機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』とは
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(英題: MOBILE SUIT GUNDAM0083 STARDUST MEMORY)は、ガンダムシリーズのOVA。
1990年制作、1991年から1992年にかけて全13話が製作された。
略称は「0083」「星屑」。
また1992年には、本OVAシリーズに一部新作カットを加え再編集した劇場版『機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光』も公開された。
OVAである『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の商業的成功を受けて製作された『機動戦士ガンダム』の外伝的OVAのひとつ。
作品タイトルの「0083」とは宇宙世紀0083年を指し、『機動戦士ガンダム』の宇宙世紀0079年と、当時すでに放映済みであった『機動戦士Ζガンダム』の宇宙世紀0087年の間の出来事が描かれた、テレビシリーズの空白を埋めるストーリーとなっている。
OVAリリースの途中で再編集による劇場版の製作が決定し、シリーズ後半では大画面に耐え得る素材とするために、映像のクオリティがさらに上げられた。
ビデオ・LD・DVDを合わせた全巻累計出荷は105万本に達している。
またオリコンのビデオ、LD、DVDのそれぞれのチャートで1位を取った唯一のガンダム作品でもある。
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あらすじ
一年戦争が終結して3年、地球連邦軍再建計画に基づきガンダム開発計画を軍産複合企業「アナハイム・エレクトロニクス」に発注。
その試作機であるガンダム試作1号機、ガンダム試作2号機が性能テストのためにオーストラリアのトリントン基地に搬入される。
しかし、エギーユ・デラーズ中将率いるジオン軍の残党「デラーズ・フリート」がこの情報をつかんでおり、極秘作戦「星の屑作戦」実施に先立って、南極条約によって禁止された戦術核兵器を搭載したガンダム試作2号機を強奪せんと基地を襲撃する。
かつて「ソロモンの悪夢」と呼ばれたジオン軍エースパイロット、アナベル・ガトー少佐は、基地の混乱に乗じて首尾よくガンダム試作2号機を強奪した。
脱出を図る2号機の前に、連邦軍新米テストパイロット、コウ・ウラキ少尉が乗り込んだガンダム試作1号機が立ちはだかるも、歴戦の戦士であるガトーにあっさりとあしらわれ、コウは「まだ未熟」と屈辱的な言葉を投げかけられる。
かくして2号機は朝靄の彼方に消え去り、コウを含むテストパイロット達は、ガンダムを搬入したペガサス級強襲揚陸艦「アルビオン」の乗組員に任命され、試作1号機のデータ収集、および2号機の追撃・奪還任務に就く。
補充隊員としてやってきた「不死身の第四小隊」のベルナルド・モンシア中尉との衝突、砂漠でジオン残党を率いるノイエン・ビッター少将との戦い、月面で再起を期してヴァル・ヴァロを整備していたケリィ・レズナーとの出会いと決闘、そして上官のサウス・バニング大尉の死など、様々な事件やライバルとの戦いを経て、コウは戦士として少しずつ成長していき、アナハイムのシステムエンジニア、ニナ・パープルトンとも心を通わせる。
ガンダム開発計画の責任者ジョン・コーウェン中将は、連邦軍内部においてレビル亡き後の派閥を束ね兵からの求心力もあるが、対立する派閥により動きが制限される。
デラーズ・フリートは核兵器を搭載したガンダム試作2号機の存在を暴露、一年戦争の終戦協定は偽りのものであるとして地球連邦に対して宣戦布告。
シーマ艦隊の司令官シーマ・ガラハウ中佐はデラーズ・フリートに加わるが、一年戦争のコロニーに対する毒ガス攻撃のトラウマにより内心ではジオンを憎む。
星の屑作戦遂行のためにシーマはかねてから裏取引を行っていたアナハイムのオサリバン常務と密談。
シーマにガンダム試作4号機を改装したガーベラ・テトラを横流しする。
一方、連邦軍のグリーン・ワイアット大将が束ねる派閥との裏取引で星の屑作戦の全容を記した機密文書を売り渡そうとするが、アルビオンがMS部隊を発進させたことにより失敗。
コンペイ島(旧ソロモン)宙域にて連邦軍は観艦式を強行する。
デラーズ・フリートの陽動により、試作2号機は連邦軍の防衛網を潜り抜ける。
