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ioritorei’s blog

完全趣味の世界

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【細田守監督作品『竜とそばかすの姫』】現代版『美女と野獣』は歴代細田作品の集大成だった。

 

細田守監督作品

竜とそばかすの姫

 

 

『竜とそばかすの姫』とは

 

 

『竜とそばかすの姫』は、スタジオ地図制作によるアニメーション映画。

未来のミライに続く細田守監督による長編オリジナル作品第6作。

原作と脚本も細田監督が手掛けている。

2021年7月16日に東宝配給で公開された。

50億人以上が集うインターネット仮想世界〈U〉と出会った女子高生を主人公とした物語。

歌姫のベルというアバターで〈U〉に参加し、その歌声でたちまち世界に注目される存在になっていく一方で、忌み嫌われる竜の姿をした謎の存在と出会うさまが描かれる。

2022年1月、第45回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞。

3月、音楽スタッフの岩崎太整氏、Ludvig Forssell、坂東祐大氏が第45回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。

本作は、現代のインターネット社会を描きながらも美女と野獣をモチーフにしているところもあり、細田監督はもともとミュージカル映画をやりたかったとも語っている。

  • ネットで誰でも発信ができる時代の中での誹謗中傷の問題や匿名性の危うさ、その中でどうやって立ち向かうか。
  • 素顔を出すことの勇気、現実とバーチャルの人とのつながりの大切さ。

などが本作のテーマ。

映画の構想のきっかけは、細田監督が「生まれたときからインターネットのある世界で自分の娘がどう生きていくのか」と考えたこと。

本作について、細田監督は「『ずっと創りたいと思っていた映画』です」と明かし、「恋愛やアクション、サスペンスの要素もありつつ、一方で、生と死という本質的な大きなテーマもありエンタメ要素の高い映画になっていると思います」と語った。

また本作には、インターネット、女子高校生、家族など、これまでの細田作品のモチーフが数多く入っている。

声優については、すずとベルは同一人物が演じることが絶対条件だった。

細田監督は「演技もできて、歌が超絶上手い人を見つけるのは不可能、奇跡だ」と思っていたが、いざ中村佳穂さんにセリフを読んでもらうと、その表現力に圧倒されたという。

また竜役の佐藤健氏は細田監督からのオファーだった。

この映画について、米紙「ワシントン・タイムズ細田守監督のコメントを交え、

女性のエンパワーメントをテーマにしたこの作品は、少女や女性を弱く、空虚で、過度に性的な存在として描くことが多い日本の代表的なアニメ映画やグラフィック・ノベルのスタイルを覆すものとして注目されている。

と、報じている。

 

 

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竜とそばかすの姫

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あらすじ

 

 

高知県の田舎町に住んでいる、そばかすが目立つ地味な女子高生・すずは、幼い頃に母を事故で亡くして以来、大好きだった歌を歌えなくなり、父との関係にも溝が生まれていた。

