「今年の漢字」の移り変わりがこの国の失われた月日を物語る
「今年の漢字」とは
「今年の漢字」は、漢字(日本語漢字)一字を選びその年の世相を表す字であるとして決定、公表する日本漢字能力検定協会のキャンペーンである。
1995年(平成7年)に開始し、原則として毎年12月12日に発表される。
公益財団法人日本漢字能力検定協会が、その年をイメージする漢字一字の公募を日本全国より行い、その中で最も応募数の多かった漢字一字を、その年の世相を表す漢字として、原則としては12月12日の「漢字の日」の午後に京都府京都市東山区の清水寺で発表することになっている。
ただし、当日が週末(土日)だった場合は発表されず、その日の前後に発表される。
選ばれた漢字を「今年の漢字」と呼ぶ。
各メディアでも、「今年の漢字」の呼称が用いられる。
「今年の漢字」の移り変わり
目まぐるしく通り過ぎていく日常。
日々の忙しさと心の余裕の無さで視野は極端に狭まり、目の前のことしか見えなくなる。
毎年恒例の「今年の漢字」も、"今年" のこと以外誰も興味を持たない。
いや、興味を持てないと言った方が正確か。
どうして我々の心はそれほど余裕が無くなってしまったのか?
その年の世相を反映した「今年の漢字」を振り返ってみると、その答えがみえてくるような気がする。
2023年:「税」
生活に直結する増「税」・減「税」の動向が注目された1年。
国民の不安や期待が錯綜した。
防衛力強化に必要な財源をまかなうため、法人「税」、所得「税」、たばこ「税」の3つの「税」目での増「税」に関する議論が行われた。
賛否両論がある中、増「税」されるのではないかと多くの国民が不安に感じた結果、147,878票の応募の中で、「税」が5,976票(4.04%)を集めて、2014年以来2度目の1位となった。
2022年:「戦」
ロシアのウクライナ侵攻により、「戦」争の恐ろしさを目の当たりにした1年。
円安・物価高による生活上での「戦」い、スポーツでの熱「戦」・挑「戦」も注目された。
応募者が「戦」を選んだ理由としては、ウクライナ侵攻・北朝鮮の相次ぐミサイル発射などによる「戦」争を意識した年であったこと、円安・物価高・電力不足や感染症など生活の中で起きている身近な「戦」いがあった年であること、サッカーW杯や北京冬季五輪での熱「戦」、野球界での記録への挑「戦」などが挙がった。
そんな世相が反映されて223,768票の応募の中で、「戦」が10,804票(4.83%)を集めて、2001年以来2度目の1位となった。
2021年:「金」
長く暗いコロナ禍において開催された東京オリンピック・パラリンピックでの日本人選手の活躍や、各界で打ち立てられた「金」字塔がひときわ輝くニュースとなった年。
東京オリンピック・パラリンピックで日本人選手が多数の「金」メダルを獲得。
大谷翔平選手の大リーグMVPを満票で受賞、松山英樹選手の日本人初のマスターズ制覇、藤井聡太棋士の最年少四冠達成など、各界で打ち立てられた「金」字塔がひときわ輝くニュースとなった年に。
そんな世相が反映されて223,773票の応募の中で、「金」が10,422票(4.66%)を集めて2016年以来5年ぶり4度目の第1位となった。
2020年:「密」
"三「密」" という言葉が提唱され、生活・行動様式が「密」にならないよう国民が意識し続けた。
海外でも3C (Crowded places, Close–contact settings, Confined and enclosed spaces)としてメッセージを発信されるまでに。
また、政治判断が「密」室で行われたことや芸能界での「密」会報道などでも使われた年。
そんな世相が反映されて応募20万8,025票の中から2万8,401票(13.65%)を集めて、「密」が1位に。
2019年:「令」
新元号「令」和に新たな時代の希望を感じた一年。
「令」和が日本最古の歌集・万葉集からの出典で、海外にBeautiful Harmony=美しい調和と説明されたことや、「令」の字が持つ意味・書き方にも注目が集まった。
また、法「令」改正、法「令」順守、警報発「令」、避難命「令」としても使われた年。
2019年の世相を表す漢字一字とその理由を全国から募集した結果(21万6,325票)、「令」が1位となった。
2018年:「災」
北海道・大阪・島根での地震、西日本豪雨、大型台風到来、記録的猛暑など、日本各地で起きた大規模な自然「災」害により、多くの人が被「災」した。
自助共助による防「災」・減「災」意識も高まり、スーパーボランティアの活躍にも注目が集まった。新元号となる来年に向けて、多くの人が「災」害を忘れないと心に刻んだ年。