コウは試作1号機フルバーニアンで追撃するが時すでに遅く、彼の目の前で艦隊の大半が核の焔に呑み込まれて消滅する。
旗艦バーミンガムのワイアット大将は戦死。
怒りに燃えるコウとガトーの一騎討ちの末、1号機と2号機は相打ちとなり爆散。
ガトーはコウを戦士と認める。
観艦式襲撃とほぼ同じ頃、デラーズ・フリートは移送中のスペースコロニーを強奪し、月への落下軌道に投入する。
連邦軍はコンペイ島の残存艦艇を再編し、コロニー迎撃に向かう。
しかし、月への落下軌道にあったコロニーは、シーマとオサリバンの事前の裏取引によりアナハイムから発射された推進用レーザーの照射をうけて推進剤に点火、地球落着軌道に遷移する。これを追撃していた連邦軍の艦隊の大半の艦は推進剤不足に陥って航行不能となる。
星の屑作戦の真の狙いは、地球へのコロニー落としにあった。
ハマーン・カーンが率いるジオン残党勢力「アクシズ」は表向きは中立だが、秘密裏にデラーズ・フリートを支援する。
コーウェン中将は、ジーン・コリニー大将とジャミトフ・ハイマン准将らの派閥の政略により失脚。
それによりアナハイムがドック艦ラビアンローズでテストを行っていたガンダム試作3号機は凍結、アルビオン隊は軟禁される。
アルビオン隊は命令に違反してガンダム試作3号機を強引に受領し、コロニーの落下阻止に動く。
アルビオン隊らの健闘虚しく、コロニーは阻止限界点を突破する。
ジャミトフの指示でバスク・オム大佐は、奥の手のソーラ・システムIIでコロニーの破壊を目論む。
その影ではシーマがデラーズを射殺しコリニー派との裏取引を成功させるが、事情を知らないコウによって撃墜。
コウは、かつてニナがガトーの恋人であったという事実を知ってしまう。
連邦軍の腐敗、ニナの過去、めまぐるしく変化する状況に翻弄させられたコウは、やり場のない怒りとともに、実直にジオンの理想に殉じようとするガトーとの決戦に臨む。
連邦軍はコロニーの落下阻止に失敗し、コロニーは地球へと落下。
星の屑作戦を成功させたデラーズ・フリートはアクシズの艦隊を目指し撤退する。
コロニー落としをコロニー移送中の事故として処理。
オサリバンの変死体が発見される。
権力を拡大したジャミトフは、ジオン残党狩りを目的とした特殊部隊ティターンズを設立し、アルビオン隊の多くも編入。
ラビアンローズの事件の軍事裁判でアルビオンのエイパー・シナプス艦長に死刑、コウに懲役刑。
ガンダム開発計画の抹消によってコウの罪状が消滅。
メカニックについて
作品前半で主役機とライバル機の関係となる2機の「ガンダム(ガンダム試作1号機および2号機)」のデザインは河森正治氏が担当したが、本作で河森氏は「メカニカルデザイン」ではなく「メカニカルスタイリング」としてクレジットされている。
これは、ガンダムをはじめとするモビルスーツ(MS) のデザインは『機動戦士ガンダム』ですでに確立されているとして、オリジナルを尊重し河森がとった立場である。
ほかの兵器群(MSから戦艦、輸送機、潜水艦等まで)のデザインは『機動戦士ガンダム』に登場した兵器をリメイクしたものが中心。
ただし、地球連邦軍のMSは戦後にマイナーチェンジあるいは新開発されたという設定で、ジオン公国軍の残党であるデラーズ・フリートのMSは一年戦争後期に造られた再設計型と、同じリメイクでも設定の使い分けがなされている。
MS-06F-2 ザクII F2型、RGM-79C ジム改、RB-79C ボール改のデザインに『ガンダム・センチネル0079』でカトキハジメ氏がデザインした「ザク」「ジム」「ボール」がほぼそのまま使われている。
このため、初期のスタッフクレジットにはあさのまさひこら『ガンダム・センチネル』関係者の名が多く入っている。
新規にデザインされた兵器もいくつか登場する。
バンダイから本作でコロニー落としをすることを要求され、それを阻止できる兵器としてカトキハジメによってデザインされ、システムの全長が140メートルに達する「ガンダム試作3号機(デンドロビウム)」が設定された。
一部の機体は設定的には後年にあたる『機動戦士Ζガンダム』の機体を凌駕する過大な性能を擁するが、ストーリーは最終的に、地球連邦軍の不祥事隠しのためガンダム開発計画そのものを抹消。
歴史から高性能機の存在を消し去ることで、設定の統合性を図っている。
『0080』では脚本の都合により主役MSである「RX-78 NT-1 アレックス」の出番は全体的に少なかったが、活躍する第4巻と第6巻が他巻以上に販売実績が好調だったことから、本作ではガンダムの出番が多く設定された。
ストーリーについて
本作では連邦軍上層部の腐敗に関して濃密な描写がされている。
