ジョジョの奇妙な冒険 Part.3
スターダストクルセイダース
「幽波紋(スタンド)」という概念が後世の作品に与えた多大な影響
『ジョジョの奇妙な冒険』とは
『ジョジョの奇妙な冒険』は荒木飛呂彦先生による漫画作品である。
略称は「ジョジョ」。
集英社の少年向け漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』に1986年から2004年まで、2005年からは集英社の青年向け漫画雑誌『ウルトラジャンプ』に長期にわたって連載されている。
シリーズの単行本は100巻を越え、2022年1月時点でシリーズ全世界累計発行部数は1億2000万部を突破している。
2006年の文化庁による文化庁メディア芸術祭10周年記念アンケート企画、「日本のメディア芸術100選」にてマンガ部門で2位に選ばれた。
作品全体のテーマは「人間讃歌」。
仲間たちとの絆・強敵との死闘など少年漫画の基本を押さえながらも、個性的な表現方法とホラーサスペンス的な不気味さで独自の世界観を築き上げており、その作風は「王道を行きながら実験的」と評されている。
少年誌にして「大人向け」といえる作風であり、荒木先生自身も「子ども向けに描いてはいない」と発言している。
メディア展開はおおむね各部ごとに行われており、アニメ化やゲーム化、小説化、映画化などが行われている。
外伝作品も複数発表されており、Part.4のサブキャラクターを主人公に据えた『デッドマンズQ』『岸辺露伴は動かない』の2本は短編集『死刑執行中脱獄進行中』に収録されている。
『露伴』はシリーズ化し、他紙に出張したり派生もしている。
他作者によるスピンオフ作品も複数ある。
そのほか、番外編『オインゴとボインゴ兄弟 大冒険』(文庫本・全1巻)もある。
これはPart.3の作中作であるボインゴの漫画自体を独立させ、岸辺露伴の解説をつけるなど実物の漫画作品としたものであり、Part.3の文庫に合わせて刊行されたが、その後は絶版になっている。
25巻(Part.3、ダービー弟戦)から、全ての漢字にルビが振られるようになった(正確には、漢数字を除く)。
作者の荒木先生は「当初から意識していたのは、これまで読んだことがない新しいストーリーを作ろうということ。
当時の『週刊少年ジャンプ』編集部の方針も何かそういう空気があって、「王道のスポーツ漫画なんか描いてきたらボツにするよ」というような(笑)」と語っている。
具体的には、
ストーリーとしては、『エデンの東』のような大河ドラマや、子供の時から好きで読んでいる『シャーロック・ホームズ』やホラー短編集を、自分なりにすごく分析して作りました。
ストーリーが綿密に組み立てられて、何らかの伏線があってオチに向かっていくというような。
『武装ポーカー』の時代から、ストーリーにこだわって、すごく冒険的に作ってきた感じはあります。
とのこと。
また荒木先生は本作の連載を開始する前にヨーロッパ旅行へ行っており、
実物には写真では伝わらないアイデアがいっぱい入っていたり、すごく感動したんですよね。
雑誌などの写真で見るのとは全く違うインプットがあった。
特にイタリアで見た宗教画やフレスコ画というのは、写真で見ると古典作品としか感じなかったけど、実際に見ると斬新だし、何かもう圧倒されてしまって。
この辺から学んでいけば、自分の絵の道が開けるのかなと思いました。
とも語っている。
なお、荒木先生曰く第1部の連載を開始した時点で心の中では第3部までの構想が出来上がっていたとのことで、『エデンの東』のように世代が変わっていく話を核に持ってこれたらいいと思っていたという。
ジョジョの奇妙な冒険 第1部 モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
物語の構成
本作は単独の人物を主人公としておらず、主人公が変わるごとに「第○部(○部分に数字)」と部数が進み、作品のサブタイトルも変わる形式を採用している。
また主人公が変わるだけでなく、作品の舞台やジャンルも各部ごとに変化しており、基本的には各部ごとに話が完結する仕組みとなっている。
しかしながら、世界観自体はPart.1から一貫しており、ジョースター一族とその奇妙な運命を描く大河群像劇となっている。
また、各部で登場した人物や道具が後の部で再登場したり影響を与えていることも多く、運命や因縁といったものに主眼が置かれている。
なお、本作には2つの独立した世界線が存在する。
『ジョジョの奇妙な冒険 Part.3「スターダストクルセイダース」』とは