そんな中、作曲だけがすずの生き甲斐となっていた。

ある日、すずはネットに詳しい親友のヒロちゃんの手引きの下、全世界で50億人以上が集う超巨大インターネット空間の仮想世界〈U〉に参加する。

そこで、ベルという〈As〉(アバター)の姿となったすずは、自然と歌うことができ、自作の曲を歌って多くのユーザーたちに披露する。

当初こそアンチによって批判されていたものの、次第に歌姫として世界中から注目を集めるようになる。

遂にはコンサートが開かれるが、当日、突然謎の竜が現れて〈U〉の自警団を相手に大暴れし、台無しになってしまう。

コンサート中止に怒る人々によって「竜の正体探し」が動き出し、疑われた人々がプライバシーを暴かれる一方で、子供たちの一部は竜をヒーロー視する。

また自警団リーダーのジャスティンは、竜の現実世界での姿(オリジン)を強制的に暴く「アンベイル」を実行しようと情報を求める。

だが、ベルは竜のことが気になり、〈U〉のはずれにある「竜の城」を探し出す。

竜はベルを追い出そうとするが、ベルは彼が小さな天使の〈As〉を慈しむ姿を垣間見て、その本当の姿に気づく。

ベルはジャスティンに竜の居場所を尋問され、彼が正義ではなく支配欲で動いていると指摘しアンベイルを盾に脅されるが、竜に救われる。

ベルは竜のためだけに作った歌を捧げ、竜もまたベルに少しずつ心を開いていく。

一方で現実世界のすずは、幼馴染で学校の人気者のしのぶくんとの関係を同級生たちに誤解され炎上してしまう。

ヒロちゃんの尽力で攻撃は収まったものの、しのぶくんと人気の女子ルカちゃんが両思いであると思い落ち込む。

ところがルカちゃんの本当の思い人は別におり、彼女らの仲を取り持とうとしているとき、すずはしのぶくんから、自分がベルの正体であることを指摘される。

その場から逃げ出したすずは、「竜の城」が暴かれて火を放たれたと知り、ヒロちゃんが〈U〉での活動に使う教室に駆け込む。

すずはヒロちゃんとともに無数の〈As〉から竜を探すうち、竜を慕う男の子・知が、ベルが竜のために作った歌を歌う動画配信にたどり着く。

だが、すずと彼女を追って教室に来た友人たちや合唱隊の人々は、配信の中で父親に怒鳴られる知と、彼をかばって激しく罵られるその兄・恵の一部始終を見てしまう。

恵こそが竜の正体であり、兄弟が虐待されていると知ったすずは恵に語り掛けるが、それまでに虐待を訴えても助けてもらえなかった恵は拒絶し、配信も途切れる。

しのぶくんに、恵の信頼を得るためには自分の正体を〈U〉で明かすしかないと指摘されたすずは、自らアンベイルされ、途中泣き崩れながらも生身の姿で歌い、全世界からの喝采を浴びる。

そして、皆の協力で映像から兄弟のいる街を割り出し児童相談所に通告するが、対応が間に合わないことを恐れたすずは、単身でその街へと向かう。

すずは兄弟を見つけ、追ってきた彼らの父親に暴力を受けるが臆さず、圧倒された父親は怖気づいて逃げ出す。

すずに助けられ心を開いた恵は、父親と戦う決意を語る。

帰宅したすずは、彼女を信頼して送り出してくれた父に迎えられ、親子の関係は改善する。

 

 


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登場人物

 

 

〈U〉(ユー)の世界でのアバターは〈As〉(アズ)、〈U〉を利用している〈As〉の所有者は「オリジン」と呼ばれる。 

以下、人物名は愛称 / 氏名/ 〈U〉参加者で〈As〉の名が判明している者の順に表記する。

 

 

主要人物

 

 

すず / 内藤鈴(ないとう すず) / ベル (Belle)

声 - 中村佳穂

 

本作の主人公。

顔のそばかすが特徴。

母親を亡くしてから現実世界に心を閉ざし、大好きだった歌が歌えなくなる。

ヒロちゃんには作中で「月の裏側」「地味」「ぱっとしない」「陰キャ」などと評される。幼いころからスマートフォンアプリやキーボードなどで曲作りを続けている。

〈U〉の世界では、ベルとして、並外れた歌声と華やかな美貌で絶大な人気を誇る。

 

 

しのぶくん / 久武忍(ひさたけ しのぶ)

声 - 成田凌

 

すずの幼馴染み。

バスケ部所属で女子から絶大な人気がある。高校生になった今でもすずのことをなにかと気にかけている。

 

 

カミシン / 千頭慎次郎(ちかみ しんじろう)

声 - 染谷将太

 

すずの同級生。

カヌー部所属。

明るい性格だが暑苦しく、少し空気が読めない。

 

 

ルカちゃん / 渡辺瑠果(わたなべ るか)

声 - 玉城ティナ


すずの同級生。

吹奏楽部所属でアルトサックス担当。

美人で太陽のように明るい学校中の人気者。

しかし思いを寄せる相手に対しては挙動不審になる。

 

 

ヒロちゃん / 別役弘香(べつやく ひろか)

声 - 幾田りら

 

すずの親友で彼女を〈U〉の世界に誘い、「ベル」としてプロデュースするキーパーソン。

すずがベルであることを唯一知っている人物。

毒舌。

 

 

すずの父

声 - 役所広司

 

すずの父親。

妻を亡くし、いつもすずを気にかけているが距離が掴めずにいる。

 

 

恵(けい) / 竜(りゅう)

声 - 佐藤健

 

東京で父と弟・知と暮らす男の子。

〈U〉の世界では「竜」と呼ばれ、忌み嫌われている謎の存在。

黒い竜のような獣の姿をしている。

背中に複数の痣があり、〈U〉の世界に存在する武道場に乱入しては「道場破り」を繰り返している。

初めはベルに対しても強い拒絶反応を示していたが、次第に心を開いていく。

 

 

合唱隊

 

 

吉谷(よしたに)さん

声 - 森山良子

 

漁師。

廃校になった小学校の施設を拠点に活動する合唱隊のリーダー。

合唱隊一同はすずのことを気にかけている。

 

