#56
停滞する思考に一石を投じる苦言
声にできない本音を言葉に…
何かと生きづらい世の中で、思ってはいても言葉にできない声がある。
感じていても声にするのが憚られる言葉がある。
それは耳障りが悪く、心地良い言葉ではないのかもしれない。
だが言葉にされて、はじめて気づくこともある。
本稿で取り上げる言葉は、ひとつ間違えれば暴言とも受け取られかねないものだ。
しかし何かを変えるためには、声に、言葉にしてより多くの人に考えてもらうべきだろう。
本稿が停滞する思考覚醒へのキッカケとなることを切に願う。
神崎拓斗(日曜劇場「御上先生」より)
神崎拓斗
報道部の部長で、ジャーナリスト志望。
新聞記者の父親に対しては尊敬と反発の入り混じった複雑な感情を抱いている。
正義感があり成績優秀だが、喜怒哀楽を表に出さないタイプ。
クラスの空気を支配してしまうようなカリスマ性がある。
日曜劇場『御上先生』Last Episode -Puppets can't control you- でのヒトコマ。
隣徳学院に不正入学していた生徒・千木良(髙石あかり)は自分自身を受け入れられず、誰よりも勉学に励むも罪悪感に押しつぶされそうになっていた。
しかし、妹をはじめ他の在校生の影響を考え真実を言い出すこともできなかった。
そこで御上(松坂桃李)は、大人たちが自分たちの利権欲しさに踏み躙ってきた子供たちの未来を取り戻すべく、生徒たちと考えることに。
御上の言葉に心を動かされた千木良は、クラスメイトに父の犯した不正を打ち明け「私にはできないことをやって。報道はなにかってことだけ考えて」と記事にしようとしている報道部・神崎(奥平大兼)へ思いを託す。
神崎は様々な人の思いを背負い記事を書き上げ、父に頼み込み新聞に掲載してもらうのだった。
そのデータの中にクラスメイトがいる
自己嫌悪で吐きそうになりながら
その記事書いたよ
でも千木良が言ったんだ
報道とは何かだけを考えろって
だから父さんも
それだけを考えてほしい
メディアとは本来、権力を監視するという重要な役割を担っている。
メディアは常に「ウォッチドッグ」、権力を監視する番犬でなければならない。
おかしなことがあれば、すぐに「ワンワン」と吠えて、国民に危険を知らせる。
そして時間と金とエネルギーを大量に投入する調査報道によって、不正や悪政を追及するのだ。
しかし昨今では記者会見で特定の質問者を排除したり、報道機関に圧力をかけるといった行為がまかり通ってしまっているのが実情である。
かつては新聞が目の敵にされていたが、テレビの影響力が大きくなるにつれ、政府は警戒感を強めるようになった。
特に安倍政権時代では積極的にメディアを監視し、コントロールしようとした。
安倍政権時代の2014年、自民党が在京テレビ局に対して「選挙報道に偏りがないように」と、わざわざ文書で申し入れを行なった。
その結果、政治についての討論番組が激減。
「申し入れ」があっただけだが、これは事実上の脅しである。
その脅しは効果覿面で、面倒を避けるため現場が萎縮してしまった。
おまけに安倍政権は申し入れだけでなく、抗議も積極的に行なった。
テレビ番組やニュースを事細かにチェックし、意に沿わない内容には頻繁に抗議した。
こうしてテレビ局は自粛ムードに覆われてしまった。
こうした働きかけを繰り返し受けていると、はじめから面倒なことにならないよう忖度した内容の番組ばかりになってしまう。
さらに政府からの働きかけの総仕上げが、高市早苗大臣の「停波」発言である。
「停波」という最大級の脅しでメディアは権力を監視するという機能を失い、監視され、管理され、利用される側に成り下がった。
権力を監視する番犬は、権力に飼い慣らされてしまったのだ。
おかげで、ロイタージャーナリズム研究所発行のDigital News Reportによる「メディアの権力監視」での日本の評価は国別で最低。
この国から真のジャーナリズムは失われてしまった。
この国にとって報道とは何か?
民意を扇動するためだけのものなのか?
真実を報道することは、時に痛みを伴う。
身内に関係者がいるかもしれない。
背に腹はかえられぬ、やむを得ない事情があるのかもしれない。
しかしその痛みなくして、真実にまで手が届かないのもまた事実。
その痛みから目をそらし、傷口を広げ続けた結果、この国は腐敗し衰退した。
この国を救うためには、この国に巣食う深い闇に光を照らさなければならない。
そしてその役割こそ、報道が担うべきものなのである。
煽りをくらうのはいつも弱者だ。
正直者が馬鹿を見る、そんな理不尽で歪な社会。
だがメディアが真のジャーナリズムを取り戻すことができるのなら、この国はまだ変わることができる。
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