『ジョジョの奇妙な冒険Part.3「スターダストクルセイダース」』は、荒木飛呂彦先生による漫画作品『ジョジョの奇妙な冒険』のPart.3(第3部)。
単行本12巻 - 28巻に収録されている。
今シリーズから「幽波紋(スタンド)」という設定が加えられ、以後、主な登場人物はスタンド使いとしてストーリーに関わってくるようになる。
「スターダストクルセイダース」は後年に付けられた副題で、『週刊少年ジャンプ』連載当時の副題は「第三部 空条承太郎 ―未来への遺産―」。
なお、画集『JOJO A-GO!GO!』にて発表された当初は「スターダスト・トラベラーズ」という副題であったが、廉価版発行の際に現在のものに訂正されている。
ジョジョの奇妙な冒険 第3部 モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
あらすじ
『Part.2「戦闘潮流」』から約50年後、1988年の日本から物語は始まる。
ある日突然「悪霊」にとりつかれたとして、周囲の安全のために留置場に自ら閉じこもった空条承太郎のもとに、祖父のジョセフ・ジョースターとその友人であるモハメド・アヴドゥルが訪れ、承太郎の「悪霊」の正体が精神エネルギーが具現化した「スタンド」というものだと説明する。
これより数年前のこと、かつてジョセフの祖父・ジョナサンと戦った吸血鬼・DIOの棺が海底から引き揚げられていた。
彼はジョナサンの首から下を乗っ取り、海底で100年もの間生き延びていたのである。
復活してスタンド能力を得たDIOは、スタンド使いの配下を増やして世界を支配するという野望を再び巡らせていた。
アヴドゥルはジョセフ自身や承太郎にスタンドが発現したのはDIOが原因だという推測を補足する形で、DIOが奪い取ったジョナサンの肉体から血縁者同士の影響を受けたのだと承太郎に告げる。
その数日後、早速承太郎はDIOに洗脳され転校という形で送り込まれたスタンド使いの刺客・花京院典明と保健室で戦闘になるが勝利し、洗脳支配から解放した。
それから間もなく承太郎の母親・空条ホリィにもスタンドが発現するが、闘争本能が弱いホリィはスタンドを制御できず、ただ肉体を蝕まれるのみであった。
ジョセフは承太郎に、彼女を救う方法は命が尽きるまでの推定50日以内にDIOを見つけ出して倒し、ジョナサンの肉体からの影響を断つことしかないと告げる。
ジョセフの念写能力と承太郎のスタンド能力を合わせた調査、それに加えて花京院の証言から、DIOがエジプトに潜んでいることを突き止めた承太郎たちはホリィの看病をスピードワゴン財団に任せ、道中で新たな仲間としてジャン=ピエール・ポルナレフを加えながら、DIOの潜伏するエジプトを目指して旅に出る。
一方でDIOはジョースター家との因縁に決着をつけるため、タロットカードの暗示を受けた刺客のスタンド使いたちを承太郎たちに差し向ける。
敵は旅客機を墜落させ、無関係の一般人を犠牲にすることも躊躇しないため、承太郎たちは少人数で海路・陸路を行くことを選択する。
香港島、インド、パキスタン、紅海を経由してエジプトに入った彼らは財団が連れてきたスタンド使いの犬・イギーを新たに仲間へ加えて戦力を増強するが、送り込まれる刺客もまたエジプト九栄神の名のカードを冠する強力なスタンド使いとなっていく。
それらを撃退しながらアスワン、ルクソール、ギザを経由して北上。
ホリィの容態が急変し、残り時間も少ない状況で、ついに一行はカイロにてDIOの潜伏する館を発見する。
アヴドゥルとイギーを喪いながらも一行はDIOのもとにたどり着くが、DIOの持つスタンド能力の前に一時退却を余儀なくされてしまう。
これを受け一行は挟み撃ちの形を取るため承太郎とポルナレフ、花京院とジョセフの二組に別れて行動し始める。
花京院の犠牲によってDIOのスタンド能力が「時を止める」能力であることを察知したジョセフは、遅れてやって来た承太郎にその事実を伝えた。
それにより闘いの中で「時を止める」能力を会得した承太郎は、残ったジョセフとポルナレフも倒れて一騎討ちの激闘に陥った末、ついにDIOを撃破してホリィの救出にも成功する。
ジョナサンの代から始まった、一族とDIOの100年にも渡る長き因縁に決着をつけたのだった。
「幽波紋(スタンド)」とは
スタンドは『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズに登場する架空の超能力である。
「スタンド」とは「パワーを持った像(ヴィジョン)」であり、持ち主の傍に出現してさまざまな超常的能力を発揮し、他人を攻撃したり持ち主を守ったりする守護霊のような存在である。
漢字では「幽波紋」と表記される。