 

喜多(きた)さん

声 - 清水ミチコ

 

酒屋を営む合唱隊のメンバー。

 

 

奥本(おくもと)さん

声 - 坂本冬美

 

自作農家をしている合唱隊のメンバー。

 

 

中井(なかい)さん

声 - 岩崎良美

 

医師。

合唱隊のメンバー。

 

 

畑中(はたなか)さん

声 - 中尾幸世

 

大学講師。

合唱隊のメンバー。

学生時代のオハイオ州留学時、現地で知り合った中学2年生の孤独な少年に、自作の歌を贈って喜ばれた経験を語る。

 

 

〈U〉の世界

 

 

ジャスティ

声 - 森川智之

 

自警集団「ジャスティス」のリーダー。

〈U〉の世界を脅かす竜を追っている。

多数の企業とスポンサー契約しており、〈As〉を強制的にアンベイルする効果がある緑色の石を持っている。

 

 

ペギースー

声 - ermhoi

 

〈U〉の世界にてカリスマ的な人気を持つ歌姫。

自信家で気性が激しく、突如現れたベルに人気を奪われて嫉妬する。

 

 

アナウンサー(冒頭)

声 - 水卜麻美

 

〈U〉の世界を案内するアナウンサー。

 

 

アナウンサー(コンサート)

声 - 桝太一

 

ベルのコンサートシーンでのアナウンサー。

 

 

 

その他の人物

 

 

ひとかわむい太郎 & ぐっとこらえ丸

声 - 宮野真守

 

「竜の正体探し」を盛り上げるYouTuberコンビ。Tシャツを着た犬と、ひびの入った卵の姿をしたキャラクターで活動している。

 

 

すずの母

声 - 島本須美

 

すずに歌う楽しさを教えてくれる。

合唱隊に所属していた。
すずが幼い頃、氾濫した川の中洲に取り残された子供を助けて、帰らぬ人となる。

 

 

恵・知の父

声 - 石黒賢

 

シングルファーザーであり、マスコミの取材に理想的な仲良し家族をアピールしている。

その裏では自分の教育方針を子に押しつけ、モラハラパワハラ、DVを行っている。

 

 

知(とも) / 天使(てんし)

声 - HANA

 

恵の弟。

竜をヒーロー視する子供たちのひとり。

〈As〉は手のひらサイズのクリオネのような姿の天使で、ベルのことをほめてくれる。

〈U〉の城で色とりどりのバラを育てている。

 

 

イェリネク

声 - 津田健次郎

 

「竜の正体探し」で候補に挙がる現代美術アーティスト。

体に竜の痣に似たタトゥーがある。

 

 

スワン

声 - 小山茉美

 

「竜の正体探し」で疑惑の人として挙がる貴婦人。

被害者意識が強くネットの中では攻撃的。

〈As〉は赤ん坊のような姿。

 

 

 

舞台となった場所

 


作品の主な舞台となったのは高知県で、作中には県内に実在する場所、あるいはそれをモデルとしたものが登場している。

すずが通学時に渡る沈下橋のモデルは仁淀川にかかる浅尾沈下橋、普段利用しているバス停は県交北部交通の西の谷第二バス停、鉄道駅はJR伊野駅である。

 

 

 

音楽

 


音楽監督モテキなどで知られる岩崎太整氏。

またルドヴィク・フォシェルが岩崎氏の「今回の映画の内容的にルドさんの世界観と合うだろう」という勧めで参加している。

もともとKONAMIゲームクリエーター小島秀夫氏の会社に所属していたが、ちょうど独立した時期で上手い具合にタイミングも合った。

歌手を主人公とする本作品では、重要なシーンで流れるベルの歌声に重なるコーラスに、Twitterにて所定の応募方法でアップロードされた一般の人々の歌声を使用する「エキストラシンガープロジェクト」が行われた。

ミュージシャンの中村佳穂さんがすずとベルの声とともに、劇中歌の歌唱を担当した。

 

 

テーマ曲

 

  • 「U」

アーティスト:millennium parade & Belle

Music & Lyrics:常田大希

Vocal:Belle(中村佳穂)

 

 

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モチーフは『美女と野獣

 

 

細田監督ご自身が明言している通り、本作を制作する上で最初に発想したのは「インターネットの世界で美女と野獣をやったらどういうことになるだろうか」というものだったようだ。

インターネットというものは現実と虚構の部分を併せ持つ二重性があり、美女と野獣もまた二重性を持った作品である。

原作ができた18世紀のフランスの状況とも、ディズニーが映画を作った1991年のアメリカの状況とも違う現在の日本で、もし美女と野獣を作るんだったらどういう風になるのか?

