アニメーション映画
機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
- 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』とは
『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』は、2022年6月3日に松竹系で全国公開されたガンダムシリーズのアニメーション映画。
監督は安彦良和氏。
Dolby Cinema(ドルビーシネマ)、4DX版も同時公開。
テレビアニメ『機動戦士ガンダム』第15話「ククルス・ドアンの島」の翻案である(冒頭にテロップが表示される)。
いわゆる「ファーストガンダム」の新作映画としては、1982年公開の映画『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』以来、およそ40年ぶりの劇場公開となった。
主題歌には森口博子さんが起用された。
キャッチコピーは「ガンダム、再び大地に立つ」「おかえり、ホワイトベース隊」「ガンダムよ、このザクを倒せるか。」。
2021年9月15日、バンダイナムコグループの「ガンダムプロジェクト」より、「第2回ガンダムカンファレンス」が開催され、実物大νガンダム立像の計画や『機動戦士ガンダム 水星の魔女』などと共に本企画が発表された。
当初、漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島』の映画化なのではないかと考察するファンも多かったが、「ガンダムエース」2021年12月号の安彦氏へのインタビューで否定された。
安彦氏は、本作を作ろうと考えて自ら提案したのはMSD版がきっかけと述べており、制作においてMSD版がヒントになった箇所もある。
テレビ版のエピソードでは子どもが4人登場するのに対し、本作では20人に増やし、ドアンが生活臭のあるより優しいキャラクターになるようにしたという。
また、安彦氏は本作に出演した古谷徹氏や武内駿輔氏との対談で「ガンダムの映像を作るのは本作が最後となる」とも述べている。
安彦氏はこのほか、これで「ファーストガンダムに思い残すことはなくなった」といい、映画ではテレビ版よりモビルスーツの活躍場面を増やしており、任侠映画でいえばガンダムは鶴田浩二氏、ククルス・ドアンのザクは池部良氏のイメージと語っている。
時系列は安彦氏による漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に準拠した設定となっており、ドアンのようなエピソードは厭戦気分が高まってからの話であるだろうと、ジャブロー戦とオデッサ戦の間に変更されている。
モビルスーツの設定も踏襲しているが、「THE ORIGIN」という名称は安彦氏が「つける必要もない」と判断したため作品名には入っていない。
キャストは同作のアニメ版のものが反映されている。
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あらすじ
宇宙世紀0079年(U.C.0079)、地球連邦軍は自治権を求めるジオン公国との戦争に突入し、世界総人口の半分が消失するほどの激戦を繰り広げていた。
本部であるジャブローへの奇襲を辛くも切り抜けた連邦軍や、戦いに巻き込まれたアムロたちホワイトベースの面々は、ジオンの地球進攻軍本拠地であるオデッサを目指していた。
その最中、ジオンの反撃に際して万全を期すための補給を受けるため、ベルファストを経由することに決めたホワイトベースのもとへ突然、「無人島・アレグランサ島の残敵を叩け!」という内容の指令が下る。
モビルスーツ隊が調査を始めると、その島には謎の子供たちが暮らしており、さらには1機のザクが潜伏していた。
旧型とは思えない動きのザクとの戦闘に苦戦し、ガンダムは崖の崩落に巻き込まれてアムロは気を失ってしまう。
アムロが目を覚ますと、そこにはククルス・ドアンという謎の大男と子供たちの姿がいた。
アムロは島でドアンや子供たちと生活を共にしながら、ドアンによって隠されたガンダムを探すため、島をあてもなく捜索する。
だがその頃、ホワイトベースでは調査任務の打ち切りと出航が命じられる。
さらに、ジオン軍の精鋭モビルスーツ部隊サザンクロス隊が、島の秘密に関わる任務のため島へと派遣される。
サザンクロス隊は、かつてドアンが所属し隊長を務めていた隊であり、現隊長であるエグバ・アトラーは脱走したドアンをひどく憎んでいた。
ガンダムを探すアムロは、崖下で「ドアンの地下ドック施設」を見つけ、そこで「ガンダムのパイロットとなり島を守りたい」という少年マルコスと取っ組み合いになる。
だが、その後にアムロが教会の電気を直したことから子供達に感謝され、マルコスとも和解する。
そんな中、アムロ捜索に再上陸したホワイトベース隊と、サザンクロス隊が戦闘を開始する。
ドアンは、彼らを島から退けるべく旧型ザクに乗り込み、高機動ザクをも上回る操縦技術を見せ、次々に元同僚たちを駆逐していく。
一方、アムロもガンダムに乗り込み、地下ドックに侵入したサザンクロス隊の別動隊を撃破する。
隊長機のエグバによって、片腕を破壊され追い込まれたドアンだったが、そこにアムロの駆るガンダムが現れ、ガンダムのビームサーベルによって倒される。
その直後、地下に隠されていたジオン軍の弾道ミサイルが発射されるが、ドアンの事前の工作によってミサイルは自爆される。
「ドアンとアムロがいれば戦争なんて怖くない」とはしゃぐ子供たちに、ドアンは「戦争は怖いものだ」と諭す。