『Part.3「スターダストクルセイダース」』で初登場し、以降のシリーズでも設定が引き継がれている。
作者の荒木飛呂彦先生によれば、スタンドとは超能力を目に見える形で表現したものである。
例えば、「曲がるスプーン」や「破壊される壁」などといった超能力の影響を受けた物体を描くのではなく、超能力そのものに姿を持たせて絵に描くことができるようにしたものが、スタンドである。
荒木先生はかつてインタビューで、
裏づけというか説得力というか、そういうものが欲しかったんです。
『ムッ』と念じるだけで物がバーンと割れるんじゃなくて、他人には見えないんだけど実際に何かが出てきて、そいつが物を割ってくれる、みたいな。
と述べている。
スタンドは固有の特殊能力を持つ
スタンドは本体の性格、願望、才能などが能力に昇華されたものである。
単純な攻撃用の能力だけでなく、念写や自然現象への干渉など、多岐に渡る。
完全に同じ能力のスタンドは、一部の例外を除き本編に登場しないが、ありえないと明言されているわけではない。
スタンド能力は遺伝したり、親族に影響を与えて連鎖的に発現させたりするが、スタンド自体は本人のものなので、血縁者同士のスタンドの特徴が似通っている場合(スタープラチナとストーン・フリーなど。またジョナサンの血と肉体を介したスタープラチナとザ・ワールドの類似も顕著な例。極端に似ている例として、ブンブーン一家のトゥーム・オブ・ザ・ブーム ワン/ツー/スリー)もあれば、そうでない場合(ハーミットパープルとスタープラチナ、バッド・カンパニーとザ・ハンドなど)もある。
スタンド使いがそれぞれ人間である場合には、スタンドを介してテレパシーのように会話できる。
「超能力そのものに姿を持たせる」というジョジョの大発明は『HUNTER×HUNTER』や『呪術廻戦』にも影響?
昔の漫画やアニメで主人公のパワーアップは一辺倒なものが非常に多かった。
『ドラゴンボール』の戦闘力の概念に代表されるように、主人公の強さは上がるしかなかった。
その結果もたらされたのが、強さのインフレである。
戦闘力という魅力的な響きに最初こそワクワクしたのだが、強敵が現れるにつれ次第に飽きが生じてきてしまう。
何故なら戦闘力の多寡での勝負では、主人公をただただ強くする以外の手段がなかったからだ。
目新しい手段など特にないし、何よりこれではキリがない。
『ドラゴンボール』では敵が壊せるものが最終的には宇宙規模になってしまった。
ただただ強くしていった結果がこれである。
『ドラゴンボール』に限っていえば、ギニュー特戦隊のグルドだけが唯一の例外でしかなかったのが残念だった。
そんな固定観念をぶち壊してくれたのが、『ジョジョの奇妙な冒険Part.3「スターダストクルセイダース」』での「幽波紋(スタンド)」という概念であった。
登場した当初こそ力の強さで比べられたスタンドも、物語が進むにつれて、スタンドは使い方次第で強くも弱くもなっていった。
力の優劣が強さの指針ではなくなったのだ。
力の優劣に拘らなくなった恩恵は大きかった。
キャラクターの個性による能力の変化という、バリエーションが生まれたのだ。
これはバトル漫画にとって革命と呼べるほどの変革だった。
その後はキャラクターの個性によって発現した特殊能力でバトルする漫画やアニメが数多く生まれる。
『HUNTER×HUNTER』の念能力や『呪術廻戦』の呪術といった、魅力的な特殊能力を有するキャラクターが大人気となる。
『ジョジョの奇妙な冒険Part.3「スターダストクルセイダース」』が生み出した「超能力そのものに姿を持たせる」という「幽波紋(スタンド)」の概念は、後の人気作品に多大な影響を及ぼしたのである。
稀代の敵役DIOのCVに子安武人氏
『ジョジョの奇妙な冒険』ではPart.1〜3まで、DIOという敵役が登場する。
なかなかぶっ飛んだキャラクターで、アニメ化する際に、いったい誰がCVを務めるのか注目を集めた。
ジョジョにはTVシリーズ化するもっと以前にOVA作品が存在するのだが、そのDIOは原作ファンを満足させるものではなかった。
だが、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険Part.3「スターダストクルセイダース」』でのDIO役はあの子安武人氏。
まさに適役。
満場一致、誰ひとりとして異議を唱えるものはいなかっただろう。
もしアニメ『ジョジョの奇妙な冒険Part.3「スターダストクルセイダース」』を観る機会があったら、DIO役の子安武人氏にも大注目だ。
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