コミック
機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画
『機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画』とは
『機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画』は、Ark Performanceの漫画作品。
原作は富野由悠季氏。
原案は矢立肇氏。
全4巻。
角川書店の漫画雑誌『ガンダムエース』にて2007年10月号から2010年3月号にかけて連載された。
アニメ『機動戦士ガンダム』の舞台である一年戦争末期、ジオン公国総帥ギレン・ザビ暗殺計画が存在した、という設定の下に、陰謀に関わった人々、当時のジオンの状況などを、終戦後ジオン本国に入った連邦軍の調査で発見された極秘資料、及び記録映像等を元に再構成したドキュメンタリー『 “一年戦争” 終戦20週年特別番組 ギレン暗殺計画 〜ジオン最後の一週間〜』(U.C.0100放送)の映像として描く。
機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画(1) (角川コミックス・エース)
機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画 コミック 1-4巻セット (角川コミックス・エース )
あらすじ
宇宙世紀0079年12月、サイド3で発生した要人爆殺テロ事件を捜査するジオン国家公安部捜査官レオポルド・フィーゼラーは、総帥府勤務の幼馴染みエリース・アン・フィネガンに呼び出され、謎のメモリーディスクを手渡される。
メモリーディスクの中身はレオポルドが専任捜査している連続爆破テロ事件の計画と関連データであった。
暗殺実行済を含む要人リストの最後にはジオン公国総帥ギレン・ザビの名前があった。
レオポルドは捜査を行う内に、ジオン公国内に潜む闇を垣間見る。
自身も謀殺されそうになりながらも要人暗殺実行犯であり、自分のかつての教官でもあるランス・ガーフィールド中佐の元へと辿り着くが、時既に遅く、ギレン・ザビとザビ家親衛隊主力部隊のズム・シティ不在の情報を得て、首都防衛大隊を中心とした反ザビ家のクーデターが勃発。
クーデター軍とズム・シティ残留のザビ家親衛隊との間で激しいコロニー内戦闘が繰り広げられる最中、レオポルドは総帥府のセシリア・アイリーンと面会する。
セシリアはこのクーデターの真の首謀者としてキシリア・ザビの名を挙げ、レオポルドにキシリアの逮捕を依頼するが、レオポルドは「ギレン暗殺計画」の首謀者 “レギンレイヴ” としてセシリア・アイリーン逮捕を告げる。
レオポルドを射殺しようとするセシリアだったが、そこへオレグ副首相が宇宙要塞ア・バオア・クーの陥落とギレン・ザビ総帥の戦死の報を伝える。
セシリアによる「ギレン暗殺計画」であぶりだされた反ギレン派を一掃する計画は、ここに水泡に帰した。
オレグ副首相は、クーデターを治め政治安定を取り戻すべく、ギレン戦死の報を携えアンリ准将への特使となることをレオポルドに依頼する。
その後
レオポルド・フィーゼラーはジオン共和国の下院議員として活躍。
エリース・アン・フィネガンは事件の三年後共和国に帰還し、その後フィーゼラー家の秘書官長として同家を切り盛りしている。
アンリ・シュレッサーは停戦直後、反乱首謀の容疑者として自ら出頭、その場で逮捕され軍法裁判で銃殺刑の判決を言い渡されるがジオン共和国復興による特赦により罪一等を減ぜられ終身刑となる。
その後の安否は不明。
セシリア・アイリーンは戦後参考人として連邦軍に引き渡され、その後の安否は不明。
フィーリウス・ストリーム、ガイウス・ゼメラ、バネッサ・バーミリオンは戦後偽名を使い、アナハイム・エレクトロニクスのテストパイロットとなった後グリプス戦役ではカラバに参加。
その後、連邦軍所属になった。
本作に登場する主な用語
ワルキューレ
語源はおそらくドイツ国防軍の国内予備軍が第二次世界大戦中に立案した国内予備軍の結集と動員に関する命令である「ワルキューレ作戦」であろう。
1944年7月20日のヒトラー暗殺未遂事件の際に起こったクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐らによるクーデターに利用された作戦として知られている。
作戦名はリヒャルト・ワーグナーのオペラ『ニーベルングの指環』に登場する北欧神話の女神ヴァルキューレに因んでいる。
