アニメ
映像研には手を出すな!
『映像研には手を出すな!』とは
『映像研には手を出すな!』は、大童澄瞳先生による日本の漫画作品。
「月刊!スピリッツ」(小学館)にて、2016年9月号より連載されている。
作者の第1作目の漫画連載作品。
人並み外れた空想力を持つ浅草みどり、金儲けが好きな長身の金森さやか、カリスマ読モだがアニメーター志望の水崎ツバメの3人を主人公に、女子高生によるアニメ制作活動を描くストーリー作品。
作品は当初、実写映画を題材にする予定だったが、大童澄瞳先生の担当編集者の「実写よりもアニメの方がとっかかりがいい」のアドバイスで「アニメ制作」が題材となった。
『映像研には手を出すな!』というタイトルは、『明日へ向かって撃て!』『北北西に進路を取れ』『ダイヤルMを回せ』『現金に手を出すな』『俺たちに明日はない』というような古い映画のタイトルへの憧れで考えられた。
ちなみに作品中の詳細な「図解」は『ドラえもん』に影響を受けている。
浅草みどりのモデルは、大童さんの「引きこもっている時の、弱い自分」。
「ぬいぐるみの吸引」も実体験である。
また、金森さやかは大童さんの学生時代の映画部での経験が反映されている。
水崎ツバメはクールで物静かで飄々としているキャラクターになる予定だったが、編集者の「バックグラウンドでめちゃくちゃ個性がある超お金持ちってどうですか」という提案により、お嬢様で読者モデルという設定になった。
時代設定は2050年代。
浅草は「オープンセサミ」「あっと驚く為五郎」など古い言い回しをするが、昔の流行語が掘り返されて使用されていることで、時代が巡っている感じを表現している。
作品には、浅草の啖呵が大工調べからの引用であるほか、芝浜高校(芝浜)、富久書店(富久)など落語が元ネタのセリフ、用語がある。
TV Bros.(東京ニュース通信社)のマンガ賞「ブロスコミックアワード2017」大賞を受賞。
2020年9月時点でシリーズ累計発行部数は100万部を突破している。
アニメ『映像研には手を出すな!』
大童澄瞳先生による同名漫画作品を原作としたテレビアニメ作品。
2020年1月6日から3月23日までNHK総合にて放送された。
サイエンスSARUにとって初の元請制作テレビアニメとなる。
原作単行本第1巻から第3巻までの内容を全12話で描いている。
同年6月24日に全12話を収録したBlu-ray『映像研には手を出すな!COMPLETE BOX』が発売された。
2021年10月24日から2022年1月2日までNHKEテレで再放送された。
第6話から第11話までのエンドカードはアドビ、ワコムとのコラボイラストコンクール入賞者の作品が採用された。
2020年1月8日から公式Twitterで本編を振り返る短編アニメが配信された。
演出は奥村元氏、SDデザインはよしとも、背景は井上涼雅氏、制作はK&KデザインとAQUA ARIS。
NPO法人放送批評懇談会による、放送文化に貢献した番組を表彰するギャラクシー賞の2020年3月度月間賞に選定。
ニューヨーク・タイムズが選ぶ2020年の最も優れたテレビ番組「ベストTV番組2020」(The Best TV Shows of 2020)と「ベストTV番組 海外部門2020」(The Best International Shows of 2020)に選出され、巧みに表現された「アニメの創作過程」を通じて、「アイデンティティーを発見するテーマが感動的に織り込まれたストーリーライン」と評価された。
米ザ・ニューヨーカーが選ぶ2020年度の「ベストテレビ番組」(The Best TV shows of 2020)にも選ばれ、作品は「どこかおどけていながらもゴージャス」なビジュアルで、「自分のアニメを作ろうとしている」3人の女子高生の「創造的な欲求と現実とのジレンマ」は涙を誘い、「オープニングは2020年の最高のテーマソング」と評価された。
2021年3月12日に開催された東京アニメアワードフェスティバル2021の「アニメ オブ ザ イヤー部門」において、2020年度に上映・放送された457作品の中からファンが選出する「みんなが選ぶベスト100」で1位に輝き、同部門で作品賞(テレビ部門)を受賞したことが発表された。
米クランチロールが主催する「クランチロール・アニメアワード2021」において、ベストアニメーション賞とベストディレクター賞(湯浅政明氏)の受賞が発表された。
2020年度芸術選奨文部科学大臣賞(メディア芸術部門)受賞(湯浅政明氏)。
第24回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の大賞を受賞。
2021年11月にはイギリスのミュージシャン・エルヴィス・コステロが「ガーディアン」紙上にて「文化的ハイライト」の一つとして紹介、「映画制作のあらゆる要素の教材」と評価した。
映像研には手を出すな! COMPLETE BOX (初回生産限定版/2枚組) [Blu-ray]
あらすじ