そんな世相が反映されて193,214票の応募の中で、「災」が20,858票(10.80%)を集めて1位となった。
2017年:「北」
2017年は、「北」朝鮮ミサイルの「北」海道沖落下や九州「北」部豪雨などの災害から、平和と安全の尊さを実感した年。
度重なる弾道ミサイルの発射や核実験の強行など、「北」朝鮮の動向に脅威と不安を感じた。
九州「北」部では記録的豪雨により甚大な被害が発生。
また、「北」海道産ジャガイモの供給が滞ったことによりポテトチップスが一時販売休止になった。
球界では、大谷翔平選手の大リーグへの移籍や、早稲田実業高校の清宮幸太郎選手の入団など、「北」海道日本ハムファイターズに注目が集まった。
競馬界では、「キタ」サンブラックが現役最強馬として大活躍。
また、葛飾「北」斎の展覧会が話題に。
そんな世相が反映されて153,594票の応募の中で、「北」が7,104票(4.63%)を集めて1位となった。
2016年:「金」
2016年は、リオ五輪に沸き、東京五輪に希望を託した「金」(キン)と、政治と「金」(カネ)問題に揺れた年。
スポーツ界に新たな金字塔、マイナス金利初導入、シンガーソングライターの金色衣装などにも注目が集まった。
そんな世相が反映されて153,562票の応募の中で、「金」が6,655票(4.33%)を集めて1位となった。
2015年:「安」
2015年は、世界の平「安」と暮らしの「安」全について考えた年。
「安」倍政権の下、「安」保法案の採否をめぐり国論が二分し、賛成派も反対派も国会周辺や各地でデモや集会を実施。
戦後70年の節目を迎えた年でもあり、これからの国の平「安」について改めて深く考えさせられた1年だった。
また、マンションの杭打ちデータの流用問題で、住環境に対する不信感や不「安」が募った。
海外自動車メーカーの排ガス規制違反やワクチン製造にかかる不正など、暮らしに密着したものの「安」全性を揺るがす事件が続いた。
海外では、イスラム過激派組織による邦人人質事件、パリで起きた同時多発テロなど、世界中で人々の「安」全が脅かされる事態が続く。
また、地球規模の異常気象により世界各地で災害が起こるなど、人々を不「安」にさせた。
戦後70年の節目に当たり、激動する日本国を守るための安保法案が採択され、今後我々国民が安心して生活できることを願い、安心の「安」が選ばれた。
2014年:「税」
2014年は「税」に直面して、「税」について考えさせられた年。
2014年4月、消費税率が1997年以来17年ぶりに5%から8%に引き上げられた。
消費税率アップを前に多くの生活者は日用品などの消費財の買いだめや自動車・家電などの高額商品の駆け込み消費を行った。
消費税が8%になってからは、日用品や電車・バス・タクシー運賃、電気・ガス・水道など公共料金も実質値上がりし、家計への負担が増加、国民生活に大きな影響を及ぼすこととなる。
経済負担の増加を目の当たりにし、生活者の金銭感覚は一層シビアに。
税について考えさせられる1年となった。
消費増税に「家計を直撃」「ずっしりと負担」の声が反映されて、167,613票の応募の中で、「税」が8,679票(5.18%)を集めて1位。
2013年:「輪」
2013年は「輪」を喜び、「輪」の大切さを感じた年。
日本全体のチームワーク=「輪」で2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催、富士山の世界文化遺産登録、サッカーFIFAワールドカップ2014に日本代表の出場が決定。
日本に再び五輪がやってくるという意味で、1位は「輪」(9,518票/5.59%)が選ばれた。
2012年:「金」
2012年は「金」にまつわる出来事が、記憶と記録に残った年。
「今年の漢字」は258,912票の応募の中で、金環日食、金字塔、金の問題(年金資産運用に関連した詐欺事件、生活保護費の不正受給問題、消費税増税を中心とした財政問題、東日本大震災の復興予算の使途をめぐる問題)などが反映された「金」が、9,156票(3.54%)を集めて1位となった。
2011年:「絆」
2011年は、未曽有の災害により、「絆」の大切さを知った年。
日本国内では、東日本大震災や台風による大雨被害、海外では、ニュージーランド地震、タイ洪水などが発生。大規模な災害の経験から家族や仲間など身近でかけがえのない人との「絆」をあらためて知る。
人と人との小さなつながりは、地域や社会などのコミュニティだけでなく、国境を越えた地球規模の人間同士の「絆」へ。
SNSをはじめとするソーシャルメディアを通じて新たな人との「絆」が生まれ、旧知の人との「絆」が深まった。
また、国際社会ではいくつもの民主化運動が起こった。
