COLORS / 宇多田ヒカル(2003年)
「もう自分には夢の無い絵しか描けないと言うなら…」
宇多田ヒカル
宇多田ヒカルさんは歌手、シンガーソングライター、ミュージシャン、音楽プロデューサー。
音楽プロデューサーの父・宇多田照實氏と歌手の母・藤圭子さんの下、アメリカ合衆国ニューヨークで生まれた。
所属芸能事務所はU3MUSIC。
所属レーベルはエピックレコードジャパン。
ロンドン在住。
1998年末に15歳でCDデビューし、デビューシングル『Automatic / time will tell』は、ダブルミリオンの大ヒットを記録。
1stアルバム『First Love』は累計売上枚数765万枚を超え(オリコン調べ)、日本国内の歴代アルバムセールス1位になっているほか、2ndアルバム『Distance』では初週売上枚数が歴代1位となる300万枚(オリコン調べ)を記録している。
2007年発表の『Flavor Of Life』は当時のデジタル・シングルのセールスにおいて世界1位を記録した。
また「日本ゴールドディスク大賞」のアーティスト・オブ・ザ・イヤーを、2000年と2003年に受賞している。
2010年に「人間活動」として翌年以降の音楽活動休止を発表。
結婚・出産を経て2016年に活動を再開し、復帰作『Fantome』はその年の「Billboard JAPAN年間総合アルバムチャート」で1位を獲得したほか、「第9回CDショップ大賞」で大賞を、「第58回日本レコード大賞」で最優秀アルバム賞を受賞した。
また、2018年に発売した7thアルバム『初恋』とその他の成果により、第69回芸術選奨で大衆芸能部門にて「新人賞」を受賞している。
2018年現在までに、『First Love』『Distance』『DEEP RIVER』『Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1』『Fantome』の5作品がオリコンまたはBillboard Japanの年間アルバムチャートで1位になっている。
『COLORS』とは
『COLORS』(カラーズ)は、2003年1月29日にリリースされた、宇多田ヒカルさんの12枚目のシングル。
表題曲はトヨタ・ウィッシュのCMで使用され、2003年3月12日にPVとメイキングを収録したDVDシングルを発売した。
このシングルを最後に宇多田さんは約1年間の充電期間に入ることになる。
このため、2003年唯一のシングルとなった。
PVはドナルド・キャメロン氏が監督したが、紀里谷和明氏以外が監督することになったのは『Can You Keep A Secret?』以来6作ぶりとなった。
テレビ番組で歌唱する際はほとんどの場合キーをひとつ下げている。
これに関して宇多田さん自身は、もともとこの曲はCDよりキーが一つ低いメロディだったが、周りの助言によりキーを上げて収録したと語っている。
また、ジャケットには宇多田さんのノートに書いてあったコードが写っているが、これもキーが下がった状態のものが写っており、それまで行われたライブ『ヒカルの5』『Utada United』『WILD LIFE』『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』でも全てキーの低いものが披露されている。
ちなみに、宇多田さん自身がこの曲において気に入っている箇所は、イントロ・間奏・アウトロの3つだという。
カップリング曲の『Simple And Clean』は「光」の英語バージョンで、ゲーム「キングダム ハーツFINAL MIX」のテーマソングとして起用。
サビの頭のメロディが「光」と異なっているが、このメロディがもともと「光」で使われるつもりのものだった。
しかし歌詞と合わずボツとなってしまったため、この曲で再び使用された。
ちなみに、このメロディは『DEEP RIVER』に収録されている『嘘みたいなI Love You』にも使用された。
このCDはCD-EXTRA仕様となっており、過去に公式サイトにて発表されたスクリーンセーバーと新作のスクリーンセーバーを収録している。
元夫の紀里谷和明氏との新婚旅行先のフランスで作った曲である。
TOYOTA「WiSH」のCMで使用された『COLORS』のオーケストラ・バージョン『COLORS -Orchestra Version-』はコンピレーション・アルバム『Beautiful Drivin' Classic Wish』(東芝EMI)に収録されている。
人生訓をあまり歌わない宇多田ヒカル楽曲
すべての楽曲をチェックしているわけではないので確証こそないが、宇多田ヒカルさんには人生訓をあまり歌わないイメージがある。
雰囲気重視のワードセンスで紡がれた詞からは、シチュエーションと情景が浮かんでくることがほとんどだ。
そんな宇多田ヒカルさんの楽曲の中で、恐らくは数少ない人生訓を歌っているのが本作だ。
とはいえ、宇多田ヒカルさん独自のワードセンスは健在で、AメロとBメロについては従来の世界観で描かれている。
だからこそ毛色の違ったサビのフレーズが際立ってみえる。
もう自分には夢の無い絵しか描けないと言うなら
塗り潰してよ
キャンバスを何度でも
白い旗はあきらめた時にだけかざすの
今の私はあなたの知らない色
本作は色をテーマにした楽曲だけあって、歌詞にはあらゆる色が登場する。
灰色・炎から連想する赤・青・白・闘牛士とルージュから連想する真っ赤・蛍光灯の発光色・黒・オレンジ…。
本作にとって色は気分を象徴すると共に、個性や果ては夢をも表現している。
そこへきて、大サビのフレーズのなんと心に響くことか…。
「もう自分には夢の無い絵しか描けないと言うなら 塗り潰してよ キャンバスを何度でも」
夢が描きにくい世の中だ。
夢を描くより前に、まず生きなければならない。
それでも何度でも塗り潰そうと歌う宇多田ヒカルさんの真意には、もしかしたらアクションの大切が込められているのかもしれない。
あらゆる色を駆使してまずは何でも描いてみろと、訴えかけているのかもしれない。
根拠は、何も描かれていない白い旗があきらめを象徴していることだ。
しかしもしこの仮説が事実だったとしても、何とも宇多田ヒカルさんらしいワードセンスに感心する。
何より、歌詞だけでなく大サビの盛り上げ方が最高だ。
本作は音楽史に残る宇多田ヒカルブームも落ち着いた2003年に発表されているから、セールス的にどこまで売れたからわからないが、個人的には大好きな楽曲。
願わくば、いくつになっても夢のある絵を描き続けたいものである。
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