日本映画
きさらぎ駅
『きさらぎ駅』とは
『きさらぎ駅』は、2022年6月3日に公開された日本映画。
監督は永江二朗氏、主演は映画初主演となる恒松祐里さん。
匿名掲示板「2ちゃんねる」への実際の投稿から始まった都市伝説「きさらぎ駅」に基づいたもので、大学生の女性がこの世に存在しない異世界駅の謎を追う姿が描かれる。
キャッチコピーは「そこは、たどり着いてはいけない異世界」。
都市伝説「きさらぎ駅」
「きさらぎ駅」の都市伝説がネット上で最初に語られたのは、2004年1月8日深夜のことである。
始まりはインターネット掲示板「2ちゃんねる」のオカルト超常現象板にあった実況形式スレッドに怪奇体験の相談を「はすみ(葉純)」と名乗る女性とみられる人物が投稿したことであった。
相談の内容は、
98:気のせいかも知れませんがよろしいですか?(2004/01/08 23:14:00)
101:先程から某私鉄に乗車しているのですが、様子がおかしいのです。(2004/01/08 23:18:00)
から始まるもので、新浜松駅から乗車した遠州鉄道の電車がいつもと違いなかなか停車する様子がなく、ようやく到着した駅が「きさらぎ駅」という名称の見知らぬ無人駅だったというものであった。
以後翌日未明にかけて、投稿者「はすみ」とスレッド参加者との応答がリアルタイムで進行した。
投稿された相談内容によると、周囲は人家などが何もない山間の草原で、直前には実在しない「伊佐貫」と言う名称のトンネルを通ったと語っている。
その後、不意に降り立った駅の周辺では奇妙な出来事が次々に起こり、携帯電話で助けを求めてもまったく取り合ってもらえなかったという。
途方に暮れていたところに、たまたま通りかかった車に乗せてもらった車中でスレッドへの書き込みが途絶え、以後の消息が絶たれたことになっている。
この一連は現代版「神隠し」といわれ、「はすみ」の状況や「きさらぎ駅」の所在地などを巡り、ネットで多くの議論が巻き起こった。
その後、アニメ・漫画など「きさらぎ駅」を舞台にした物語が登場し、SNSでのトレンド入りとなるなど、十数年の時を経ても根強く関心が持たれている。
ひらがなで「きさらぎ駅」と表記するのが一般的であるが、のちの体験談や考察では「如月駅」や「鬼駅」などの表記も見られる。
また、その後都市伝説として語られるようになった類似の架空の駅を含む総称として「異界駅」と呼ぶことがある。
あらすじ
大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代 版 "神隠し" と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。
リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』で はないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。
ようやく純子への連絡先を知り、数ヵ月にわたりメールでやり取りした結果、春奈は遂に純子と会う約束を取り付ける。
指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。
春奈を出迎えた純子はどこか影のある雰囲気を持つ女性。
部屋へ案内され、早速、ネットで噂される「はすみ」本人との真偽を確かめる春奈に対して、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべながらも春奈からの問いかけに静かに頷く。
続けて、 純子から「きさらぎ駅」へたどり着いた経緯、その後の出来事などを聞いた。
その内容は春奈には到底信じられるものではなかったが、純子の話の中で春奈はなぜ純子だけが「きさらぎ駅」へたどり着くことができたヒントに気づく。
純子の別れた春奈は自然に「きさらぎ駅」の舞台となった遠州鉄道の駅へ向かう。
この選択が春奈の運命を大きく狂わせることになってゆく…。
主要人物
堤春奈
演 - 恒松祐里
関東女子大学で民俗学を専攻している学生。
都市伝説「きさらぎ駅」を卒業論文の題材に決め、謎に迫っていく中で、純子のことを知る。
