アニメーション映画
北極百貨店のコンシェルジュさん
わずか70分で驚異の表現力!ハートフルな裏で人間の贖罪と多様性の真の捉え方が描かれた感動名作
『北極百貨店のコンシェルジュさん』とは
仕事を頑張るすべての人におくる、
不思議でかわいい "動物×百貨店" エンターテインメント。
原作は、緻密に線を重ねる独特な表現で装画家・イラストレーターとしても活躍する西村ツチカ先生による漫画『北極百貨店のコンシェルジュさん』(小学館「ビッグコミックススペシャル」刊、第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞)。
人間と動物が織りなす奇想天外な世界観が
魅力の本作を、『ハイキュー!!』シリーズや『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』など、数々の名作を世に送り出してきたProduction I.Gが映像化。
監督を務めるのは、本作が劇場版アニメの監督デビューとなる新進気鋭のアニメーター・板津匡覧氏。
西村ツチカ先生が描く美しい線の再現にこだわり、四季折々の美しい色調で「北極百貨店」を彩りながら、主人公・秋乃をはじめとする
個性豊かなキャラクターたちに命を吹き込む。
従業員は人間。
お客様は動物。
華やかでどこか不思議な「北極百貨店」にあなたも訪れてみませんか?
映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』(完全生産限定版) [Blu-ray]
あらすじ
新人コンシェルジュとして秋乃が働き始めた「北極百貨店」は、来店されるお客様が全て動物という不思議な百貨店。
一人前のコンシェルジュとなるべく、フロアマネージャーや先輩コンシェルジュに見守られながら日々奮闘する秋乃の前には、あらゆるお悩みを抱えたお客様が現れる。
中でも<絶滅種>である " V.I.A "(ベリー・インポータント・アニマル)のお客様は一癖も二癖もある個性派ぞろい。
長年連れ添う妻を喜ばせたいワライフクロウ
父親に贈るプレゼントを探すウミベミンク
恋人へのプロポーズに思い悩むニホンオオカミ…
自分のため、誰かのため、様々な理由で「北極百貨店」を訪れるお客様の想いに寄り添うために、秋乃は今日も元気に店内を駆け回る。
登場人物
秋乃
声 - 川井田夏海
北極百貨店で働く新人コンシェルジュ。
試用期間中。
エルル
声 - 大塚剛央
百貨店内を徘徊するオオウミガラス。
北極百貨店創業者の孫で三代目。
東堂
声 - 飛田展男
神出鬼没のフロアマネージャー。
森
声 - 潘めぐみ
秋乃の先輩コンシェルジュ。
岩瀬
声 - 藤原夏海
秋乃の先輩コンシェルジュ。
眼鏡をかけている。
丸木
声 - 吉富英治
ベテランコンシェルジュ。
定年退職済であるが人手が足りない時に応援として勤務している。
給仕長
声 - 福山潤
北極百貨店内レストランの給仕長。
トキワ
声 - 中村悠一
リストラ執行人として従業員をチェックする。
秋乃へのチェックは特に厳しい。
ウーリー
声 - 津田健次郎
ケナガマンモスの造形作家。
クズリ
声 - 高木渉
ウーリーのマネジャー。
- 百貨店の客
ワライフクロウ夫
声 - 立川談春
妻の喜ぶ姿が見たいと妻へのプレゼントを買いに来た高齢の社長。
ワライフクロウ妻
声 - 島本須美
高齢の社長夫人。
ウミベミンク娘
声 - 寿美菜子
久しぶりに再会する父親に贈るプレゼントを買いに来た。
ウミベミンク父
声 - 家中宏
久しぶりに再会する娘に贈るプレゼントを買いに来た。
クジャク
声 - 七海ひろき
店内のあちらこちらで彼女へ愛を語らい、求愛行動を繰り広げる。
クジャク彼女
声 - 花乃まりあ
ニホンオオカミ
声 - 入野自由
彼女へのプロポーズに悩む弱気な青年。
レストラン利用客。
プロポーズに先駆けて1人で下見に来ていたところ、給仕長に彼女にすっぽかされたと勘違いされた。
二ホンオオカミ彼女
声 - 花澤香菜
バーバリライオン
声 - 村瀬歩
彼女の思い出の香水を探している。
バーバリライオン彼女
声 - 陶山恵実里
名前はテーザ。
告白を受ける条件として祖母の思い出の香水を求めた。
その後、クリスマス期間に2人で北極百貨店を訪れる。
カリブモンクアザラシ
声 - 氷上恭子
ドレスを買いに来たが秋乃の従順な対応に、次第にクレーマーとなって行く。
ゴクラクインコ
声 - 清水理沙
入退院を繰り返す娘(ジョンジー)へのクリスマスプレゼントを買いに来たが、予算はワンコイン。
ネコ
声 - 諸星すみれ
芸術を愛するパティシエ見習い。
ウーリーのファンでもある。
主題歌
- 「Gift」
Myuk (Sony Music Labels Inc.)
