テレビアニメシリーズ
攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG
『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』とは
『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』(こうかくきどうたい スタンドアローンコンプレックス セカンドギグ)は、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の続編となるSF・TVアニメ。
スカパーのパーフェクト・チョイスでは2004年より放送された。
前作で解散に追い込まれた公安9課が再結成してからの物語となっている。
スタッフは前作の『S.A.C.』とほぼ同じであるが、ストーリーコンセプトに押井守氏が参加している。
本作は『S.A.C.』から2年後の西暦2032年が舞台となっている。
「個別の11人」を名乗るテロリストの事件を発端に、公安9課復活の経緯から9課と敵対する内閣情報庁の登場と暗躍、個別の11人事件と、それに伴うクゼの登場からその追跡の模様、その他一話完結のストーリーを織り交ぜながら展開していく。
後半は内閣情報庁の情報操作や工作活動によって国民の難民への不信感と反発がさらに増し、その結果として生じた招慰難民の一斉武装蜂起、クゼによる「革命」や自衛軍による出島総攻撃、米帝による出島への核攻撃などが描かれる。
本作シリーズを約160分にまとめた総集編『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX Individual Eleven』が製作された。
「STAND ALONE COMPLEX」シリーズとしては続編『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』も制作されている。
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あらすじ(「個別の11人事件」)
時は西暦2032年。
第四次非核大戦終結から6年が経過している。
大戦によってアジア各地では難民が発生。
戦後の復興を担う安価な労働力として、日本政府はなし崩し的に難民を受け入れ、彼らの労働力を利用した。
その数延べ300万人。
日本の5カ所に招慰難民居住区が点在している(北海道・関東・神戸・新浜・出島)が、自らのアイデンティティーを固持しつつも、日本に帰化することは忌避する難民に対し、日本国民からは「税金の無駄遣いだ」との声もあがっている。
また、安価な労働力によって失業率も高まっているとの見方もあり、難民問題は戦後日本が抱える負債となった。
こういった招慰難民に対する不満が高まっている中、そこに目をつけた人物がいた。
合田一人《ごうだ かずんど》──内閣情報庁 戦略影響調査会議代表補佐官。
登場人物
公安9課主要メンバー
前作『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』に引き続き、公安9課の主要メンバーに変化はない。
プロト
声 - 杉山大
バイオロイドのプロトタイプであるが、他の人間と同様に、重圧を感じたり、孤独を感じたりもし、何気ない一言に傷つくこともある。
当初、トグサは彼のことを人間だと勘違いしており、『2nd GIG』24話で攻性防壁に接触して彼の顔から白い血液(アンドロイド用の人工血液)が流れ出たことにより、初めて彼が「人間」でないことに気がついた。
『2nd GIG』ではタチコマの整備や、荒巻の臨時の鞄持ちを担当していた。
アズマ
声 - 尾形雅宏
『S.A.C.』シリーズでは『2nd GIG』から初登場し、他に『イノセンス』にも登場する。
『2nd GIG』第16話「そこにいること」では、任務である個別主義者の内偵を「動きがないのでつまらない」と言い、それを聞いたトグサから叱られる。
矢野
声 - 望月健一
『2nd GIG』では長崎の出島での戦闘で殉職。
クゼ・ヒデオ
声 - 小山力也
元陸上自衛軍の軍人。
世界有数の造顔作家が手がけた美しい造形の義顔(表情を持たない割には整っているという意味であり、突出した美形という訳ではない)と、耐用年数切れながらPKF仕様の高度な完全義体を有する。