一方、ワールドカップで優勝した、なでしこジャパンのチームの「絆」には日本中が感動し勇気づけられた。
そんな世相が反映されて496,997票の応募の中で、「絆」が61,453票(12.36%)を集めて1位となった。
「税」と「金」の選出の多さがこの国の失われた月日の長さを物語る
例えば、オリンピックなどスポーツの祭典が行われた年の「金」(キン)という字には比較的良い印象を受ける。
しかしそれは大きな勘違い。
我々は日々の苦しみから目を背けたいばかりに、「金」(キン)という字に勝手に希望を見出しているだけなのである。
当然のことながら、「金」(キン)の読み方を変えれば「金」(カネ)になる。
「金」(カネ)という字自体に悪いイメージはないが、「今年の漢字」に選ばれる「金」(カネ)となると話は変わる。
世相を反映する「金」(カネ)となれば、およそ汚いイメージがつきまとう。
それはなぜか。
それは取りも直さず、この国の政治の腐敗が顕著だからだろう。
今から30年前、1990年の東京証券取引所は1月4日の「大発会」からいきなり200円を超える下げを記録した。
1989年12月29日の「大納会」でつけた史上最高値の3万8915円87銭から、一転して下げ始めた株式市場は、その後30年が経過した今も史上最高値を約4割ほど下回ったまま。
長期的な視点に立てば、日本の株式市場は低迷を続けている。
その間、アメリカの代表的な株価指数である「S&P 500」は、過去30年で約800%上昇。
353.40 (1989年末)から3230.78 (2019年末)へと、この30年間でざっと9.14倍に上昇した。
かたや日本は1989年の最高値を30年間も超えることができずに推移している。
この違いはいったいどこにあるのか……。
そしてその責任はどこにあるのか……。
日本は失われた40年を歩むことになるのか
この30年、確かに株価は上がらなかったが、極端に貧しくなったという実感も少ない。
政治は一時的に政権を明け渡したものの、バブル崩壊の原因を作った自民党がいまだに日本の政治を牛耳っており、日本のあらゆる価値観やシステムの中に深く入り込んでいる。
バブルが崩壊した原因やその責任を問われぬまま、失われた30年が過ぎてきた。
自民党政権がやってきたことを簡単に総括すると、景気が落ち込んだときには財政出動によって意図的に景気を引き上げてリスクを回避し、その反面で膨らむ一方の財政赤字を埋めるために消費税率を引き上げ、再び景気を悪化させる……。
そんな政治の繰り返しだったと言っていい。
2012年からスタートしたアベノミクスでは、財政出動の代わりに中央銀行である日本銀行を使って、異次元の量的緩和という名目で、実際は「財政ファイナンス(中央銀行が政府発行の国債を直接買い上げる政策)」と同じような政策を展開してきた。
政府に逆らえない中央銀行総裁が登場したのも、日本経済の「失われた20年、30年」と無縁ではないだろう。
実際に、近年の日本の国際競争力の低下は目に余るものがある。
生産能力は低下する一方であり、加えて少子高齢化が顕著になってきている。
新しい価値観をなかなか受け入れない国民や企業が蔓延し、失われた30年が過ぎたいま、日本はこれから失われた40年、あるいは失われた50年を歩き始めているのかもしれない。
とはいえ、失われた40年を歩き始めたかもしれない日本にとって、今後は失われただけでは済まないだろう。
日銀には一刻も早く、金融行政を適正な姿に戻し、株式市場も適正な株価形成のシステムに戻すことが求められている。
自民党が避けてきた「最低賃金の大幅上昇」や「積極的な円高政策」といった、これまでとは真逆の政策に踏み切るときが来ているのかもしれない。
そして、政府は財政赤字解消に国会議員の数を減らすなど、目に見える形で身を切る改革をしなければ、今度は「崩壊する10年」になる可能性が高い。
残念なことに、日本のメディアは日本の技術が素晴らしいとか治安が優れているなど、数少ない日本の長所をことさらにクローズアップして、日本が世界をリードしているような錯覚を毎日のように国民に与え続けている。
そして国民は、そのミスリードを何ひとつ疑うこともなく信じ込んでいる。
国民が目を覚まさない限りは、「崩壊する10年」への流れを止めることはできないだろう。
微増があってこその現状維持。
減る一方の現状ではジリ貧だということに、多くの国民は気づかなければいけない。
日本疲弊す。
此れ誠に危急存亡の秋なり。
今在るこの国の政治家は当てにならない。
我々の未来は、我々が自分たちの手で勝ち取るしかないのだ。
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