其の三十ニ
美しき日本語の世界。
日本人の48%が誤用「気が置けない人」
否定の意味なのに、肯定の意味になる不思議な言葉
「気の置けない友達」は、「仲の良い友達」を意味する。
反対に「気の置ける」は、「気を遣う」という意味になる。
不思議に思ったことはないだろうか。
「~ない」という否定の意味を含むのに、なぜ肯定の意味になるのか?
この紛らわしさのおかげで、「気の置けない」という言葉は日本人の48%が誤用しているという。
日本語を母語とする日本人ですらこんな状態だから、そのややこしさは筋金入りということだろう。
「気の置ける」「気の置けない」の意味を正しく理解していないと、思わぬところで余計な誤解を生んでしまうかもしれない。
本稿を読み、言葉の意味をしっかり理解することで、誤用や違和感が解消されることを切に祈る。
「気の置けない~」への違和感
日常生活であまり使うことないが、マンガや小説、映画やドラマなんかではよく見かける「気の置けない」という言い回し。
「~ない」は否定の意味なのに、「仲が良い、親しい」という意味になるのは違和感しかない。
おかげで「気の置けない」を、「打ち解けられない」と解釈している人も多いのではないだろうか?
でも実はまったくの逆で、「気の置けない友達」は、「仲が良い友達」という意味になる。
「~ない」という否定の言葉に含まれているため、なんとなくしっくりこないが、誤って「気の置けない」を「親しくない」という意味で使ってしまうと、人間関係がギクシャクしてしまいそうだ。
正しい使い方を覚えるために、「気の置ける」の意味から理解してみよう。
まずは「気の置ける(気が置ける)」への理解を
「気の置けない」の反意語は、「気の置ける」である。
言葉の印象から、「気の置ける」の方が「仲が良い、親しい」という意味になりそうだが、そうではない。
「気の置ける(気が置ける)」は「打ち解けられない、気にかかる、気遣う」という意味を持つ。
相手に対して「気を置く」ということは、つまり「気遣ってしまう、遠慮してしまう」という意味になるのだ。
反対に「気の置けない(気が置けない)」は、「気遣う必要のない、遠慮がいらない」という意味を持つ。
相手に対して「遠慮の必要がなく、気を許せる間柄」という意味となるのだ。
通常なら「~ない」という言葉が付くと否定の意味になるのだが、この言葉は逆。
- 「気の置ける人」は「気を遣ってしまう人」
- 「気の置けない人」は「気を遣う必要のない親しい人」
気を置く、つまり自分の気をその人に向けてしまうこと、=「気になってしまう、気遣ってしまう」という意味になるのだ。
ただし、ならば「気の置けない」が否定語ではないかといえばそれは違う。
「気の置ける」という言葉の意味を正しく理解すれば、「気の置けない」はれっきとした否定の言葉である。
「気の置ける」より「気の置けない」の方が使用頻度が高いため、否定である「気の置けない」が主流の言葉のように勘違いしているだけなのでご注意を。
…説明すればするほどややこしくなる「気の置けない」。
日常会話で遣う機会はほとんどないだろうが、日本人の多くが母国語を平気で誤用している現実は、やはりどうかと思う。
間違いは誰にでもあるが、それを正そうとする気持ちが大切。
正しく美しい日本語の使用を心掛けたいものである。
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