そんなドアンに、アムロは「あなたの身体に染み付いている戦争の匂いが、戦いを引き寄せるんじゃないでしょうか? それを消させてください」と告げ、ガンダムでザクを海中に沈めてしまう。
アムロ達の乗ったホワイトベースは、当初の予定どおり補給を受けるため、ベルファストへと飛び立つ。
主題歌
- 「Ubugoe」
森口博子さんによる主題歌。
作詞は松井五郎氏、作曲はdoubleglass、編曲は冨田恵一氏。
本作の監督である安彦良和とは
安彦良和氏は漫画家、アニメーター、キャラクターデザイナー、アニメ監督、イラストレーター、小説家。
キャラクターデザインおよび作画監督を務めたアニメ『機動戦士ガンダム』は、その後放映された劇場版とも併せ社会現象ともいえるブームを巻き起こし、2022年の時点でも根強い人気を誇る。
1990年以降、アニメ製作現場を離れて専業漫画家となり、『ナムジ』『虹色のトロツキー』『王道の狗』など主に歴史ものを描いて第19回日本漫画家協会賞優秀賞(『ナムジ』)、第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(『王道の狗』)などを受賞した。
2001年から2011年まで漫画雑誌「ガンダムエース」で連載した『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は、累計発行部数1,000万部を超えるヒット作となり、同作のアニメ化作品『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』(2015年2月公開)では総監督を務め、約25年ぶりにアニメの現場に復帰した。
『機動戦士ガンダム』時代の安彦良和
1979年4月から放映された『機動戦士ガンダム』ではキャラクターデザインおよび作画監督を務めた。
だが殺人的なスケジュールの中で超人的な仕事量をこなして安彦氏は、テレビシリーズ制作中に病気(肋膜)で5か月ほど入院。
おかげで全43話中最後の10話には参加していない。
その後、映画化された際に、この10話を含めた修正を行ったという。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』とは
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は、矢立肇・富野由悠季(原案)、安彦良和(漫画)による漫画、及びOVA・テレビアニメ。
本作はテレビアニメ『機動戦士ガンダム』においてアニメーションディレクター、キャラクターデザイナー、メカニカルデザインのクリーンナップなどを務めた安彦良和氏による、同作のコミカライズ作品である。
テレビアニメ版を原典としており、劇場版でカットされたルナツー攻防戦やセント・アンジェのエピソードなども描かれている。
また、原典での見せ場や決め台詞などの多くを作中で再現している一方、執筆時点の現実的視点からすると不自然であったり、現実世界の変化に合わなくなったりした設定などの変更、新規キャラクターの追加、既存キャラクターの設定見直しが行われている。
あえて言おう!
本作はガンダムであってガンダムではないと!!
熱烈なガンダムファンだからこそ…
ガンダムが大好きだ。
大のガンダムファンであり、いつの日かガノタ(ガンダムヲタクの略)と呼ばれる日を夢みている。
安彦良和氏の漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』も全巻持っているし、アニメも観た。
だからこそあえて言おう。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の存在
本作を語る上で避けて通れないのが『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の存在である。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を理解しないまま、本作をただ『機動戦士ガンダム』のスピンオフ作品だと勘違いして視聴すると違和感だらけになるだろう。
前述した通り、本作はテレビアニメ『機動戦士ガンダム』第15話「ククルス・ドアンの島」(オリジナル)の翻案であるが、設定は似て非なるもの。
時系列が違えば、「ククルス・ドアンの島」がある場所も違う。
その他、ありとあらゆる設定がオリジナルとは別ものである。
本作を視聴する上で、まずこのことを理解する必要がある。
それでも頭をよぎるオリジナルとの違い
漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を読んでいるから、この手の設定変更には慣れっ子だ。
しかしそれでも本作への違和感は拭いきれなかったと言わざるを得ない。
そもそもオリジナルにおけるテレビアニメ『機動戦士ガンダム』第15話「ククルス・ドアンの島」とは、放送の順番を入れ替えられるようなサブエピソードである。
いわばスケジュール調整用のエピソードである。
それが単独で劇場版になることも大いなる違和感だが、その設定があまりに仰々しくなっていることに大きな違和感を覚えた。
スレッガーの無駄遣い
いまだに根強い人気を誇るガンダム名物脇役のスレッガー・ロウ中尉。
軍人然としならがらも自由奔放なこのスレッガーは、オリジナルの「ククルス・ドアンの島」では登場しない。
理由は時系列が組み替えられているためだが、そのことは否定しない。
しかしスレッガーはガンダムシリーズでは稀有の存在である、おちゃらけ伊達男キャラだ。
それが本作ではどうにも安売りされているようで、なんだか許し難い気持ちになった。
あえて言おう!
