「日本の代表的なアニメといえば?」
こう聞かれたなら、あなたならどう答えるだろう。
やはり宮崎駿監督のジブリ作品だろうか?
全世界にコアなファンを抱える庵野秀明監督の『エヴァンゲリオン』?
富野由悠季監督の『ガンダム』も、未だ根強い人気を誇っている。
『サマーウォーズ』に代表される細田守監督作品だって人気がある。
『君の名は。』で一躍名を馳せた新海誠監督作品は?
世界的大ヒット映画『マトリックス』に影響を与えた押井守監督の『攻殻機動隊』…は、少しマニアックか。
大人向けアニメの先駆者とも呼べる、大友克洋監督の『アキラ』はその昔ハリウッドでも人気を博した。
興行収入だけでいえば『鬼滅の刃無限列車編』は、日本のみならず世界でも大ヒットしている。
原作の人気でいうなら、鳥山明先生の『ドラゴンボール』だって、井上雄彦先生の『スラムダンク』だって、尾田栄一郎先生の『ワンピース』だって、世界中で爆発的な人気だ。
これらの作品は、どれも日本を代表するアニメといっていいだろう。
しかし、日本のアニメの実力はまだまだこんなもんじゃない。
たとえ有名でなくたって名作は存在する。
あまり周知されていない作品の中にだって、名作は存在する。
そこで、知名度や興行収入はイマイチでも、絶対にハマるアニメをご紹介したいと思う。
アニメ
茄子 アンダルシアの夏 Blu-ray
『茄子 アンダルシアの夏』はマッドハウス制作のアニメーション映画だ。
黒田硫黄氏の短編漫画集『茄子』に収録された『アンダルシアの夏』を原作とする、自転車のロードレースを題材にした作品である。
2003年7月26日に全国の松竹と東急系列の映画館で公開された。
上映時間47分と一般的な映画の半分程度であることから、劇場公開当時チケットも通常の半額ということで話題になった。
本作品は日本アニメ界有数のサイクリストとして知られる高坂希太郎氏が監督・脚本・キャラクターデザイン・作画監督を務め、第56回カンヌ国際映画祭の監督週間に日本アニメとして初めて出品された作品である。
高坂氏は『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』といったスタジオジブリ作品で作画監督を務めており、宮崎駿の右腕とも呼ばれていた。
製作委員会にはジブリ作品に多く関与する企業が多数加わっている。
キャラクターデザインや作画のタッチもジブリ調で、レンタルビデオ店ではジブリアニメコーナーに置かれていることもあるようだが、本作の制作会社はマッドハウスであり、スタジオジブリは制作に一切関与していない。
ただし、原作の漫画『茄子』はスタジオジブリの宮崎駿監督が大ファンと公言している。
『茄子』の単行本の帯に推薦文を書いたり、ジブリのスタッフが黒田硫黄氏にファンレターを送ったり黒田氏をジブリに招待していた由縁があった。
『茄子』を高坂氏に読むように勧めたのも宮崎氏であったという。
声優を選出するにあたって、ジブリスタジオのスタッフに人気のあるテレビ番組『水曜どうでしょう』の出演者である大泉洋氏を主人公・ペペに起用した(以前にもジブリ作品でも声優を務めた経験がある)。
同番組のディレクターであるヒゲとウレシー…もとい、藤村忠寿氏と嬉野雅道氏の二人の出演も高坂氏は望んでいたが、日本テレビが製作委員会に名を連ねている関係で、ライバル局であるテレビ朝日系列に属する北海道テレビに籍を置く二人の出演は叶わなかった。
続編OVAでは日テレが協賛から外れたため、3人揃っての出演が実現している。
また、劇中のテレビ実況・解説者として、日本テレビアナウンサーの羽鳥慎一、元自転車ロードレース選手の市川雅敏も参加している。
興行成績は好調とは言えない数字であり、監督の高坂氏は続編が作れることは思わなかったという。
ストーリー
スペインの自転車ロードレース、ブエルタ・ア・エスパーニャを舞台に主人公が解雇の危機や、かつての恋人と兄の結婚という複雑な思いを抱きながらも、プロロードレーサーとして「仕事」に取り組むさまを描く。
主人公のペペ・ベネンヘリは、ベルギーのビール会社「パオパオ・ビール」がスポンサーとなっているロードレースチームに所属するアシスト選手だ。
アンダルシアの故郷近くを走るステージ当日、折しもぺぺの兄・アンヘルとかつてのぺぺの恋人・カルメンの結婚式が行われていた。
