劇場版シリーズ第13作目
名探偵コナン 漆黒の追跡者
キャッチコピー
「逃げ切れねぇ、か…」
「江戸川コナン、最も危険な事件」
『名探偵コナン』とは
『名探偵コナン』は、1994年刊行開始の青山剛昌先生原作による推理漫画作品であり、本作を原作とした一連のメディアミックス作品の総称。
黒の組織によって少年化させられた高校生探偵・工藤新一が江戸川コナンと名乗り、組織の行方を追いながら数々の事件を解決していく推理漫画。
「週刊少年サンデー」(以下、『サンデー』)にて1994年5号より『名探偵コナン』の連載が開始された。
2014年6号で連載20周年、2017年37-38合併号で1,000話目を迎え、「サンデー」史上最長の連載期間となっている。
1996年からテレビアニメが放送開始され、2016年には20周年を迎えた。 1997年から毎年4月に劇場版映画が公開されている。
2001年、第46回(平成12年度)小学館漫画賞少年部門受賞。
2015年7月時点で単行本の国内累計発行部数は1億4900万部を、2021年10月時点で単行本の全世界累計発行部数は2億5000万部をそれぞれ突破している。
なお、2018年6月の時点で漫画は25の国と地域で翻訳・販売され、アニメは40ヵ国で放送されている。
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劇場版シリーズ伝統の実写エンディング
劇場版名探偵コナンといえば、鉄板のお約束がいくつかある。
その中のひとつがエンディング。
第1作からの伝統で、エンドロールで映画の舞台となったりモチーフとなった実際の風景(実際に無い場所でも有名なところをモデルにする)の映像が流れることが定番となっている。
他のアニメ作品ではあまり観ない演出なので、コナンのエンディングが印象に残っている人も多いかと思う。
本稿では、その実写エンディングだけにフィーチャーしてみよう。
劇場版『名探偵コナン 漆黒の追跡者』とは
『名探偵コナン 漆黒の追跡者』(しっこくのチェイサー)は、2009年4月18日に公開された日本のアニメ映画で、劇場版『名探偵コナン』シリーズの第13作目にあたる。
主人公・江戸川コナンの最大の敵である黒ずくめの組織が登場するのは2001年公開の第5作『天国へのカウントダウン』以来、8年ぶり2作目となる。
13作目と忌み数とされている13をかけて、主人公・江戸川コナンと宿敵・黒の組織の対決を物語の軸の1つに据えている。
表題の「チェイサー」は「口直しの水、あるいは軽い酒」の意味も含んでおり、タイトルが示す通り、組織に追われるコナンと組織のコードネームである酒の名前を表現した。
本作のオープニングは尺が長くとられており、BGMはメインテーマと「ブラックインパクト」のメドレー形式で使用されている。
オープニングの解説は原作のストーリーにも触れられている。
オープニング映像の一部は過去の劇場版から流用されているため、ジンの髪の色が本編と異なっている。
最後の「小さくなっても頭脳は同じ、迷宮入りなしの名探偵!真実はいつも一つ!」のセリフは、今作のみ、コナンと新一が同時に発している。
TVシリーズからの劇場版初登場のキャラクターが多く、ベルモット、キャンティ、コルン、ピスコ、松本清長、横溝参悟、大和敢助、上原由衣、第10作『探偵たちの鎮魂歌』でモブ出演していた山村ミサオが正式に初登場を果たした。
本作の事件は京都府で起こった火災と関係しているため、服部平次と遠山和葉も『探偵たちの鎮魂歌』以来3年ぶりに、第7作『迷宮の十字路』に登場した京都府警の綾小路文麿警部は6年ぶりに再登場した。
本作では、BREAKERZのメンバー・DAIGO氏が水谷浩介役で出演し、本作以降このような「スペシャルゲスト出演」が恒例となる。
本作と同じく黒の組織との対決がメインだった『天国へのカウントダウン』では連続殺人犯の様子を描いた回想シーンが見られたのに対し、本作は連続殺人犯の殺害動機や動機となる事件のシーンは、コナンと犯人の会話で語られるのみである。
また、ラストは本編の内容を反映し、シリアスな終わり方で締められている。