純子に取材し聞き取った方法をなぞって「きさらぎ駅」にたどり着こうとする。
葉山純子
演 - 佐藤江梨子
「きさらぎ駅」に行ったと噂される女性。
春奈から異世界での体験の取材を受ける。
元高校教諭。
2004年に学校からの帰宅途中で行方不明になり、7年後に発見される。
異世界で一緒に行動していた明日香を元の世界に帰せなかったことに責任を感じている。
純子が「きさらぎ駅」で出会った人たち
※後から「きさらぎ駅」に来た春奈とも出会う。
宮崎明日香
演 - 本田望結
女子高生。
純子が勤務していた高校の3年生。
「どんな時でも自分に恥じる行為はするな」という母親の言葉を守っている。
そのため、時には自身の危険を顧みず他人を助ける行動をしている。
松井美紀
演 - 莉子
ギャル。
大輔、翔太とは同じグループで、以前から行動を共にしており仲間思いである。
飯田大輔
演 - 寺坂頼我
おとなしい男。
翔太には乱暴されたり振り回され続けている。
岸翔太
演 - 木原瑠生
乱暴な男。
ナイフを所持し、周囲に怪我させたり迷惑をかけ続けているが、実は小心者。
花村貴史
演 - 芹澤興人
サラリーマン。
酔いのせいもあり危機感がなく、自分の状況が理解できずにいる。
純子の関係者
葉山凛
演 - 瀧七海
純子と同居している姪。
春奈と純子の会話を聞いてしまい、自分も「きさらぎ駅」に行こうとする。
大園葵
演 - 堰沢結衣
凛の友人。
新感覚のジャパニーズホラー
本作ではFPS(一人称視点)映像をふんだんに盛り込み、観客自らが「きさらぎ駅」を訪れたような疑似感覚を体験できるよう制作されている。
そのせいか、アトラクションを楽しむ感覚に非常に似ている。
これがなかなか新鮮で、視覚を制限したことを最大限に活かす演出が冴える。
さらに巧妙なことに、純子が「きさらぎ駅」を訪れた際はFPS(一人称視点)映像で。
春奈が「きさらぎ駅」を訪れた際は通常視点で描くことで、観る者を飽きさせない演出がなされている。
また、ホラー演出にSF色が強いことも特徴のひとつだといえる。
おまけに、近頃流行りのゾンビ映画のような演出まで…。
そのせいかホラー演出が少し安っぽくみえてしまうのが残念ではあるが、視聴した後にはそんなことは些末なことだときっと誰もが思うだろう。
それほどクオリティの高いシナリオは必見だ。
考え尽くされた衝撃のラスト
本作はまさに新解釈「きさらぎ駅」。
前述した通り、そもそも「きさらぎ駅」とはひとり語り(受け答えはあるにせよ)の物語である。
たしかに本作でも、序盤は「はすみ(葉純)」のひとり語りとして物語は進行する。
ただしそのひとり語りは、オリジナルとはまったく違う展開。
その副産物として紡がれる衝撃のラストは、オリジナルでは語られなかった、まったく新しいものだった。
まさかあんなことになろうとは…なんて思うほど、まったく想像しなかった展開が待ち受けている。
しかし、本作を新解釈と定義する理由はそれだけではない。
これで終わりだと思った先にさらに驚愕の展開が待ち受けていたことが、本作を新解釈と定義づける決定的な理由である。
しかし、ここはあえてネタバレしない。
衝撃のラストは、是非ご自分の目でたしかめていただきたい。
…うわっ、そうきたか!?
だからあの時、あの人は笑っていたのか…。
こうなってしまったら、彼女はこれからどうするのだろう?…
その後がかなり気になるが、それでも納得のラストであった。
本作のシナリオは、実によく考え込まれている。
最後に
本作は1時間21分と、少しコンパクトな作りになっていて観やすい仕様となっている。
また大好きだったサトエリこと佐藤江梨子さんの出演が、個人的には非常に嬉しくもあり懐かしかった。
相変わらずお綺麗で…。
本作はベースとしてのホラー要素はあるものの、サスペンスのようでもあり、ファンタジーのようでもある不思議な作品である。
ただホラー作品としてもかなりおすすめ。
気になった人は是非。
二転三転する衝撃のラストを見逃すな。
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