一方で、敵であるデラーズ・フリートにおいても、愛国心に基づき「大義」に殉じる姿や武士道を彷彿させる潔さを感じさせる描写も多いが、彼等が大量破壊を全くいとわなかったり、シーマ・ガラハウのように過去のいきさつから「大義」とは正反対の姿勢を持つメンバーも抱えるなど、多彩な人間関係の描写がなされている。
作中ではジャミトフ・ハイマンやバスク・オムなど、後にティターンズの中心人物となる者が暗躍する描写が見られ、結末では『機動戦士Ζガンダム』で主人公陣営であるエゥーゴの敵役となるティターンズの台頭を予感させており、安易にハッピーエンドとは言えない締め括りとなっている。
ストーリーや設定については、主人公がパイロットである点や、アルビオン隊がフライトジャケットを着用していること。
民間人の専門技術を持ったヒロインとの恋愛模様を描いている点。
ヒロインの容姿、同僚の死、エンディングでのヒロインとの再会……などといったことも含め、1986年に公開されたトム・クルーズ主演の大ヒット映画『トップガン』の影響が色濃く出ている。
ニュータイプやそれに関連する話題は劇中でまったく登場しない。
ジオン軍残党たちの思想面での発言も、ジオニズムの中の「スペースノイドの自主独立」という側面に限られ、「人の革新」という面は触れられない。
これは当時のサンライズのプロデューサーだった植田益朗氏の方針に基づくもので、ニュータイプという便利な超能力者を登場させてしまうと、それが作劇上安易に使われがちだからとのことである。
制作に先立ち、植田氏は富野由悠季氏から「ニュータイプ、ちゃんとやってよ」とリクエストされたものの、断っている。
1stガンダムとZの空白を埋める作品
「ガンダムシリーズ」には、いちいち細かい説明が入らない。
この人が誰で、どれくらい偉いのか?
どうしてこうなったのか?
そういう経緯を視聴者はまったくわからないまま物語が進行する。
『機動戦士ガンダム』が終了し、『機動戦士Zガンダム』が始まった時、その複雑すぎる人間関係と入り乱れまくった様々な組織模様に、理解がまったく追いつかず非常に戸惑ってしまった。
どうしてこうなったのかを教えてくれないからだ。
観進めるにしたがってだいたいはわかってくるのだが、物語の柱となるその根っこの部分は最後までわからずじまいであった。
そしてその謎を埋めてくれたのが本作であった。
本作を観ずとも概要くらいは把握できのだが、『機動戦士Zガンダム』をより深く理解するためにはマストの作品である。
ニュータイプが登場しないガンダム
「ガンダムシリーズ」には欠かすことのできない、ニュータイプの概念が描かれていないのが『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の特徴である。
主人公がニュータイプの素養を示さないというのは、ファンとしては物足りなさを感じなくもない。
だが、その分敵役の描写が非常に秀逸である。
ガンダムファンにとってはニュータイプの存在も大事だが、強いオールドタイプの存在も非常に重要なのである。
そういう意味で、本作における敵役のヒーローであるアナベル・ガトーの存在は、ニュータイプ不在の作品でも十分満足させるに足るものだった。
「ソロモンの悪夢」と恐れられたガトーが、「ソロモンよ、私は帰ってきた!」と叫び連邦を撃つシーンは、絶対に見逃せない本作屈指の名シーンである。
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』とは、「ガンダムシリーズ」で長年敵役とされてきたジオン軍にフォーカスした作品だったように思えてならない。
主要登場人物の登場は本作のみ
また本作の後の世を描いた『機動戦士Zガンダム』への繋がりが、敵役の方が強いことは特筆すべき特徴だろう。
もちろん主人公サイドの人間関係も『機機動戦士Zガンダム』へと受け継がれるのだが、それは組織上層部の話であって、本作の主人公サイドの主要登場人物はZには登場しない。
いや、Zだけでなく以降の「ガンダムシリーズ」にも一切登場しないのである。
逆に敵役の登場人物たちは、その名前や功績が後世まで語り継がれている。
そういう観点からも、本作が「ガンダムシリーズ」の敵役であるジオン軍を描いた作品ではないかと思えるのだが、果たして。
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場する主なモビルスーツ
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