本作以降は劇場版の公開に合わせその劇場版で活躍する人物や劇場版のテーマにちなんだエピソードが本放送枠で再放送されるようになり、公開間近の3月23日にはピスコが登場したテレビアニメ第176話 - 178話「黒の組織との再会」が再放送された。
公開から約5か月後に神谷明氏が降板したため、神谷氏が演じる毛利小五郎が登場する劇場版は本作が最後になっている。
次作『天空の難破船』以降の劇場版は、2009年10月から2代目小五郎役を引き継いだ小山力也氏が担当している。
また、2014年1月17日に加藤精三氏が死去したため、加藤氏が演じる松本清長が登場する劇場版は本作が唯一である(ただし、松本も管理職を交代して以降登場しなくなったため、後任は未定)。
本作の小説版が小学館のジュニア文庫から2013年1月9日に発売された。
また、第3作『世紀末の魔術師』に続いて、漫画版が2013年6月18日に発売された。
2016年に開催された歴代映画19作品の人気投票で、今作は10位を獲得。
上映時間は110分。
興行収入は35億円。
第33回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞作品。
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あらすじ
東京・神奈川・静岡・長野で計6人が殺害される事件が起こった。
どの現場にも縦線とアルファベットが書かれた麻雀牌が残されていたことから、同一犯もしくは同一組織による広域連続殺人事件と認定される。
警視庁で各県警の刑事を集めて合同捜査会議が開かれ、特別顧問として小五郎も参加する事になった。
事件のうち5件はスタンガンを使って拉致され、別の場所へ移してから刺殺されたもので、6人目の犠牲者は死の前に「七夕、きょう」という言葉を言い残していた。
麻雀牌は1つが一筒、ほかは七筒で、それぞれ別の位置の丸が1つずつ赤く塗られており、被害者は所持品が1つずつ持ち去られていた。
会議終了後、コナンは山村警部が童謡「七つの子」に聞こえるプッシュ音を耳にしたことを聞く。
これは黒ずくめの組織のボスのメールアドレスを示すもので、それを打った刑事がジンの車である黒のポルシェ356Aで去ったことから、コナンは捜査会議に組織の人物、おそらく変装の達人であるベルモットが紛れ込んでいたことを確信する。
七夕前日の7月6日、米花町に現れた容疑者の1人が逮捕されるが、その現場には変装したベルモットもおり、それを見抜いたコナンは彼女を追い、組織が今回の殺人事件を追う理由を追求する。
ベルモットによると、被害者の中に一般人を装った組織の工作員がおり、犯人に持ち去られた所持品の中に工作員のリストが収められたメモリーカードが入っていたため、組織は警察より早く犯人を押さえてそれを取り戻す必要があるのだと言う。
それを聞いたコナンは事件の捜査員の中に別の組織の一員を潜入させていると気付き、ベルモットからはコードネームが「アイリッシュ」であると教えられる。
捜査会議には、警視庁や各県の顔見知りの警察官たちや、埼玉県警の荻野彩実警部らが居た。
ある人物から「犯人に心当たりがある」という通報が警察に入るが、その人物は組織や警察が到着する前に拉致されてしまっていた。
犯行現場を見た佐藤刑事は、現場へ向かう途中に自動車の両輪が同時にパンクしたこともあり、犯人以外になんらかの組織が動いていることや、内通者の存在を懸念する。
一方、捜査員の中に潜入したアイリッシュはコナンと新一の指紋を照合し、彼らが同一人物であるという確信を得る。
通報した人物が7人目の犠牲者として発見される中、「きょう」が「京都」と言いかけたものである可能性に気付いたコナンは平次の協力で、被害者たちが一昨年の七夕に京都のホテルで火事に遭ったことを突き止める。
その火事では本上なな子という人物が死亡しており、2人はなな子がそのホテルの7人乗りのエレベータから追い出されたために逃げ遅れ、彼女の恋人であり、同じくホテルに泊まっていたものの外出していたため難を逃れた水谷浩介が復讐を図ったもので、麻雀牌の縦線はエレベータの扉、印はエレベータ内の人物配置を意味すると推理する。
その後、なな子の実家を訪ねたコナンは、彼女の兄の和樹から、水谷が「許せない者が8人、まだ1人残ってます」と言っていたことを聞く。