アニメーション制作を夢見る高校1年生の浅草みどりは、同級生の金森さやかとともにアニメ研の上映会へ。
すると、カリスマ読者モデルとして知られる水崎ツバメが声をかけてきた。
水崎はなぜか黒ずくめの男たちに追われていた。
浅草と金森は彼女を助け、男たちを撃退する。そして2人は水崎が意外にもアニメーター志望であることを知る。
浅草と水崎の即興での合作が始まり、意気投合した3人の前に「最強の世界」が広がっていく…。
登場人物
映像研
映像研究同好会。
浅草たちが作ったアニメを制作するための部活動。
芝浜高校にはアニ研(アニメ文化研究会)が存在するが、水崎が両親から入部を禁じられているため、金森が「映像系の部活」と教員をごまかし、新たに立ち上げた。
浅草みどり
声 - 伊藤沙莉
芝浜高校1年生で映像研のメンバー。
2月3日生まれ。
小柄で黒髪おかっぱにマルチカムのブーニーハットを被り、軍用リュックを背負って行動する。
一人称は「ワシ」「あっし」で語尾に「- じゃよ」をつけたりべらんめえ調になったりと独特の話し方をする。
人に対する呼称は「名字+氏」「名字+君」。
アニメ制作では「設定が命」。
自分が考えた「最強の世界」で大冒険するのが夢。
好奇心が強く探検好き、面白いものを見て刺激を受けると猛烈な勢いでイメージボードに空想世界を描き出すことを得意とするが、人付き合いが極度に苦手。
芝浜高校に入学したらアニメ研に入ってアニメを作りたかったが一人では中々行動できなかった。
水崎と出会い、金森に乗せられて映像研に参加する。
臆病で暗いところやお化けが苦手。
不安になると小さなうさぎの縫いぐるみを吸って気持ちを落ち着かせる。
金森とは同じ上狸沢中学校の出身。
同じ映像研の金森と水崎を友達でなく仲間としている。
金森さやか
声 - 田村睦心
浅草の同級生で映像研のメンバー。
現実主義者でプロデューサー的役割担当。
10月9日生まれ。
三白眼にそばかす、黒髪ロングヘアで、目が悪いが常におでこの上に眼鏡を乗せている。
時にその眼鏡を髪留めに使用することがある。
大きなスニーカー2足がプリントされたリュックを愛用。
一人称は「私」。
人目を引くほどの長身(180cm)で美脚。
短気で厳しい性格。
瓶牛乳とコロッケと利益が出る活動を好む。
人に対する呼称は「名字+氏」。
浅草と水崎にアニメ制作を勧め映像研を立ち上げる。
アニメに興味も知識もないが、中学生のころ、周囲から孤立していた浅草と連むようになった。
拘りが強く作業が滞りがちな浅草と水崎を叱咤しコントロールする役目を担う。
浅草とは同じ上狸沢中学校の出身。
水崎ツバメ
声 - 松岡美里
浅草たちの同級生で映像研のメンバー。
美人のカリスマ読モで街中にポスターが貼ってあるほどの有名人。
5月15日生まれ。
茶髪で左右非対称のボブカット、襟足はツーブロック。
主人公で唯一複数のリュックを所持している模様で度々リュックが変わっている。
一人称は「あたし」。
父親(声 - 三上哲)と母親(声 - 日髙のり子)が有名な俳優で実家がお金持ち。
人に対する呼称は「名字+さん」。
両親から俳優になるよう言われており、アニ研入部を禁じられていたが本人はアニメーター志望。
浅草並みに好奇心が強く、探検に出掛ける時には目を輝かせる。
アニメーションによる動きのリアルさを表現することにこだわりを持つ。
金銭感覚がずれている上に世間知らずで、高校生になるまで箸の持ち方を間違えていた。
走り方も独特で、本来片腕を前に出し走る際は腕を後ろに引っ込める時同様折り曲げて走るのが普通だが、なぜか腕を真っ直ぐにして走る。
アニメ版では子供のころ、曾祖母(声 - 宮寺智子)と交流したり、演技のレッスンを受けながら人間の動きを観察し、絵を上達させていく様子が描かれた。
主題歌
- chelmico「Easy Breezy」
作詞:Rachel & Mamiko
作曲:ryo takahashi & Rachel & mamiko
編曲:pistachio studio
本作のOPを飾る「Easy Breezy」は、中毒性の高いリリックが特徴的な1曲。
その歌詞を見ていくと「てか長続きする気がしない とかそんな性格でなにが悪い」、「ただ好きなもんは好き 外野はお黙り」などの好きなことを貫き通す楽しさや、「見切り発車で 進んじまったね 街の灯りが 後ろに消えてく孤独」といったクリエイターならではの苦労が表れており、『映像研には手を出すな!』のストーリーとも通ずるものがある。
何かを創る難しさと面白さをクリエイター目線で描いた傑作アニメ
浅草みどり役の伊藤沙莉に絶賛の嵐
「浅草氏に顔も声もそっくり」
「唯一無二のハスキーボイス」
「伊藤沙莉さんの声にハマっています」
本作では、主人公・浅草みどりの「声」にも注目が集まった。
声優を務めたのは俳優の伊藤沙莉さん。
9歳でデビューして以来、高い演技力でドラマ・映画に次々と出演。
『全裸監督』のへアメイク、朝ドラ『ひよっこ』の米屋の娘さおり、『これは経費で落ちません!』の後輩など、最近の話題作で並々ならぬ存在感を醸し出している。