2024年、朝鮮半島新義州にPKFの一員として渡った時に遭遇した出来事によって人生に達観し、好みの情報を摂取して踊らされた結果として国が滅びたにも関わらず、その事態に無責任な難民達がクゼを落胆させる。
しかし、幼少期から全身義体であったために心身の不一致に悩んでいたクゼに多大な生きる希望を与えたのも、出島に招慰される前の難民達であった。
そこでクゼは、難民に対する復讐と救済として、「難民の記憶とゴーストをネット上に運び去り、ネットと融合させて新たな生命体として進化しようという思想」を構想し、それを革命という形で実行していく。
その後、難民問題を悪化させるために合田が放ったウイルス "個別の11人" に感染し、義体化以前童貞(義体化後は不明)だったため発症するが、革命の目的達成のために難民のリーダーとして行動することが最善の手段であると考えていたクゼは、"個別の11人" による難民解放という目的達成のための難民攻撃という思想が思想誘導であることに気付き、ウイルスの分離に成功する。
健康体となったクゼはハブ電脳を介しておよそ300万人の難民の指導者となり、難民の支持を得るべく、出島難民居住区を日本政府に独立国として認めさせるために核武装するという壮大な構想を提起し、実行していく。
難民の記憶とゴーストをネットに運び去り強制的な進化を得るという革命は成功すれば救済となるが、失敗すれば大量殺戮となる。
その場合は、かつて人生を達観した時に最も自分自身を失望させた、無責任に孤人の複合体としてネットというインフラを食い潰してきた者達への復讐としての革命となるのだと理論付けている。
タチコマからは、記憶をネットに保存したところでゴーストは宿らないのではと指摘されていたが、『S.S.S.』では、タチコマ達は、クゼが難民たちの記憶を転送するはずだった可処分領域に自分たちの共有記憶を残しており、可処分領域を漂流している記憶の残滓を素子によって再構築され、タチコマ達は〝ゴースト〟を取り戻している。
劇中では片仮名表記だが漢字名表記では「九世 英雄」とされる。
13話時点で、身長178cm、血液型B型であるが、他の項目は全て「Unknown(不明)」となっていた。
PKFに参加して手に入れた義体は耐用年数を大幅に超えているため性能は著しく低下しているが、その状態でもバトーと白兵戦をして勝利している。
表情に拘って作ったフェイスパーツであり、顔面には神経ネットワークを定着させるためのマイクロマシンを敢えて注入しなかったため、表情筋を動かすことがほとんどできない。
口はリンゴを囓る程度なら動くようである。
クゼが口を動かす描写は2箇所のみであり、自決直前の移動中の会話で「頼む。誰か "個別の11人" を…」と発言した際、最終話にマイクロマシンを射たれ倒れこんだシーンである。
『東のエデン』において2011年2月14日に、羽田沖で「11発目のミサイル」が旅客機に直撃し、6歳児の男女2名を除く乗客乗員236名が死亡する大惨事が起きているが、この時に奇跡的に救出された男女2名の6歳児は、幼少時の素子とクゼである事が示唆されており、搬送先の病院で死んだと幼少時のクゼが勘違いした女の子(素子)のために、左手しか動かない体で鶴を折り続けたエピソードに沿って、最期は鶴を折っている。
パトリック・シルベストル
革命評論家。
前作のJ.D.サリンジャーとは異なり、架空の人物である。
五月革命に遭遇したことで革命指導者への憧れを掻き立てられ、歴史的な革命の流れについての考察9編と自身の遭遇した五月革命についての評論1編の計10編を『初期革命評論集』として出版している。
これは発表当初は大きな話題とはならなかったが、その後熱狂的な個別主義者達の聖典となっていった。
彼の思想は「ただ一度の人生を革命指導者として生きるなら、それは至高のものとして昇華する。英雄の誕生はその死をもって完結し、永遠を得る。」というものである。
事実、彼はルーマニア革命に身を投じその生涯を終えている。
パトリック・シルベストルのモデルは三島由紀夫であり、『初期革命評論集』も三島由紀夫の『近代能楽集』がモデルになっている。
茅葺よう子
声 - 榊原良子
日本憲政史上初の女性首相で、『2nd GIG』での新内閣発足以降の実質的な公安9課のトップ。
親米ではないが親中でもなく、「一身独立して、一国独立す」のスローガンの下、中国並びにアジア諸国、米露連合、EUと同様の距離を保った上で、日本が独自の判断で動く外交政策をとろうとする単独国連協調路線を掲げる。
