其の二十四
美しき日本語の世界。
雨を表す美しい日本語
雨の季節。
小雨もあれば大雨も。
日本語には、ほかにも雨を表す情緒的な言葉が多く存在している。
そんな美しい日本語を集めてみた。
雨を表現する言葉…こんなにたくさんあるのだ。
緑雨(りょくう)
新緑の季節に降る雨。
緑は木々の葉など植物を表している。
「翠雨(すいう)」「青葉雨(あおばあめ)」も同じ意。
黒雨(こくう)
空が黒くなってしまうほど降る大雨。
紅雨(こうう)
花に降りそそぐ春の雨。
赤い花が散る様子を雨に例えて呼ぶことも。
白雨(はくう)
夕立、にわかに降りやむ雨。
俳句の世界では、「ゆうだち」と読むことも多い。
春に降る「春雨(はるさめ)」や、夏の夕方に特に多い「夕立(ゆうだち)」。
霧のように細かい「霧雨(きりさめ)」、降ったりやんだりする「時雨(しぐれ)」など、いずれも雨を表す言葉で季語にもなっている。
四季で雨の表現があるということがわかる。
ここまでは色を使って表す〝雨の言葉〟にフィーチャーしてみた。
ここからは一般的にはなじみの薄い〝雨の言葉〟をピックアップしてみよう。
甘雨(かんう)
しとしとと、植物を育てる春の雨。
恵みの雨「慈雨(じう)」とも。
桜雨(さくらあめ)
空桜の花が咲くころに降る雨。
涼雨(りょうう)
涼しさが感じられるような夏の雨。
洗車雨(せんしゃう)
7月6日に降る雨。
七夕の前日、ひこ星が織り姫との逢瀬に使う牛車を洗うことで降る雨と言い伝えられています。
洒涙雨(さいるいう)
7月7日、七夕に降る雨。
ひこ星と織り姫が別れを惜しむ、または会えずに悲しむ雨。
涙雨(なみだあめ)
ほんの少しだけ降る雨。
また、悲しみの涙が変化して降るような雨とも。
月時雨(つきしぐれ)
月明かりの夜に通り過ぎていく時雨。
雪解雨(ゆきげあめ)
雪を解かす春先の雨。
袖傘雨(そでがさあめ)
袖を笠(かさ)にしてしのげるほどの小雨。
肘傘雨(ひじがさあめ)
笠をかぶる間もなく急に降りだす雨。肘を頭上にかざしてかさ代わりにすることから。
天泣(てんきゅう)
空に雲が見えないのに降る雨。
雨を表す日本語は、文化や故事が元になっていることが多いのだ。
近年になって天気予報でよく耳にする突然の大雨「ゲリラ豪雨」も、和名では「鬼雨(きう)」と表現する。
日本は雨が多い。
雨をうっとうしく感じてしまうからこそ、名前をつけて楽しんだり、一日限定の言葉で季節を感じたり。
言葉で気持ちを切り替えて雨を愛おしく慈しみ、楽しめるようにしたのではないだろうか。
このように、雨を好意的にとらえたい文化や歴史が、言葉を作ってきたのだろう。
「ざーざー」や「ぽつぽつ」というオノマトペ(擬声語、擬態語)も非常に面白いのだが、音のない「しとしと」も感覚的に理解できるのは、心や時間にゆとりがあるからこそ。
また、その音を感じることで心や時間にゆとりを持とうとしたのだろう。
正月三が日に降る雨や雪をさす「おさがり」や、雷を伴うにわか雨の「神立(かんだち)」など、空に神様がいるような感覚も独特だ。
季節や降り方によって変わる雨の言葉。
今降っている雨にいろいろな名前が付いていると思えば、憂鬱に思われがちな雨も違って見える。
そして彼女はふわっと笑った
泣き笑い
それはまるで天気雨のように
キラキラ輝いていた
『あ、安部礼司 ~BEYOND THE AVERAGE~』より
言えなかった言葉たちが
地上に雨を降らせる
そうして僕たちは
それを傘でしのいでいる
『あ、安部礼司 ~BEYOND THE AVERAGE~』より
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