劇伴も務めたtofubeatsによる作曲×Myuk作詞による主題歌。
本作の世界観とMyukの名に相応しい、やわらかくてやさしい楽曲。
Myuk
中学生の頃よりシンガーソングライター「熊川みゆ」として活動し、2021年に「Myuk」としてメジャーデビュー。
Myukは、スウェーデン語で「やさしさ」「やわからさ」の意味を持つ "Mjuk" と本名(Miyu Kumagawa)からの造語。
神秘的で柔らかくも、どこかに意思の強さを秘めた歌声で、音楽を発信している。
ハートフルな裏で描かれる人間の贖罪と多様性の真の捉え方
『北極百貨店のコンシェルジュさん』を知るキッカケとなったテイルズ (id:MyStory)さんに感謝を。
人間の贖罪
本作の舞台となる「北極百貨店」。
従業員は人間で、お客様は動物。
ひと言に動物といっても、上得意として扱われるのは <絶滅種>である " V.I.A "(ベリー・インポータント・アニマル)。
今はもうこの世に存在しない動物たちなのである。
そして " V.I.A "(ベリー・インポータント・アニマル)が絶滅した理由は、そのほぼすべてが人間の乱獲に依るもの。
いわば人間の業によって滅んでしまったといえる。
そんな " V.I.A "(ベリー・インポータント・アニマル)に、真心と誠意をもって接する従業員たち。
それが本作の魅力である、人間と動物が織りなす奇想天外な世界観の根幹ではあるのだが、その従業員たちの姿が、己の業によって滅ぼしてしまった動物たちへの贖罪行為にみえなくもない。
もしかしたら「北極百貨店」の創業者の胸中には、あるいはそんな思いが秘められていたのかもしれない。
しかし時代は移り変わり3代目。
世の中の考え方も変わる。
たしかに本作は罪や罰といった暗く重いテーマを掲げているわけではない。
だが、観終わって思い返してみると、ふとそんな裏テーマがあったのではないかと少しばかり考えてしまう。
とはいえ、本作は視聴後の余韻が非常に心地良い作品である。
ぜひ家族揃ってご覧になっていただきたい。
多様性を認め合うためには思いやりが不可欠
本作では、お客様がすべて動物で描かれており、なかでも上得意である " V.I.A "(ベリー・インポータント・アニマル)の振る舞いは時に非常にわがままな態度で描かれている。
もしかしたらそれは、彼らが絶滅した理由が人間にあり、その恨みを反映しているのかもしれない。
しかしひとつフィルターを外してみると、これが人間の多様性の比喩でもあることに気がつく。
多様性の認め合いが叫ばれる昨今。
だがその言葉だけが先行しすぎて、実態は伴っていない。
多様性という言葉を盾に相手を黙らせる行為は、本当の意味で多様性を認め合った結果だといえるのだろうか。
多様性は、無自覚にただ認めればいいというわけではない。
互いを理解して認めることと否応なく認めさせるのとでは、その意味合いがまったく違う。
多様性は理解を以て認めてもらうものであって、力尽くで認めさせるものではないのだ。
相手の理解も得ずに多様性を認めさせる行為は、言うなれば「お客様は神様」という言葉で秋乃を悩ませた、カリブモンクアザラシのカスタマーハラスメントと何ら変わりはしない。
もし相手に理解を得たいなら、まずは自分が相手を想う気持ち、思いやりを示さなければいけないのではないだろうか。
本作主人公の秋乃は試用期間中の新人コンシェルジュで、けっして優秀とは言い難い。
はじめのうちは、お客様の要求していることがまったくわからず四苦八苦している。
だが、お客様の様々な難題に、相手にただ喜んでほしいという純粋な想いだけで応えようとする秋乃の姿は、思いやりに満ちていた。
そして秋乃の思いやりがお客様の胸を打ち、両者に立場や種族の違いといった垣根を越えさせる。
これこそ、真の意味で多様性を認め合った結果ではないだろうか。
多様性を認め合いには思いやりが不可欠。
それを本作が教えてくれているように思えてならない。
わずか70分で描かれる感動の名作
各エピソードに共通する "思いやり"
本作で描かれるエピソードのいくつかは、有名な元ネタのオマージュである。
例えばウミベミンク父娘のプレゼント選び。