18世紀に書かれた物語を現代の日本でインターネットを介して表現できたら、どんな恋物語になるのか、どんなロマンスがそこにあるのか?

そんな想いが込められた作品となっている。

 

 

美女と野獣 (吹替版)

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最新テクノロジー×日本の原風景

サマーウォーズ』から踏襲された温故知新的ハイブリッド

 

 

 

本作は細田守監督の代表作サマーウォーズから踏襲された、温故知新的ハイブリッドも特徴のひとつだ。

最新のテクノロジーをテーマとして扱いながらも、それを扱うのはごく普通の人たちであって、舞台も極端に日本の原風景に近い場所となっている。

これは、もはや監督の代名詞のような表現法といえる。

古きをたずねて新しきを知る「温故知新」と、新旧をハイブリッドさせる監督独特の表現法を、著者は【温故知新的ハイブリッド】と呼んでいる。

 

 

 

驚くほど豪華で優秀な声優陣

 

 

圧巻の主人公

 

主人公の声優を務めた中村佳穂さんは圧巻のひと言。

中村佳穂さんは元々女性シンガーソングライターであり、ミュージシャンである。

声優としてのキャリアは無く、本作が初挑戦だった。

しかしそんなことはまったく気にもならない。

歴代細田監督作品の主人公のイメージを踏襲しながらも、その素晴らしい歌声で、新しい主人公像を築き上げている。

 

 

本業ではない声優陣の名演

 

本作の声優陣は非常に豪華だが、それは声優が本業ではない有名人が多数出演しているからである。

成田凌氏・幾田りらさん・染谷将太氏・玉城ティナさん・石黒賢氏・役所広司氏・佐藤健などなど、その面子はあまりに豪華。

おまけにお笑い芸人の鬼越トマホークのお二人や、なすなかにしのお二人なんかも起用されている。

注目作品にゲスト声優を招くのはよくあることで、特筆すべき点ではない。

特筆すべきはこのゲスト声優と思われる豪華なメンバーが、想像を数倍も上回る見事な働きをみせる点である。

そもそもゲスト声優は、その時旬の有名俳優から選ばれることが多い。

ゲストは声優が本業ではないから、少し浮く存在となってしまうことがしばしばある。

しかし本作はその例外であると断言できる。

むしろゲスト声優の活躍にこそ、本作の魅力が詰まっているとすら言えるだろう。

なかでもMVP(主観・主人公を除く)は幾田りらさん。

言わずと知れた、YOASOBIのヴォーカルである。

幾田りらさんも本作が声優初挑戦。

にもかかわらず、まったくそれを感じさせないばかりか、レジェンド声優かと思わせるほど自然な演技をみせてくれている。

YOASOBIファンは必見だ。

また成田凌氏と染谷将太氏の声優ぶりにも注目だ。

「こういう声優さんってホントにいるよね」みたいな感じで、知識がなければお二人とは気づかないかもしれない。

いや、染谷将太氏には気づくか…。

癖の強い演技で知られる役所広司氏の声優ぶりも素晴らしい。

それは皮肉にも、名優・役所広司氏の強い癖を消したことに起因している。

淡々とだが優しく語りかける役所広司氏の声。

もしかしたら俳優の時より好きかも。

 

 

もしかしたら一番豪華な合唱隊の声優陣

 

合唱隊とは呼んでいるものの、所詮は田舎のママさんコーラス隊。

メンバーもたった5人しかいない。

主人公を含めても6人。

劇中では、キーマンパーソンではあっても端役でしかない。

しかし驚くべきは、その端役の声優陣のあまりの豪華さだ。

そのメンバーが、森山良子さん・清水ミチコさん・坂本冬美さん・岩崎良美さん・中尾幸世さん

なんだ、この多種多様極まるもの凄い面子は…。

こちらのゲスト声優陣も、実に田舎のママさんコーラス隊らしい名演をみせてくれているから大注目だ。

 

 

 

細田守監督版『美女と野獣

 

 

歴代作品の集大成

 

本作には細田守監督の過去の作品を想起するような描写が散見できる。

本作の舞台となる巨大インターネット空間の仮想世界〈U〉は、サマーウォーズで描かれた〈OZ〉を進化させたものだ。

スマートフォンが普及しきって現実とインターネットの世界がより近くなった点で、扱う情報量もインターネットを介してできる事も格段に増えたため、〈U〉の世界は〈OZ〉よりももっと巨大な規模になったインターネット世界である。

