なものなのかもしれない。
何故なら本作は3人の父、2人の母、血の繋がらない親の間を「リレー」され、水戸→田中→泉ヶ原を経て、現在は3人目の父親・森宮壮介と暮らす17歳、高校2年生の主人公・森宮優子が成長していく様子を描いているからである。
劇中では破天荒な義母・梨花に振り回されながらも、4人目の父親・森宮壮介に大切に育てられた主人公・森宮優子。
しかし現実的に考えるなら、これほど複雑な家族構成の中でも幸せに暮らせている人がどれほどいるのか?
主人公・森宮優子は、これほど複雑な家族構成の中にあって、それでもおそらく幸せだったに違いない。
もしかしたら、そんな存在は稀有なのかもしれない。
同じような境遇の多く人は、不幸を感じているのかもしれない。
幸せとは何だろう?
著者が本作を楽しんで観ることができたのは、ただ恵まれていただけなのかもしれない…。
そう思うほど、本作で描かれる家族構成は複雑である。
しかし、それでも本作を広くおすすめしたいと思う。
実の親が子を手にかけてしまうような現代。
血の繋がりというものが、果たしてどれほど大切なことであろうか。
家族というコミュニティの名称は、血の繋がりだけを指すものなのだろうか。
人と人との繋がりは、血よりも濃いものは生み出さないのだろうか。
本作を観ていると、そんな問いかけをされているような気がする。
キャスティングの妙と俳優陣の演技力で魅せる作品
石原さとみの無駄遣い(良い意味)
本作のキャスティングは実に絶妙であった。
石原さとみさんの名をみて主演ではないことに、まず驚く。
そして本作を観て、その起用法にまた驚く。
石原さとみさんといえば主演クラスの俳優さん。
その名があれば、ほとんどの人が主演だと思われるだろう。
しかし本作は違った。
石原さとみさんの出演シーンといえば、要所要所でちょこっとある程度。
しかもそのほとんどが回想という、なんとも贅沢な無駄遣い。
かといって完全に脇役かというと、そうでもない。
いわゆる助演ということになるのだろうが、助演にしてはあまりに出番が少ない。
しかしながら、石原さとみさんが演じた主人公の義母・梨花は本作の物語を動かすキーパーソンであるから、たとえ出番が少なかろうが、その存在感は登場回数や出演時間に比例しない。
そのせいか、公式クレジットでの主演は永野芽郁さんでも、それを知るまで誰が本当の主演なのかがわからなかった。
この計算し尽くされたキャスティングは、実に絶妙で思わず舌を巻く。
本当の主演は田中圭だった(気がする)
本作のキャスティングは実に優秀だ。
特に主人公・森宮優子の3人の父親役のキャスティングが抜群だった。
実父役を務めた大森南朋さんも、2人目の父親役を務めた市村正親さんも非常に良かったが、特筆すべきは3人目の父親・森宮壮介役を務めた田中圭氏。
お人好しで心優しい3人目の父親・森宮壮介は、田中圭氏のキャラクターにピッタリの配役だった。
何より、本作タイトルの伏線を回収する名セリフは彼のものだったのには驚かされた。
だとするなら、本当の主演は田中圭氏だったのではないか?
そう思えるほど、納得のラストである。
石原さとみさんの破天荒ぶりも、最後にその理由が明かさられる。
オープニングがコメディのような雰囲気だったので、まさか最後に泣かされるとは思わなかった。
本作は複雑な家庭環境を描いてはいるが、その家庭環境を悲観するほどの重い展開がないことも救いだ。
家族とは血の繋がりだけがすべてではない。
世の中そんなに上手くはいかないが、こんな家族の在り方があっても良いと心から思えた。
興味を持った方は是非。
☆今すぐApp Storeでダウンロード⤵︎