大集団でのスロー走行が続く中、ペペは監督の指令でレース中盤にアタックを仕掛ける。
これは、チームのエースであるギルモアをこのステージで勝たせるために、集団からギルモアを含む何人かの選手を引き連れて逃げ集団を形成し、最終的にギルモアを勝利させるため、逃げ集団のペースをさらに上げて集団内のライバルをふるい落とすことが目的であった。このアタックによって11人の先頭集団が形成されるのだが…
声優でも魅力的な大泉洋
隠れた名作にしておくのはもったいない
今や俳優として売れっ子の大泉洋氏だが、『茄子 アンダルシアの夏』が公開された2003年当時はようやく全国にその名が知られるようになった頃だ。
そんな洋ちゃんの声優としての魅力が溢れているのが本作品だ。
洋ちゃんの声優ぶりは、なかなかたいしたものなのだが、興行成績は伴わなかった。
その理由として、取り上げた自転車のロードレースというのが、2003年当時としてはマニアックな題材だったのかもしれない。
『弱虫ペダル』が人気になって自転車のロードレースに注目が集まるのは、もう少し後のことになる。
直接興行成績に関係があったのかは不明だが、物語自体に派手な盛り上がりも、劇的な展開も特にない。
特別感動的なシーンもないし、最終的には主人公のクビが繋がっただけで物語は終わる。
そういうものを求める人には、つまらない作品なのかもしれない。
だが、なんとも言えない魅力がある作品だ。
何より、気負って観なくていい。
気軽に、気楽に、のんびり眺めていられる。
それはもちろんシナリオのせいもあるのだろうが、洋ちゃんの声にもおおいに起因していると強く感じる。
洋ちゃんの声は、たとえ主人公が精一杯頑張っているシーンであろうとも、なんだか気楽に聴こえてくるから不思議だ。
洋ちゃん演じる主人公のペペ・ベネンヘリが、やる時はやる男ながらも三枚目に見えるのは洋ちゃんのキャラそのものだからかもしれない。
派手な盛り上がりはない。
劇的な展開もない。
感動的なシーンもない。
でも、なんだか心に残ってしまう不思議な作品。
機会があれば是非一度観てもらいたい名作アニメである。
秀逸のエンディングテーマ曲
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エンディングテーマ「自転車ショー歌」は小林旭氏の「自動車ショー歌」の替え歌であり、自転車愛好家として知られる忌野清志郎氏が歌と編曲を担当した。
作詞は原曲と同様に星野哲郎氏による新規書き下ろしである。
これはペペ役の大泉氏が出演する『水曜どうでしょう』の企画「対決列島」の中で『自動車ショー歌』が使用され、それを監督が気に入ったことに由来するらしい。
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続編『茄子 スーツケースの渡り鳥』でもエンディングテーマ曲に採用されている。
歌詞には原曲に倣い、自転車関連のメーカーやブランド名が駄洒落的にちりばめられているから面白い。
1番 ミヤタ → コルナゴ → ビアンキ → プジョー → コメンサル → ルック → クライン → トマジーニ (Tommasini) → モールトン → バッタリン
2番 オルモ → スカピン (Scapin) → カンパ → キャノンデール → カッレラ (Carrera) → カザーティ (Casati) → アラン (ALAN) → マヴィック → ジャイアント
3番 マルイシ → マージ (Masi) → バッソ (Basso) → スピナジー (SPINERGY) → アマンダ (Amanda) → コロンバス → ムラーカ (MURACA)
4番 スペシャライズド → トレック → アンカー → デローザ → ジタン (Gitane) → ピナレロ→[※]→チネリ → コッピ → ボッテキア (Bottecchia) → オルベア
※ここには「ソニック」という言葉が入るが、これがパナソニック(とりわけパナソニック サイクルテック)を指すかどうかは不明。
最高のセンスじゃないか?
こういう粋な遊び心が、今の日本には圧倒的に足りていない。
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