問われる、メディアによる原作の扱い方
【訃報】『セクシー田中さん』作者・芦原妃名子さんが死去 50歳
漫画『セクシー田中さん』の作者である芦原妃名子(本名:松本律子)さんが亡くなったことがわかった。
50歳だった。
芦原妃名子さん、死去
報道によると2024年1月28日から行方不明になっており、翌29日に栃木県内で死亡しているのが見つかったという。
芦原さんは昨年10月期に日本テレビ系でドラマ『セクシー田中さん』が放送され、実写ドラマ版の制作陣との間に起きたトラブルを、自身のXで明かしていた。
26日に「今回のドラマ化で、私が9話・10話の脚本を書かざるを得ないと判断するに至った」とポストし、ドラマが放送終了するまでに監督はじめスタッフと内容について直接話せず、原作を大きく改変していたと告発。
しかし、28日に一連のポストを削除し、「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と謝罪していた。
日本テレビコメント
芦原妃名子さんさんの訃報を受け、日本テレビは公式サイトにて「芦原妃名子さんの訃報に接し、哀悼の意を表するとともに、謹んでお悔やみ申し上げます」と追悼。
「2023年10月期の日曜ドラマ『セクシー田中さん』につきまして日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております。本作品の制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております」とコメントし。
芦原さんは1974年1月25日生まれ、兵庫県出身。
1994年に『その話おことわりします』(別冊少女コミック)でデビュー。
これまで『砂時計』(Betsucomi/全10巻)、『Piece』(ベツコミ/全10巻)『Bread & Butter』(Cocohana/全10巻)などの作品を刊行。
『セクシー田中さん』は7巻まで発売されており、小学館の「姉系プチコミック」で連載中だった。
小学館漫画賞少女向け部門を受賞した『砂時計』は2007年にTBS系でドラマ化、2008年に映画化。
2度目となる小学館漫画賞を受賞した『Piece』は2012年に日本テレビ系列でドラマ化された。
『セクシー田中さん』ドラマ化「必ず漫画に忠実に」条件守られず…原作者が経緯説明、謝罪と感謝も
日本テレビ系で昨年10月クールに放送された連続ドラマ『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんが2024年1月26日、自身のX(旧ツイッター)を通じ、「今回のドラマ化で、私が9話・10話の脚本を書かざるを得ないと判断するに至った」経緯を伝えた。
芦原さんは「この文章を書くにあたって、私と小学館で改めて時系列にそって事実関係を再確認し、文章の内容も小学館と確認して書いています」とし、長文を投稿。
また、ドラマが放送終了するまで脚本家と会うことはなく、監督らスタッフとも内容について直接会話をしていないとし、「ですから、この文章の内容は私達の側で起こった事実ということになります」と前置きした。
その上で「『セクシー田中さん』は一見奇抜なタイトルのふざけたラブコメ漫画に見えますが…。自己肯定感の低さ故生きづらさを抱える人達に、優しく強く寄り添える様な作品にしたいという思いが強くあり、ベリーダンスに纏わる方々の思いにも共鳴しながら、担当編集と共に大切に描いてきた漫画です」と説明。
ドラマ化にあたっては、数話のプロットや脚本をチェックし、昨年6月上旬頃に同意したという。
一方、原作漫画は未完で、結末も定めていないことから「必ず漫画に忠実に」、ドラマオリジナルとなる終盤については「原作者があらすじからセリフまで」用意することも条件とし、「場合によっては、原作者が脚本を執筆する可能性もある」と求めたという。
これらがスタッフが制作側に失礼にあたるとも理解し、「この条件で本当に良いか」と何度も確認したという。