保守派であり、率いている内閣は「これまでの戦後民主主義路線に対する反動保守政権」と言われている。
米帝の経済的疲弊が限界に達している今こそ、放射能除去技術を以て米帝の軍事力に屈することなく日本主導で日米安保を再締結したいと考えており、自衛軍の軍備増強によって米帝に依存した安保からの脱却を目指している。
内政では、国民に重税を強いてきた難民政策の転換を企図している。
劇中では彼女の名前は明かされず(登場人物は「茅葺総理」または「茅葺」などとしか呼んでいないため)エンドロールにも「茅葺」としか表記されていないが、DVDに収録されている特典映像の対談で初めて「茅葺よう子」と紹介された。
なお、『2nd GIG』第5話の劇中で招慰難民が燃やしている彼女の選挙ポスターらしきものに「日本ルネッサンス」というコピーと共にフルネームの記載がある。
『S.S.S.』でも現職の総理大臣として登場。
工作員の連続自殺事件に関与していると思われるシアク共和国の元指導者カ・ルマの事情聴取を荒巻が求めた際には、「幽閉状態にある彼が行ったと考えにくい」と言って許可しなかった。
ただし「やるならバレないようにしろ」とも取れる意味深長な発言だったため、荒巻は部下をカ・ルマの幽閉先に潜入させた。
高倉
声 - 武藤与志則
『2nd GIG』に登場する茅葺内閣の内閣官房長官。
親米派にして新保守派。
米帝の軍事力に頼る外交(米帝盲信主義)を捨て切れない軍産複合の最古参で、大戦の終結で価値のなくなった放射能粉塵除去技術を米帝と再び組むことで新たな抑止力とし、その商品価値を上げようとしている(米帝が核を使えば、日本は除去技術を売ることができる)。
それで特需になる上に、米帝の核の傘によって防衛費を割かずして軍備増強の課題も達成できる。
難民問題については、難民の核自爆に偽装した出島への核攻撃によって難民を抹殺することで解決しようとしている。
そのためには米帝に多少のイニシアティブを与えてでも新日米安保の締結を急ぎたいと考えている。
茅葺総理は親中派だと考えていた高倉は彼女を更迭しようと画策する。
公安9課には内庁の代表補佐官である合田との共犯関係を疑われていたが、高倉は合田との面識がないだけでなく、彼の存在自体を知らなかった。
高倉と合田は共犯関係ではなく、あくまでスタンド・アローンの関係であった。
内務大臣
声 - 秋元羊介
公安9課は内務省直属であるため、肩書き上では内務大臣が公安9課のトップである。
荒巻に直接指示を下すこともあるが、荒巻は彼を「良くも悪くも、ただの民衆の代表に過ぎん」と評している。
『2nd GIG』では『S.A.C.』での疑獄を受けて新政権が発足した後も内務大臣だけは続投しており、素子は「どこからも脅威と思われていない証拠」としている。
合田一人(ごうだかずんど)
声 - 西田健
作中の事件「個別の11人事件」を仕組んだ張本人。
国内外の情報の収集分析と情報操作を行う「内閣情報庁(内庁)」の戦略影響調査会議代表補佐官。
通称ゴーダ。
巨大企業であるポセイドン・インダストリアル(旧大日本技研)の元社員で、第三次核大戦で被曝した日本の復興を支えた放射能粉塵除去技術の確立に貢献し、後に「日本の奇跡」と呼ばれる歴史を「プロデュース」した。
その後、防衛局に就職したあと、内閣情報庁にヘッドハンティングされて頭角を現し、代表補佐官に就任した。
名前の読み方は「ひとり」ではなく「かずんど」である。
フルネームの表記が出たのは4話の1回のみである。
エンディングのキャスト紹介でもゴーダと記されている。
本人曰く、「フルネームを初対面で正しく読んだ人は誰もいないが、一度読み方を説明すれば大抵は(自身の顔とセットで)記憶に残る名前なので気に入っている」とのこと。
元来はのっぺりとした印象の残らない顔に、背広を着た目立たない外見をしており、優秀な理系のエリートにもかかわらず、おちこぼれ組として扱われていた。
そんなある時大事故に遭い死にかけるが、無事に生還する。
この際に顔の右側が抉れるほどの後遺症が残るが、整形治療などはせずあえてそのままにしている。
また、瞳孔は開きっぱなしで瞬きはほとんどしない。
ゴーダは事故で生死をさまよったことと傷を負ったことで自我(ゴースト)が大きく変容したと語っており、このインパクトの強い顔を気に入っている。
