ラジオのパーソナリティになりたかった。
素敵な音楽を流してみんなに勇気を与えたり、思いつく限りの言葉で傍らに寄り添ってくれるラジオ・パーソナリティのように、皆さんの別れを素敵なものに変えられたら嬉しい。
◆じゃあね
春はお別れの 季節です
みんな旅立ってゆくんです
淡いピンクの桜
花びらもお祝いしてくれます
別れがあれば出会いもある。
4月になれば 悲しみは
キラキラした思い出
皆さんにも素敵な出会いが訪れますように。
森山直太朗『さくら』
『さくら』は森山直太朗氏の2枚目のシングル。
2003年3月5日発売。
森山氏は本楽曲でブレイク、現在では卒業式や予餞会・桜ソングの定番となっている。
元々は森山氏の友人の結婚をきっかけとして作られたもので、コア・アルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』バンドアレンジ収録曲をピアノ独唱ヴァージョンとして、シングルカットした。
同じくシングルカット曲の『世界に一つだけの花』と同日の2003年3月発売。
初回プレスが約1200枚・オリコンチャート発売初週段階では80位(売上1786枚)に対し2006年現在、約120万枚(売上予想1000倍)を出荷。
森山氏の大ヒットシングルである。
オリコンチャートでも徐々に順位を上げ、登場5週目でTOP10に入る。
登場9週目で、1位を獲得。
同チャートで発売から9週以上経過後に1位を獲得した男性ソロアーティストはKANの『愛は勝つ』(16週目)以来13年振り。
デビュー直後、プロモーションにお金がかけられなかったことから、1曲目収録『さくら(独唱)』ミュージック・ビデオは倉田信雄氏のピアノ演奏の横で森山氏が熱唱する一発撮り。
ボーカルやテンポ・アレンジ等はCDヴァージョンと異なる(CDヴァージョンのピアノ演奏は斎藤有太氏)。
音楽番組やライブで演奏される際、終盤部分はこのミュージック・ビデオに近い形で披露されることが多い。
本作発売当時、事務所未所属の森山氏は宣伝費を極力抑えプロモーション活動を行なった(発売月の2003年3月の宣伝費は数百万円規模)。
CD発売直後から「桜前線北上ツアー」と称し九州から北海道まで30都道府県を訪ね各地のレコード店へ巡回・地元FMラジオ局へ出演した。
全国ネットのテレビ番組での歌唱は4月以降で、テレビCMも東北地方等で限定的に流すに留めた。
スタッフは楽曲性質上、15秒CMだけで楽曲の支持が広まるか不安だったという。
シングルに先だってリリースされたコア・アルバムには、バンド・ヴァージョンが『さくら』として収録され、シングルのカップリングにはヴァージョン違いの『さくら(合唱)』が収録。
シングル1曲目のタイトルに『さくら(独唱)』とあるのは、そのためである。
オリコンやCOUNT DOWN TV等では『さくら(独唱)』の名称でチャートイン。
学校の卒業式等、合唱で用いられているのも殆んど『さくら(独唱)』ヴァージョンである。
2019年10月、高畑充希ちゃん主演の日本テレビ系水曜ドラマ「同期のサクラ」主題歌に、世武裕子さんによるアレンジで『さくら(二〇一九)』(読みは『さくら にせんじゅうく』)と称したヴァージョンを提供した。
この『さくら(二〇一九)』のミュージック・ビデオは、森山氏の発案により『さくら(独唱)』のMVと同じく一発撮り。
森山氏の生歌唱、世武さんのピアノ生演奏という手法で撮影されている。
さくら(二〇二〇合唱)/ 最悪な春 (初回限定盤)(DVD付)
シンプル・イズ・ベスト
この曲が卒業ソングとして歌われていた頃には、すでに学校というものからはとっくに卒業してしまっていたのだが…
そんなことがどうでも良くなるほど、とても素晴らしい曲だ。
とにかくシンプル。
だがシンプルだからこそ、シンガーの力量が試される非常に難しい曲だ。
だからこそ、巧く歌えれば強く心に響く。
だが歌唱力だけでは、聴く人間の魂は震えない。
歌う側も魂を込めなければ、想いは伝わらない。
想いを言葉で伝えるのが歌詞である。
その点『さくら』の歌詞は、卒業のみならず、あらゆる別れの場面に対応しているところが実に素晴らしく思う。
唯一、場面が春に限定されてしまうこと以外は…
さくら さくら ただ舞い落ちる
いつか生まれ変わる瞬間を信じ
泣くな友よ 今惜別の時 飾らないあの笑顔で さあ
さくら さくら いざ舞い上がれ
永遠にさんざめく光を浴びて
さらば友よ またこの場所で会おう
さくら舞い散る道の上で
卒業という小さな出来事ではなく、もっと大きな、まるで今生の別れかのような、壮大な別れのようにも受け取れる歌詞からは、未来へと歩き出す強い意志を感じることができる。
また森山直太朗氏の歌も素晴らしい。
お母様譲りの素晴らしい歌唱力からは、強いメッセージが感じられる。
森山直太朗氏のお母様といえば、言わずと知れたミュージシャンの森山良子さん。
「ざわわ♪ざわわ♪」でお馴染みの『さとうきび畑』を歌った名シンガーであり、卓越した歌唱力をお持ちのアーティストだ。
森山直太朗氏も、少なからずそんなお母様の影響を受けたのだろう。
似ているといえば、もはや歌唱力のみならず、纏う雰囲気までお母様に似てきている。
こういうのを父子鷹ならぬ、母子鷹とでもいうのだろうか。
森山直太朗氏のような卓越した歌唱力が最大限に活かされるのは、歌だけで聴かせるシンプルな曲を歌唱する時である。
『さくら(独唱)』のような曲では特に歌唱力が必要になる。
シンプルなピアノの伴奏だけで、たったひとりで歌い切るからだ。
歌唱力で聴く人を惹きつけ、さくらが持つ世界観で心をつかみ、別れゆく決意で魂を揺さぶる。
森山直太朗氏の『さくら(独唱)』には、そのすべてが込められている。
だからこそ、世代をこえて多くの人の心に響いているのだろう。
『さくら』これから何十年と歌い継がれていく名曲なのだろう。
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