最強失恋ソング決定戦
B'z『僕には君がいる』
B'zが、2007年12月5日にリリースした、16作目のオリジナル・アルバム『ACTION』に収録されている。
前作『MONSTER』より約1年半ぶりのリリースで、B'z結成20周年を記念したオリジナル・アルバムである。
『ACTION』はB'z20周年記念のアルバムだけあって名盤と呼べる作品だ。
なかでも『僕には君がいる』は、究極のラブソングだと確信している。
ピアノのイントロに、ストリングスが絡むバラード・ナンバー。
ギターサウンドが極端に少ない曲で、2コーラス目が終わるまでエレキギターが一切登場せず、ギターソロやDセクションを除けばサビにアコギのアルペジオがあるのみである。
松本氏曰く、「バラードであんまり僕が登場しない曲をやろうと思って。B'zの王道バラードじゃなくしたいなっていう」。
また当初はアコースティック・ギターも含め全くギターを入れないつもりだったという。
稲葉氏は歌詞について「礎がテーマというか(笑)。その人を愛することで喜びを得るという。それである種のモチベーションを得る」と語っている。
愛されたいと願うから苦しいんだね…
100年の恋に破れた直後に絶えず聴いていたのはB'zの楽曲ばかりだった。
件のプレイリストを制作したのは、実は少し落ち着いてからのことになる。
そして数あるB'zの楽曲なかでも、一番聴いていたのが『僕には君がいる』だった。
よって本作品は個人的な最強失恋ソング決定戦の大本命である。
ただし残念ながらB'zファン以外はおそらく誰も知らない作品なのだろう。
『僕には君がいる』では、ただひたすら居なくなってしまった「君」に想いを馳せている。
一説には本作品での「君」とは、稲葉浩志氏の愛犬をさしているという。
だからだろうか？
大切な人(愛犬)を失った喪失感と虚無感が半端ない。
楽しくない 日々から 抜けだせないこと
誰にでもあるだろう
すべてがどうでも良くなって、でも生きなくちゃいけなくて。
なんとか楽しくなるように踠いてみても、一向に抜け出せない闇のトンネル。
誰だってこんな気持ちに陥ったことが、一度や二度はあるだろう。
著者にとっての100年の恋は、幸せの絶頂で終わりを感じるというものだった。
「イヤな予感」は突然頭をよぎる。
僕には君がいるからと 思って臆病にもなったんだ
イヤな予感を すべて消したかった なにもかも
いつかは誰もいなくなる だから余計に愛しい
それを忘れて 荒っぽく 時間を使い果たす
泣いてしまえばいいんだよ
「荒っぽく時間を使い果たす」…か。
これが最後だとわかっていたら…
あの時もっとこうしていれば…
大好きな人と一緒にいられる、かけがえのない時間をもっと大切に遣っていれば、何かが変わったのかな？
あの頃はそんな後悔しかなかったから、余計に響いた。
そんな果てしない喪失感と虚無感から心を解放し、前を向かせてくれたのはこのフレーズだった。
愛されたいと誰もが願って
孤独に包まれてゆく 世界
愛することの歓びならば 誰にも侵されない
光り輝く礎になるだろう
そうか。
愛されたいと願い、見返りを求めるから苦しむのか。
でも愛することに歓びを感じられるなら、それは相手に何も求めることなく自己完結できるということ。
たとえそれが一方通行で報われない想いだとわかっていても。
たとえそれが自己満足だとわかっていても。
見返りなんていらない。
ただ想うだけ。
「無償の愛」というが、なるほど、この感覚をそう呼ぶのかと心から思った。
僕には君がいるんだと 思えば毎日が輝いたんだ
なくしたくないものが あるからこそ 強くなれる
花びらが散ってしまっても 君からもらったものは
この心臓とならんで 脈を打って ささやく
生きてゆけばいいんだと
上書き保存の男の恋愛観を如実に示しすぎていて反感を買いそうなフレーズだが、男女問わず、誰の心の中にもこのような思い出がひとつはあるのではないだろうか。
自分自身を形成し、心の奥底で礎となっている不可侵の想い。
生きている限り、ずっと抱えていく大切な大切な思い出。
あれから何年も経ったけど、今でもちゃんと胸の中にあるよ。
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