かつては英雄になりたいという願望を抱いており、「日本の奇跡」をプロデュースしたことで社会的地位とそれに見合う名声と権力を得ることを期待していたものの、あくまで「口だけ達者なプロデューサー」に過ぎなかったゴーダに社会は彼の望む評価を下すことはなかった。
この一件からゴーダは、「社会が自分を評価してくれないのは、自分に英雄に必要なカリスマ性が無いからである」と考えるようになる。
そしていつからか、動機なき国民が切望し、しかし声を大にして言えないことを代弁し、実行してくれる英雄(行動者)を創出するプロデューサーになることを目指すようになり、自らの才能と組織の力をフル活用し革命家集団「個別の11人」を「プロデュース」する。
単独国連協調路線を主張する茅葺総理と水面下で政治的対立関係にある親米派の高倉内閣官房長官の下、米帝主導の新日米安保条約を締結するべく、招慰難民問題を土台に「個別の11人」を操って、難民に不満を持つ日本人と迫害される難民の対立を巧みに煽りながら亀裂を広げていく。
最終的に難民が長崎の出島地区に篭り独立を宣言、自衛軍の総攻撃と米帝による核攻撃というシナリオにまで発展させた。
なお、内庁は高倉官房長官直下の組織であり、ゴーダの活動も米帝依存路線の維持と茅葺総理の更迭を目論む高倉の目的に沿ってはいたものの、二人は互いにスタンドアローンな関係にあった。
作中で9課はゴーダと高倉の共犯関係を疑っていたが、実際には高倉はゴーダの動向を一切関知しておらず、それどころか彼の存在すら知らなかった。
本作に登場する用語
内閣情報庁
通称「内庁」。
内閣情報調査室と安全保障会議(現・国家安全保障会議及び国家安全保障局)、外務省国際情報局(現・外務省国際情報統括官組織)などを統合して作られた「内閣報道庁」が、省庁再編を機に名称変更して誕生した、最も新しい行政組織である。
防衛省防衛局(現・防衛政策局)からも大量の人材を受け入れており、合田も防衛省から内庁にヘッドハンティングされて入庁した。
内閣官房長官の下、国内外問わず情報の収集、分析および操作を行う。
合田が代表補佐官を務める「戦略影響調査会議」は、国内外の情報収集、分析だけでなく、自衛軍の国内外での活動について、非合法な情報活動を行っている。
また、組織力では9課を凌ぐ。
『SECTION-9』では、『2nd GIG』での官房長官と代表補佐官の顛末が原因で内庁は廃止されている。
日本の奇跡
MM(マイクロマシン)による放射能除去技術のこと。
「日本の奇跡」によって新しい核の抑止兵器を保有した日本は、戦後、驚異的な経済復興を遂げた。
招慰難民※
大戦によりアジア各地で発生した難民を、日本政府が安価な労働力として招き入れたもの。
その数は300万人を超える。
日本に帰化することを頑なに拒み、民族としてのアイデンティティを維持したまま、日本政府の難民対策事業に依存しており、戦後復興以降に労働力過剰となって冷遇されている関係で、難民の不満が蓄積しているほか、日本国民からは「税金を無駄に喰らっている」「日本に帰化することすらしない難民のために増税を強いられた」として、彼らへの反感や憎悪が増している。
近年では、政府が指定した難民移住区以外の主要政令都市にも難民が流入しはじめており、各地に難民街が形成されつつある。
人工知能やロボット技術の発達により、招慰難民に代表される低賃金労働者などが必要とされる〝人間にしかできない仕事〟は限られてきており、高性能の国産義体を手に入れることができない難民への職業差別が問題化している。
2001年9月11日に、アメリカ合衆国で同時多発テロ事件が発生しており、『2nd GIG』では、9.11以降の戦争を描くことが作品のテーマの一つとなっている。
『攻殻機動隊』テレビアニメ化の当初の段階では、『S.A.C.』全26話で終了する予定であり、そのようにプロットが構築されていた。
『S.A.C.』第2話完成時に急に26話追加して全52話にすることになり、『S.A.C.』の制作と同時に『2nd GIG』のシリーズ構成が行われ、『2nd GIG』にはストーリーコンセプトとして押井守氏が参加することが決定した。
押井氏は神山氏に「9.11以降の戦争を描け」というテーマを投げかけ、そこから「招慰難民」という設定が作品の中核に据えられた。
出島
「新出島」とも称される人工島。
全国5箇所に置かれている招慰難民居住区の一つ。
正式には「九州招慰難民居住区出島キャンプ」。