おそらくこれは、新約聖書の東方の聖者がキリストの誕生を贈り物を持って祝いに来たエピソードを下敷きに、贈り物をめぐる行き違いを描いた「賢者の贈り物」という話のオマージュであろう。
「賢者の贈り物」
懐中時計に付けるプラチナの鎖を夫へのプレゼントとして買うために、美しい髪の毛を切って売ってしまった妻。
美しい髪の妻が欲しがっていた鼈甲の櫛をプレゼントとして買うために、宝物の懐中時計を質に入れてしまった夫。
結果としてプラチナの鎖が付くはずだった懐中時計は夫の手元にはすでに無く、夫が買った鼈甲の櫛が留めるはずだった妻の髪もすでに無く、結局お互いのプレゼントは無駄になってしまったが、お互いの思いやりをプレゼントとして受け取ることになった。
他にも、ニホンオオカミカップルのフィンガーボウルのエピソードの元ネタも有名な話。
フィンガーボウル
あるときイギリスのヴィクトリア女王が、外国からたくさんのお客様を招き晩餐会を開いた。
その中に南アフリカの大統領がいた。
大統領はフィンガーボウルの使い方を知らず、ボウルに入った水を飲み水だと思って飲み干してしまった。
それを見たヴィクトリア女王は、自分もフィンガーボウルの水を飲んでみせた。
(このエピソードも、一般的にはお客様に恥をかかせまいとする、女王の思いやりによる気高い振る舞いとして認知されている。
ただしこのエピソードについては、政治的な駆け引きに利用するために創作された疑いがある。
一方を西洋の食事マナーも知らない田舎者として描き馬鹿にすることで、田舎者に恥をかかせないとするヴィクトリア女王の高貴な心遣いが、より映えるように印象操作されている可能性が大きい。)
「賢者の贈り物」のエピソードもフィンガーボウルのエピソードも、極論をいってしまえばどちらも創作なのだろう。
だがどちらにも共通していえることは、一貫して相手を思いやる気持ちが描かれているという点にある。
たとえそれが創作であろうとも、互いを思いやる気持ちに嘘偽りはない。
この辺りに、制作側の物語の細部にまで徹底されたこだわりが強く感じられる。
そして、このような思いやりの心を持った人間こそが「北極百貨店」のコンシェルジュとなり得るのである。
もちろん、本作のそれは純粋に相手を思いやった結果おこした行動であることは言うまでもない。
わずか70分で描かれる感動の名作
本作の上映時間はおよそ70分。
アニメーション映画としてはかなり短い部類に入る。
例えばアニメシリーズだとおよそ3話分。
最近の連続ドラマなら、初回スペシャル1話分でしかない。
そんなわずか70分でいったいどれほどのことが表現できるのか?
そう懐疑的になってしまう気持ちも少なからずあるだろう。
だが、本作の70分は驚くほど見応えある密度な時間だった。
チュートリアル的な諸設定の説明には最低限の言葉しか遣われておらず、一切の無駄がない。
かといってわかりづらいわけでもなく、状況がすんなり頭に入ってくる。
また、物語に散りばめられた各エピソードはそれぞれが独立しているようにみえて、実はさりげなくそれぞれが絶妙に重なり合っていて、シームレスに繋がっている。
おかげで実にテンポが良い。
柔らかい色使いの作画からはほっこりのほほん系の作風にみえるが、どうしてどうして侮りがたい感動作品。
終盤になると思わず涙してしまうシーンも…。
それもいやらしく涙を誘うでもなく、しっとり泣ける。
予備知識ゼロから始まり、わずか70分で自然と涙が零れ落ちるまで作品にのめり込めたのは、構成の素晴らしさによるものだろう。
思いやりの心が失われつつある現在。
世の中は殺伐とするばかりである。
そんな世界で他者に思いやりをもって接することは、もしかしたら損な生き方なのかもしれない。
だがそれでも、人のため、誰かのために一生懸命なれる人でありたい。
そう在る人を美しいと思える心でありたいと強く願う。
改めてそう思わせてくれた『北極百貨店のコンシェルジュさん』。
本当に本当に、ぜひ家族揃ってご覧になっていただきたい感動の名作である。
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