本作で、俳優だけでなく声優としても高い評価を受けた伊藤沙莉さん。
参考にしたのは「寅さん」と「落語」だったという。
やりたいことをやる難しさ
主人公の3人はいつもいろいろな「制限」に追われている。
それは〆切という時間や制作費という金銭的な制限だったり、リソースの制限だったり、その時々でいろいろだ。
本作の主人公達は仕事として映像を作っているわけではないから、基本的には「好きなものを作る」という理念で行動している。
だが、それでも、本当に好き勝手に好きなものが作れるわけではなく、いつも何かしらの理由や制限があって映像を作っている。
コマーシャルベースにしろ自主制作にしろ、クリエイティブな作品作りには大変な手間とお金が掛かるものだ。
何かあった時に力を貸してくれる後ろ盾が必要になってくる。
このように第三者が関わることで、達成しなければいけない目的が発生し、意見を取り入れて作品を作ることが求められるようになる。
本作の主人公達が何かしらの制限から、本当に好き勝手に好きなものを作れていないのは、こうした理由からだった。
なかでも特に問題になった制限は「時間」。
制作の現場では、常にこの「時間が足りない」という問題がいつも付きまとう。
「やりたいことは沢山あるけど時間が足りない」という悲しい現実が目の前にある中で、それでもなんとか間に合わせるために泣く泣くシーンを削る。
演出や題材、カメラワークを工夫したりして、あらゆる手を使って「足りないもの」をクリアにしなければならない。
何かを創るとは、きっとそういうことの繰り返しなのだろう。
仕事にしろ、趣味で作るにしろ、大富豪でもない限り、用意された環境の中で制限を受けながらより良い作品を目指す。
できることには限度があり、その中でどのような方法があるかを模索し、創意工夫していく過程が面白いわけで、それを忠実に描いたのが本作だと思う。
制限内で最高の作品を生み出す。
それこそがクリエイターにとっての腕の見せ所であり、そこを乗り越えていくことに快感を覚えていく主人公達の姿が、歳を取るとキラキラしていて眩しくもあり羨ましくもある。
しかし、これはクリエイターにだけ限った話ではなく、すべての働く人に共通した思いではないだろうか。
大人もハッとさせられる金森氏の名言
金森さやか。
通称・金森氏は頭の回転が速い毒舌家で、空想癖のある浅草氏や水崎氏にツッコミを入れることもしばしば。
基本的には敬語で話すが、時々荒っぽい口調になることも。
アニメに関する知識はないが、持ち前のマネジメント能力で映像研を引っ張っていく。
映像硏ではプロデューサーの立場にある。
そんな金森氏が、浅草氏から「金の亡者!」と揶揄された時には放った言葉。
仕事に責任を持つために金を受け取るんだ!
タダより高いものはない。
無償であることが善いことだとは限らない。
良い仕事には、相応の対価を。
その逆も然り。
ロボットアニメ制作の矛盾に苦悩するアニメクリエイター
アニメ制作を夢見るクリエイターが、ロボットアニメ制作が抱える矛盾を描いた深いエピソード。
鉄腕アトムからガンダムやパトレイバーを経てエヴァンゲリオンに至るまで、これまでロボットアニメはロボットを通して、人間のなんたるかを解き明かす深遠なテーマを追求してきた。
しかしそれは同時に、ロボットが巨大になったり最新の科学兵器を装備したりすることで、リアリティから乖離してゆくという矛盾を抱えることになった。
かといって、ロボットを実用サイズにまで小さくしたり、わざわざメカを二足歩行にする必然性にまで切り込んでゆくと、それはもはやロボットアニメそのものを否定する境地にまで至らざるを得ない。
本作では、アニメ制作の核心に触れるようなこのジレンマを呑み込み立ち直ることで、浅草氏のアニメ監督としての成長が描かれている。
とかくアニメ好きは、現実とアニメの区別がついていない人間と揶揄されることが多い。
だが実際はそんなこともなくて、逆説的に現実的な設定を重視する人間が多い。
どうしたら本物のガンダムを造れるのか?
どうしたら本物のエヴァンゲリオンに乗れるのか?
現実を考えたら実現は夢のまた夢。
アニメ好きは、そうやってちゃんとアニメと区別し認識した上で作品を楽しんでいる。
ガンダムやエヴァンゲリオンが、劇中と同じ動きで実現できないことくらいちゃんと理解しているのだ。
それでもやっぱり憧れるから、いつか実現されることをアニメを通して夢に見る。
アニメ制作者だって同じ気持ちだろう。
所詮はアニメだとバカにされないためには、本当ならロボットなんか登場させてはいけない。
だが、娯楽性という観点から見たら、それではあまりに味気ない。
夢がない。
だから巨大ロボットという夢の設定に、できる限りのリアリティを詰め込むのだ。
「ロボアニメ制作は逃れられない罪を背負うことだもん」
水崎氏のこのセリフが本作のすべてを物語っている。
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