出島の名のとおり長崎市稲佐山北西方、相川集落沖の人工島に設置されている。
陸との間に長い橋(出島大橋)があり、橋には長崎県警の警備隊による厳重な検問所が設置され、自由に出入り出来ないようになっている。他に、網走、函館、東京(関東招慰難民居住区)、新浜、もしくは、北海道、関東、神戸、新浜に難民居住区がある。
本作の続編である『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY』では、招慰難民居住区の場所は、北海道、関東、神戸、新浜、長崎の全国五ヵ所に点在していると明確に言及されている。
さらに全国五ヵ所―北海道、関東、神戸、新浜、長崎―に点在する招慰難民居住区とその周辺はスラム街を形成して治安の悪化を招き、加えて国民の血税は、国内三百万人に及ぶ難民政策にいたずらに使われている。
小説『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY』 より
出島は国内に点在する5箇所の招慰難民居住区の中では最大規模であり、戦後荒廃した都市を再利用した他の難民居住区とは違い、初めから新しい住居を設けて作られたフロート式洋上都市である。
当初は仮設住宅だけであったが、現在では香港島やタイのバンコク並みにエネルギーに満ちた無国籍都市となっている。
中央ゲートを通らずとも交易を行えるように非合法の港まで設けており、難民達の難民達による難民達のための「聖地」になりつつあった。
このほか、シアク共和国出身者を中心に大阪の廃墟区域に闇市場が立ち並ぶ難民街を形成しており、スラム街化している。
また、一部が武装難民化している。
このため、日本政府は政府主導で大阪の再開発事業を行っているほか、内務省を通じて9課に武装難民の排除を命じている。
初期革命評論集
革命評論家のパトリック・シルベストルによって書かれた書籍で、正式タイトルは「国家と革命への省察 初期革命評論集」。
「第三身分の台頭」、「支配からの脱却」、「王朝の終焉」、「社会主義への希求」、「狂喜前夜」、「神との別離」、「カストロとゲバラ」、「虚無の12年」、「原理への回帰」の9編と、作者自身が遭遇し革命指導者への憧れを掻き立てられた「五月革命」の1編、あわせて10篇からなる書物である。
幻の一編とされる「個別の11人」は「五・一五事件を能楽と照らし合わせ評論したもの」「作者が五・一五事件を最後まで革命と定義付けることが出来ず封印したため初版はたった20冊のみが発行された」「五・一五事件と能楽を照らし合わせ、成功しても失敗しても一度きりという共通の性質から、革命を指揮する英雄の人間としての命の輝きを評価した」とされ、個別主義者の聖典とされる。
しかしこの「個別の11人」は実際には存在せず、その正体は巧妙に偽装されたコンピュータ・ウイルスで、内閣情報庁の合田一人が作ったものであった。
タイトルは、パトリック・シルベストルのモデルとなった三島由紀夫の『近代能楽集』がモデルになっている。
個別の11人※
第1話において中国大使館を占拠した9人のテロリストグループ。
アジア難民の受け入れ即時撤廃と、出島など国内に5箇所ある招慰難民居住区の完全閉鎖を求め、承諾しなければ人質を殺すとの声明を発表したが、県警SWATの突入直前に開始された公安9課による強襲作戦によってテロリストは制圧された。
この事件は9課再編の足掛かりとなった。
事件後、内閣情報庁代表補佐官の合田一人が「個別の11人ウイルス」を作成。
このウイルスは、「初期革命評論集」を電脳内に保持していることによって感染するように仕組まれていた。
感染者の中から発症因子を満たしている者のみ発症し、「難民を攻撃することで難民の蜂起を促す」という行動(「奉仕」と呼ばれる)を始め、最終的には「英雄の最後は死によって締めくくられる」という思想に従って自殺や集団自決をすることになる。
ウイルスの発症因子は「義体化率が高い」「義体化以前の生身の時に童貞であった」というものである。
また、ウイルスに感染した者は「初期革命評論集」の中に幻の一編「個別の11人」が存在していると思いこみ、「個別の11人」を「聖典」と呼ぶ。
クゼは「個別の11人ウイルス」に感染して茅葺首相暗殺未遂事件を起こした後、ウイルスに感染してテロを起こした者達とともに集団自決しようとするが、「難民を攻撃することで難民の蜂起を促す」という行動に疑問を感じ、最終的にウイルスの分離に成功して集団自決を思い留まり自決現場から逃走する。
