Without You / Nilsson (1971年)
オリジナルがまさかロックバンドの曲だったなんて…
ロックバンドのバラードこそ最強
音楽のジャンルは年々多岐に渡り、あらゆるジャンルの垣根もなくなりつつある昨今。
そんな世でも、ひとつの確信だけは自分の中に根強く残っている。
それがロックバンドのバラードこそ最強説だ。
ただのロックバンドのバラード好きなだけのような気もするが、なるべく多くの人に共感してもらうべく、本稿ではロックバンドのバラードの名曲をご紹介していきたいと思う。
Nilsson『Without You』とは
『Without You』(ウィズアウト・ユー)は、イギリスのロックグループであるバッドフィンガーのピート・ハムとトム・エヴァンズが作詞作曲した楽曲である。
ASCAPによると180以上のアーティストに録音され、Billboard Hot 100には1位をはじめ何回も登場した曲である。
オリジナルはバッドフィンガーver.
最初に録音したのはロックグループのバッドフィンガーで、この曲はその2人のメンバーによって制作された。
ピート・ハムが当初書いた曲は『If It's Love』という題名で、コーラスが弱かった。
同じ時期にトム・エヴァンズが曲を書いていたが、こちらはヴァースが弱かった。
そのため、2人でそれぞれの曲のよい部分を融和させた。
そして、1970年にリリースされたアルバム『ノー・ダイス』に収録。
バッドフィンガーのバージョンはシングルとしてはリリースされなかったが、日本ではシングル『明日の風』のB面に収録、発売されている。
ニルソンver.の日本語表記が『ウィザウト・ユー』
バッドフィンガーの『ウィズアウト・ユー』を聴いたニルソンは当初、ビートルズの曲だと勘違いしたようだ。
勘違いに気付いた後、1971年に発表するアルバム『ニルソン・シュミルソン』へ収録するために、この曲をカバーした。
リカット・シングルは、イギリスでは全英シングルチャートで1位を記録し80万枚のヒット、全米シングルチャートに於いて4週連続1位となった。
後に、プロデューサーのリチャート・ペリーは「この曲は今までの曲とは全く違う、重いバックビートによるビッグ・バラードで、今までに多くのアーティストからリリースされたものとは違った」と語っている。
後にソロ・アーティストとして成功したゲイリー・ライト(イギリスのバンド、スプーキー・トゥースのメンバー)はピアノで録音に参加。
ニルソンは、コーラスの出来が少し平凡だと言っていたが、ニルソンの友人であるシンガー・ソング・ライターのジミー・ウェッブは「この曲こそ我々の世代の最高のボーカル・パフォーマンスだ」と評している。
ニルソンは滅多にこの曲をライヴ・パフォーマンスしなかったが、1992年にラスベガスでリンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンドと共演している。
なお、ニルソン・バージョンの日本語表記こそが『ウィザウト・ユー』である。
オリジナルがまさかロックバンドの曲だったなんて…
『Without You』といえばニルソンver.がオリジナルだとばかり思っていた。
ニルソンver.以外のすべての『Without You』が、カバーだと思っていた。
まさかニルソンver.すらカバーだったなんて…
しかしそれもそのはずで、ニルソンの透き通った歌声は『Without You』の美しいメロディラインと見事にマッチしていた。
味のあるバッドフィンガーver.
正直『Without You』といえばニルソンver.と、それをカバーした少しのアーティストしか思いつかない。
恥ずかしながら本稿を書くことで、オリジナルの『Without You』を初めて聴く機会を得た。
皆さんはバッドフィンガーver.を聴いたことがあるだろうか?
論より証拠で聴いてもらうのが一番だが、ニルソンver.ではまったく感じなかったロック魂がそこにはあった。
歌詞の切なさが一層引き立つバッドフィンガーver.を聴いて確信する。
ロックバンドのバラードが最強だ。
I can't live if living is without you
(君なしでは生きていけないんだ)
I can't live, I can't give anymore
(生きていけないんだ これ以上何も出来ない)
I can't live if living is without you
(君なしでは生きていけないんだ)
I can't give, I can't give anymore
(でもこれ以上何もしてあげられないんだよ)
名カバー
マライヤ・キャリーver.『Without You』
どのバージョンも素晴らしいのだが、特にマライヤ・キャリーver.は、本作をカバーした曲はの中でも最も有名なのではないだろうか。
改めてマライヤver.を聴いてしまうと、ロックバンド・バラード最強説も揺らいでしまうな。
しかしどう聴いても素敵だということは、取りも直さず『Without You』が、時代とジャンルを超えた名曲だということだろう。
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