技術の進歩は見られるものの、根本的に本作の舞台はサマーウォーズの〈OZ〉と同じなのである。

また仮想世界〈U〉の世界観は、時をかける少女の "時空の狭間" を想起させるデザインとなっている。

主人公の家庭環境はどことなくおおかみこどもの雨と雪を連想するし、主要登場人物・竜の姿は『バケモノの子』を連想することができる。

このように『竜とそばかすの姫』は、細田守監督作品の集大成とも言える作品なのである。

 

 

現代の『美女と野獣

 

前述した通り本作のモチーフは美女と野獣である。

ディズニー映画でもお馴染みの名作だ。

劇中ではディズニー映画さながらのダンスを踊るシーンもあるので、まさしく本作は現代版『美女と野獣だろう。

しかし本質はそこではない。

細田守監督版『美女と野獣の本質は、なんといってもその二重性に尽きるだろう。

"インターネットの現実と虚構の二重性" とひと言にいっても、実際には二重性どころの話ではない。

容姿の二重性。

性格の二重性。

生活環境の二重性。

立場や権力の二重性などなど…。

インターネットの二重性とは、掘り下げていくとさらにまた別の二重性を含んでいるものなのだ。

言うなれば本作で表現される二重性は、常にダブルミーニングと考えるべきだろう。

美女と野獣もまた、容姿の二重性を持った作品である。

だがオリジナルの美女と野獣には、インターネットの二重性は描かれていない。

そこがオリジナルとの決定的な差であり、本作の深いところである。

本作には容姿の二重性に加えて、性格(人間性)の二重性も含まれ、さらに生活環境の二重性まで含まれている。

しかし細田守監督の凄いところは、たしかに考えれば考えるほど本作は二重性の嵐ではあるが、仮にそこ(あらゆる二重性)を無視したとしても、物語としてしっかり成立しているということだ。

本来なら、メーンテーマとして "二重性" は無視できない要素のはずなのに、そこを完全に無視したとしても余裕で楽しめてしまうのだ。

だからオリジナルの美女と野獣と、単純に見比べてみるのも面白いかもしれない。

それが可能なのが細田守監督版『美女と野獣『竜とそばかすの姫』なのだから。

 

 

 

サマーウォーズ』の頃とは別の種類の涙

 

 

歌を聴いただけで涙が出たことはありますか?

 

あなたは歌を聴いただけで涙が出たことはありますか?

例えば大好きなアーティストの大好きな曲を、ただ聴いたというだけで涙が出てきた経験。

著者にはある。

ただ誤解してほしくないのは、常に涙が出るというわけではないこと。

涙もろいのは自覚していても、さすがに歌を聴いただけで泣くのは稀である。

しかし驚くべきことに、本作でそれが起きた。

しかも、何の思い出も思い入れもない歌を聴いて、だ。

これは主人公の声優を務めた中村佳穂さんの力量のせいに他ならない。

ただただ驚愕するしかなかった。

中村佳穂さんの歌声は、ただ上手いからというばかりではない不思議な魅力に包まれている。

なんて表現したら良いのか…。

これは直感的ではあるが、ヒーリングミュージックのような独特の世界観を持っているような気がする。

はじめて聴く時は、もしかしたらピンとこないかもしれない。

事実、著者もそうであった。

だが聴けば聴くほど中村佳穂さんの歌声が持つ、不思議な魅力にどんどん惹き込まれていく。

本作を視聴の際には、是非中村佳穂さんの歌声にも注目してほしい。

 

 


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サマーウォーズ』の頃より複雑な涙

 

名作『サマーウォーズも何回も泣かされた作品だが、本作もまた別の意味でおおいに泣かされた作品である。

ただ、その種類は決定的に違う。

サマーウォーズでは直接的に感情に訴える描写が多く、その涙はシンプルなものだった。

しかし本作で流した涙は、まったく別の意味を持っているように思う。

正体不明の魅力的な歌。

複雑な人間関係。

人間の温かさと、醜さ。

あらゆる意味でサマーウォーズより、ひとまわりもふたまわりも大人になったような涙であった。

面白いことに、このふたつの涙の意味の違いは、泣き方の違いにも表れる。

サマーウォーズではとにかく号泣で、涙がドバッと溢れ出る感覚だった。

しかし本作では、じんわりと涙が滲み出る感覚だった。

これが大人になったということか。

はたまたこの涙の出方の違いことが、細田守監督作品の変化なのかもしれない。

実はすでにそう確信しているのだが、はたして…。

 

 

 

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