後にクゼは出島に現れ、ハブ電脳を介しておよそ300万人の難民の指導者となって、日本政府に出島を独立国として認めさせるために戦うこととなる。
劇中登場する「個別の11人」マークのデザインは、かつてエイフェックス・ツインのロゴも手がけたポール・ニコルソンによるもの。
ニコルソンは前作においても「笑い男」のロゴを手がけていた。
元々『S.A.C.』におけるサリンジャーに当たるものとして、セカンドシーズンである『2nd GIG』では三島由紀夫が考えられていた。
神山氏は『S.A.C.』で「赤報隊」の問題にやり残した感があったと考え、『2nd GIG』で日本における右翼や在日というテーマを扱おうとした。
そのために「個別の11人」という素材を採用し、三島由紀夫がその中核に据えられていた。
三島由紀夫の『近代能楽集』は9編で構成されているが、神山氏はこれに「ロングアフターラブ」を足した10編とするという逸話を聞き、さらに幻の1編が存在し、それが「個別の11人」だったという設定を考えていた。
しかし、事前の聞き取りでは、三島の作品をこのような形で使うことは許可を取るのが不可能であるという意見が多く、また右翼団体が会社に来る可能性まで勘案し、そこまでのリスクは負えないと判断し、プロットの段階でこのアイデアは断念された。
これに伴い、三島は1960年代のフランスの思想家シルベストル(架空の人物)に、『近代能楽集』の幻の1編であった「個別の11人」は、シルベストルによる「初期革命評論集」の幻の1編に変更された。
神山氏はこの変更に対し、現実に存在する危ないネタをスポイルしながら始めてしまったため、自分の中で少しずつリアリティが失われていったと述べている。
難民問題
第4次非核大戦によってシアク共和国が崩壊し、アジア全域に難民が発生する。
中国などは難民の受け入れを拒否するが、当時、戦後復興のため安価な労働力を必要としていた日本政府は、アジア難民の受け入れを決定。
招慰難民対策特別措置法を制定し、北海道・関東・神戸・新浜・長崎の5箇所に招慰難民居住区を設置し、戦後復興と国際貢献を国際社会にアピールした。
しかし拡大する招慰難民居住区の確保と、難民の生活保障のために多くの税金が投入されているということに世論が批判的に転化し、安価な労働力が失業率を押し上げているという論調もあいまって、日本社会全体に難民受け入れに対する嫌悪感が広がっていく。
これが難民問題の発端である。
その後、難民嫌悪の世論を体現する「個別の11人」という反難民テロ集団が出現、難民に関連する企業や政治家や個人などに対しテロを起こしたり暗殺したりする事件が頻発化し、これにいよいよ世論は同調、対する難民も国民との摩擦にどんどん追い詰められて自爆テロを起こす一派まで発生するに至る。
茅葺首相は難民対策特別措置法を廃止し、難民利権の解体とそれによる財政赤字の解消を目標に、難民受け入れの無期限停止と難民居住区の段階的縮小、そして難民帰化政策によって招慰難民を日本国国民として強制帰化させるという政策を推し進めようしていた。
作品内では所々五・一五事件に触れる部分が出て来るが、それは五・一五事件が上記に似て当時の世論や風潮を体現する様な思想内容であったこと、首謀者達も世論から同情や共感、果ては英雄視までされる見方まで現れていたこと、また、パトリック・シルベストルのモデルとなった三島由紀夫も、五・一五事件や二・二六事件の思想的影響を強く受け、戦後、自衛隊にクーデターを起こすよう促していたことなどが挙げられる(「楯の会」と「三島事件」)。
主題歌
オープニングテーマ
- 「rise」
作詞 - Tim Jensen、Origa / 作曲・編曲 - 菅野よう子 / 歌 - Origa
本作の主題歌にして、シリーズ屈指の神曲との呼び声高い「rise」。
難解なロシア語と英語の混成歌詞からは、ミステリアスで神秘的な雰囲気が漂う。
前作と比べシナリオはより高度により現実的に
より現実的になったシナリオと設定
前作『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』のメインシナリオ「笑い男事件」はたしかに現実的ではあったが、少なからずエンタメ性を含んでいた。
本作という比較対象を得たなら、きっとそう感じるだろう。