「ところが、毎回、漫画を大きく改編したプロットや脚本が提出されていました」とし、「漫画で敢えてセオリーを外して描いた展開を、よくある王道の展開に変えられてしまう」、「個性の強い各キャラクター、特に朱里・小西・進吾は原作から大きくかけ離れた別人のようなキャラクターに変更される」、「 "性被害未遂・アフターピル・男性の生きづらさ・小西と進吾の長い対話" 等、私が漫画『セクシー田中さん』という作品の核として大切に描いたシーンは、大幅にカットや削除され、まともに描かれておらず、その理由を伺っても、納得のいくお返事はいただけない」などの点を列挙。
芦原さんは「私が描いた『セクシー田中さん』という作品の個性を消されてしまうなら、私はドラマ化を今からでもやめたいぐらいだ」と訴えて加筆修正し、7話まではほぼ原作通りとなったが、相当疲弊。
「そして、私があらすじ、セリフを準備する終盤のドラマオリジナル展開は8話~10話となりましたが、ここでも当初の条件は守られず、私が準備したものを大幅に改変した脚本が8話~10話まとめて提出されました」と明かした。
「特に9話、10話の改変された脚本はベリーダンスの表現も間違いが多く、ベリーダンスの監修の方とも連携が取れていないことが手に取るように分かりましたので、〈当初の約束通り、とにかく一度原作者が用意したあらすじ、セリフをそのまま脚本に落としていただきたい〉」、また「足りない箇所、変更箇所、意見はもちろん伺うので、脚本として改変された形ではなく、別途相談していただきたい」と、小学館を通じ日本テレビへ申し入れを繰り返したという。
しかし状況は変わらず、時間も足りなくなり、9話以降について当初の条件通り「原作者が用意したものをそのまま脚本化していただける方」への交代を要望。
「結果として、日本テレビさんから8話までの脚本を執筆された方は9話、10話の脚本には関わらないと伺ったうえで、9話、10話の脚本は、プロデューサーの方々のご要望を取り入れつつ、私が書かせていただき、脚本として成立するよう日本テレビさんと専門家の方とで内容を整えていただく、という解決策となりました」と伝えた。
芦原さんは「何とか皆さんにご満足いただける9話、10話の脚本にしたかったのですが…。素人の私が見よう見まねで書かせて頂いたので、私の力不足が露呈する形となり反省しきりです。漫画『セクシー田中さん』の原稿の〆切とも重なり、相当短い時間で脚本を執筆しなければならない状況となり、推敲を重ねられなかったことも悔いてます。9話、10話の脚本にご不満をもたれた方もいらっしゃるかと思います。どのような判断がベストだったのか、今も正直正解が分からずにいますが、改めて、心よりお詫び申し上げます」とした。
そして「最後となりましたが、素敵なドラマ作品にして頂いた、素晴らしいキャストの皆さんや、ドラマの制作スタッフの皆様と、『セクシー田中さん』の漫画とドラマを愛してくださった読者と視聴者の皆様に深く感謝いたします」と結んだ。
問われる、メディアによる原作の扱い方
最悪の事態になってしまった。
どうしてこんなことになってしまったのか…。
あらゆるメディアで漫画原作作品がもてはやされている現在、原作の扱い方は作る側にとっても観る側にとっても大きな課題のひとつになっている。
とはいえ、放送スケジュールや尺の都合で原作が改変されることはよくあること。
問題なのは、その改変に原作者が納得しているのかどうかだと思う。
作品の生みの親である原作者さえ納得しているなら、どんな改変でも視聴者は受け入れるだろう。
しかし原作を、原作者の許可なしで改変するということは、原作のままでは視聴者にウケないとメディア側が勝手に判断したことになる。
視聴率のためにメディアの都合で改変されるとなれば、それは作品と作者に対する冒涜でしかない。
原作に対する凌辱だ。
無礼以外のなにものでもない。
しかしこの問題は、原作がどうのこうのと好き勝手に批評する、我々視聴者にも責任の一端があるのかもしれない。
そう考えると心が痛む。
『セクシー田中さん』作者・芦原妃名子さんの訃報は、これからの原作の扱い方と在り様についてを厳しく問う。
しっかり受け止め、ちゃんと考えよう。
芦原妃名子さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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