本作での「ワルキューレ」とはギレン総帥暗殺を目論む秘密結社的組織のひとつ。
ネットワークを介して定期的に会合を開いており、“レギンレイヴ” によって統率されている。クーデター勃発に伴い、クーデター政権の樹立発表を名目として “レギンレイヴ” に招集され、初めてメンバーは顔を合わせたが、それはセシリア・アイリーン(総帥府)による画策であり、集まった反ギレン派の面々は全員射殺された。
レギンレイヴ
レギンレイヴ (Reginleif)とは、北欧神話におけるワルキューレの一人で、「神々の残された者」という意味を持つ。
本作では “ワルキューレ” の統率者的存在と目されている人物。
ギレンの行動スケジュールを示唆し、ギレンや高級官僚の暗殺計画をけしかける。
ジオン公国の台頭にも関与したと思われる謎の人物とされているが、元はザビ家が裏工作に使うコードネームで、ジオン公国建国の前後にはレオポルドの祖父ホト・フィーゼラーも “レギンレイヴ” として政治工作に利用していたことがある。
U.C.0079年現在は総帥府の管理下に移り、セシリア・アイリーンが反ギレン派を一掃するために利用した。
一年戦争終結直前のジオン公国
本作は一年戦争終結直前のジオン国内の様子が主に描かれている。
その状況下でザビ家の専横に異議を唱えた一部の人間により画策されたのが「ギレン暗殺計画」だった。
本作の面白いところは、同時にちゃんと『機動戦士ガンダム』の歴史も動いているところだ。
物語はソロモンが陥落したあたりから始まり、「ギレン暗殺計画」が実行に移される時は、ア・バオア・クー攻防戦が行われている真っ最中であった。
1stの歴史としっかりリンクしている。
あの激戦の裏でジオン本国では何が起きていたのかを知ることが出来る、ガンダム好きには非常に興味深い作品である。
ヒトラーの尻尾と評されたギレン
ガンダム好きなら覚えているだろう。
1stで戦争継続を謀るギレンは、停戦派の父であり公王のデギンに「ヒトラーの尻尾」と揶揄されている。
おそらくこのことを加味した上での、「ワルキューレ」と「レギンレイヴ」だろう。
前述した通り、「ワルキューレ」とはヒトラー暗殺計画時に使用されたオペレーションネームで、それに付随した言葉が「レギンレイヴ」である。
ネーミングひとつとってみても、実にガンダムらしい。
また、現実の歴史とガンダム史をしっかり継承し、関連付けているから本作は面白い。
本作を宇宙世紀正史扱いにしたいふたつの理由
キャスバル・レム・ダイクン
本作をガンダム正史扱いにしたい大きな理由のひとつに、シャア・アズナブルの素性がキシリアにバレたことが描かれていることが挙げられる。
アニメ同様、本作でもシャア=キャスバルが判明した有名シーンが描かれているが、あろう事かキシリアサイドはそれを盗撮し、その最重要極秘情報をギレン暗殺計画サイドに流している。
そのためジオン・ダイクンの忘れ形見の存在が、ギレン排除の大義名分となる。
これを正史と呼ばずに、何を正史とするのか。
ちなみに本作でのシャアの登場はこれだけ。
そういうマニアックなところが、イチガンダムファンとして本作に魅力を感じるところでもある。
グレミー・トト
本作をガンダム正史扱いにしたいと思った理由のもうひとつは、トト家についての描写があったからだ。
ガンダム好き以外にはキョトンだろう。
トト家とは、『機動戦士ZZガンダム』に登場するキャラクターであるグレミー・トトの家である。
そしてこのグレミー。
何と、ギレンの忘れ形見という設定なのだ。
しかしこんな大役にも関わらず、その事実だけ与えられ詳細は描かれていない。
なぜ?
いつから?
そういったことが何ひとつわからないのだ。
だが本作では、ほんの少しトト家について触れている。
なんならちびっ子のグレミーが登場している。
ファンとして、宇宙世紀史としっかり繋がるこの描写はとても嬉しかった。
一年戦争のみならず、第一次ネオ・ジオン抗争にまで関連付けられたら、本作を正史としないで何とする。
当然、個人的歴史認識で『機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画』は、すでに宇宙世紀正史扱いだ。
本作を未読のガンダムファンなら、是非読んでほしい。
知らなかったことや、意外な人物と繋がっていく本作は、今よりきっとガンダムの魅力の裾野を広げてくれるだろう。
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