「笑い男事件」はたしかに非常に現実的で、かつ非常に高度な政治的問題であり社会的問題であった。
しかし本作の描く「個別の11人事件」は、政治的問題の点でそのさらに上をいく。
特に本作で描かれる世界情勢は、リアルそのもの。
核戦争後の覇権争い。
戦争による難民問題。
その結果仕組まれた、 "個別の11人" という極めて破滅的な革命思想。
すべてが近い将来、起こるであろう事象ばかりである。
残念ながら、すでにその予兆はある。
難民問題はすでに世界中で問題化されており、日本でも様々な意見が飛び交っている。
『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』で描かれた世界観が現実になる日も、そう遠くはないかもしれない。
極めて高度な政治的駆け引き
本作は前作と比べ、政府内における各組織や各国のパワーバランスがより細かく深く描かれている。
例えば茅葺内閣は選挙戦のための広告塔だとか、テロともいえるゴーダの専横を許してしまう内庁の体制だとか、政治に振り回され現場に駆り出される陸自・海自・空自・特殊部隊だとかの描写は、もはやアニメの粋を超えている。
なかでも特筆すべきは、「日本の奇跡」というカードで成し得た日本優勢の日米安保の締結。
これには、これがフィクションだと理解しつつも心が踊った。
日本がアメリカの…本作でいうところの米帝の犬から独立を果たし得る「日本の奇跡」。
この「日本の奇跡」を現実化できれば、日本優勢の日米安保の締結だって決して夢幻などではない。
本作には、これからの日本の現実的な立ち位置がしかと描かれている。
被爆国・日本が進むべき唯一の道
核抑止兵器「日本の奇跡」
本作で描かれた「日本の奇跡」とは、前述の通り、MM(マイクロマシン)による放射能除去技術のこと。
本作では、「日本の奇跡」を新しい核の抑止兵器と位置付けているが、劇中で兵器として扱われた節はない。
ただ放射能除染への有効な手段として描かれているだけ。
しかしこの「日本の奇跡」は、本作を語る上で最も特筆すべき点である。
"「日本の奇跡」と呼ばれる放射能除去技術によって新しい核の抑止兵器を保有した日本" という本作設定は、被爆国としての日本の未来を考えた時、非常に強い説得力を持つとともにとても深い意味を持つ。
日本は史上唯一の被爆国である。
人類史上、実戦で原爆を投下されたのは日本以外に例がない。
そんな日本が、何故 "抑止力としての核" という安直な考えにしか辿り着けないのか?
それは "目には目を" という、頭の固い古い考え方しかできていないからのような気がしてならない。
何よりそれでは、史上唯一の被爆国としての矜持をまったく感じられない。
実際、仮に日本が核を保有したところで今さらだと思う。
すでに世界は核で牽制し合っている。
そんな状況で小国小市民の日本人が、たとえ防衛手段とはいえ非常事態で自発的に核を撃てるのか?
広島・長崎を知っていればこそ、それは無理な話だろう。
ならば考え方を変えるしかない。
核を脅威と感じるなら、その脅威を取り除いてやればいい。
どんな強力な兵器を保持しようと、最大の脅威を無効化させることができれば、それはもはや脅威ではなくなる。
それは核兵器だって同じだ。
そして核兵器における最大の脅威とは、原爆炸裂後の放射能汚染。
その放射能を除染できる「日本の奇跡」という発想こそ、被爆国である日本ならではではないのか。
日本が本当に目指すべきは、「日本の奇跡」のような画期的な放射能除去技術を開発すること。
これは非核三原則下の日本にとって、核に対抗し得る最も現実的かつ有効な手段であり、唯一の被爆国として正しい在り様のように思う。
何より、戦争で勝つ国より、戦争を仲裁できる国の方が圧倒的に立場は強い。
核を保有することだけが、核の抑止力ではないのだ。
本作は、それを教えてくれている。
さすがは士郎正宗、恐るべき先見性である。
核抑止力に核保有しか考えられない日本の政治家よ。
本作を観てみろ。
もし「日本の奇跡」を実現できたなら、日本は世界を変えられるし、もしかしたら人類の救世主となり得るかもしれない。
絵夢トイズ 攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 草薙素子 1/7スケール PVC・ABS製 塗装済み 完成品 フィギュア
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