演出が古臭いよ、安彦良和
ドアンの大ピンチに颯爽と登場するRX-78-2
物語の最終盤。
ドアンは元同胞の攻撃で大ピンチに陥る。
実に爽快なシーンであり、実に古臭い演出と言わざるを得ない。
勧善懲悪を善しとする旧態依然臭がプンプンだ。
『機動戦士ガンダム』とは、そもそも旧態依然とした勧善懲悪を否定したことで人気を博した作品である。
戦争に良いも悪いもない。
お互いがお互いの主義主張のために戦っているからだ。
そのことを忠実にアニメという子供向けコンテンツに落とし込んだのが『機動戦士ガンダム』という作品だった。
要するにガンダムはヒーローではない。
ただの兵器なのである。
そのガンダムを古臭い昭和のヒーローのように仕立ててしまったことは、ガンダムの根幹を否定した悪しき演出であったと言わざるを得ない。
ガンダムって子供向けアニメーション?
「ククルス・ドアンの島」では多くの子供たちがドアンと共に和気藹々と暮らしている。
彼らは皆、戦災孤児である。
オリジナルでは彼らを戦災孤児にしたのはドアン自身でもあった。
そんな境遇だから、心を開かない子供がいても何ら不思議はない。
その方がむしろ自然だ。
しかし本作では、戦災孤児である子供たちのなんと朗らかなことか…。
それはさながら昭和の理想的な家族像でも見せられているようであった。
しかもその尺が長い。
何度も言うが、『機動戦士ガンダム』とは戦争を現実的に描いたリアルロボットアニメである。
語弊があるかもしれないが、ガンダムとはけっして子供向けのアニメではないのだ。
子供たちが朗らかに和気藹々と暮らすシーンは、ガンダムの理念から逸脱するような、正直本気でガッカリさせられた描写であった。
面白い?面白くない?
結論からいえば、ガンダム作品としては面白くなかったと言わざるを得ないだろう。
すぐに再視聴したいとは思わないし、これから先も二度目があるかどうか…。
タイミングが合えば観るかもね…という程度。
ただガンダムという大看板を外したなら、観れなくはない作品。
またガンダムファンなら一度は観ておくべき作品だともいえる。
人によっては面白いと感じるだろうし、名作・傑作としてガンダム史に語り継がれるかもしれない。
だが個人的には残念な作品。
あの安彦良和氏が監督ということで期待し過ぎたか?…
良かったところだってあるよ!
格好良くブラッシュアップされたモビルスーツ美麗な映像美
散々こき下ろしておきながら今さらいえた義理ではないが、良いところもあったことは事実。
特にデザインがブラッシュアップされたモビルスーツは実に格好良く描かれていた。
オリジナルにはなかった装飾も多く見られ、この点に関してだけいうなら非常にリアリティを感じることができた。
それが非常に美しい映像で観ることができる。
なかでもモビルスーツ戦は圧巻のひと言。
作画崩壊が酷かったオリジナルを思えば、格段の進歩を感じることができたことは、ガンダムファンにとって喜ばしいことである。
時系列を組み替えたことが功を奏した
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』ならではの名描写
本作はオリジナルの時系列を組み替えて制作されている。
よってオリジナルでは起こらなかったことが起こり得る。
それがマ・クベとゴップの登場である。
本作はオデッサ攻略戦の前日譚に位置し、本隊では高度な政治的駆け引きが繰り広げられていた。
特にオリジナルでは卑怯者の烙印を押されてしまったマ・クベだが、実は『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』ではなかなかの人物として描かれている。
ゴップもえも知れぬ大物感を漂わせており、この二人の駆け引きは本作で唯一のガンダムらしさを感じることができるシーンだ。
ガンダムファンならこの二人の騙し合いに。テンションが上がること請け合いだ。
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