また、犯行現場が北極星と北斗七星を描いていることに気付いたコナンは最後の現場になる東都タワーを訪れ、小五郎も一歩遅れてそのことに気づき、警察もそちらへ向かう。
コナンは東都タワーで水谷と相対するが、なな子と水谷が好きだった星の位置を犯行現場に当てはめる理由が理解できなかったことや性格の違いから、犯人は彼ではなく、こちらもタワーに来ていた、和樹だということを見抜いていた。
なな子は自発的にエレベータを譲ったのだが、和樹はそれでも火事の生還者たちや、駆け落ちした水谷を許せなかった。
そこで水谷に対してはなな子がエレベータから追い出されたと嘘を吐き、なな子を救えなかった自責の念に駆られていた水谷に対し、自分が殺害を実行する代わりに罪を被ったうえで自殺するよう要求したのだった。
水谷もその計画に同意していたのだが、コナンに諭されて身代わりになることをやめ、和樹に自首を促すが、和樹は逆上してコナンに襲いかかる。
そこに松本警視が現れ、コナンは彼が和樹を掴んだところに時計型麻酔銃を向けるが、針は外れて水谷に刺さってしまう。
この松本警視こそがアイリッシュの変装であり、コナンはベルモットがそのまま潜入を続けなかった理由を体格が大きく異なるため変装ができなかったためとの考えから、彼が偽物であると見当をつけていた。
アイリッシュはコナンと新一が同一人物であることを掴んでいたが、ジンに対する恨みから、コナンをボスのところへ連れていきジンを失脚させるために、まだ誰にも話していなかった。
コナンは逃げながらアイリッシュと戦い、タワーの外縁部に出るが、そこへジンら組織のメンバーがAH-64攻撃ヘリコプターに乗ってやって来る。
アイリッシュはメモリーカードを取り戻したことを彼らに示すが、タワー周辺に警察が終結し逃げ切れないと判断したジンの命令で、キャンティによってメモリーカードともども撃ち抜かれ重傷を負う。
コナンはアイリッシュを救命しようとするが、その存在に気付いたジンの命令でキャンティの狙撃を受けてしまう。
しかしコナンのその行動に感じ入ったアイリッシュが致命傷を負う代わりにコナンを庇い、コナンに「いつまでも追い続けるがいい」と言い残して死亡した。
組織はコナンを始末するべくヘリに搭載されたM230チェーンガンで銃撃しながらタワーの上の方へと追い詰め、姿を確認しようとするが、コナンは以前阿笠博士から貰った、100メートルまで自在に伸ばせるサスペンダーを使って飛び降り、自身は落下の勢いを殺しながら破損したライトを反動で射出することで、組織のヘリを撃墜する。
ヘリからは遺体は発見されず、全員が脱出したものと思われた。
また、監禁されていた松本警視は、阿笠の通報で佐藤刑事と高木刑事によって救出された。
コナンは今後組織と戦ううえで武器になると考えていたリストを入手できず、組織もコナンの正体を掴めないままの幕引きとなるが、コナンはアイリッシュが死に際に残した「いつまでも追い続けるがいい」という言葉を思い返し、組織と戦い続ける決意を新たにするのだった。
主題歌
- 倉木麻衣「PUZZLE」
作詞 - 倉木麻衣 / 作曲 - 望月由絵・平賀貴大 / 編曲 - 小澤正澄
倉木が映画主題歌を担当するのは本作で3回目となる。
また、倉木は初めて黒の組織が関わった、『天国へのカウントダウン』でも主題歌を担当している。
前作までとは異なり、エンドロール開始と同時に曲が始まる。
フルバージョンで使用されているが、冒頭のドアが開くS.E.はカットされている。
実写エンディングロケ地
東京タワーが舞台になっているだけあって、ロケ地は東京タワーを中心に撮影されている。
その他、レインボーブリッジやお台場のシンボルプロムナード公園(ウエストプロムナード)など。
エピローグ
松本警視が監禁されていた場所へと到着した3人。
その時、アイリッシュの最期の言葉がコナンの脳裏によぎる。
「いつまでも追い続けるがいい」。
コナンは黒ずくめの組織と戦い続ける決意を新たにするのだった。
おとぼけ要素が一切ない、珍しくシリアスなエピローグ。
『名探偵コナン』のメインテーマ、黒ずくめの組織との戦いにスポットをあてた作品だけあって、今後に繋がる締め方がなされている。
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