Netflixドキュメンタリー
ポップスが最高に輝いた夜
※本稿にはネタバレを含みます。ご注意下さい。
世界にもう一度「We Are The World」を…奇跡の名曲が生まれた瞬間
Netflixドキュメンタリー『ポップスが最高に輝いた夜』とは
ドキュメンタリー映画『The Greatest Night in Pop』が、『ポップスが最高に輝いた夜』の邦題でNetflixより配信。
本作は、1985年1月25日の夜にライオネルを含む45人の音楽界のスーパースターが集結して行われた「We Are The World」のレコーディングの舞台裏に迫るドキュメンタリー。
これは当時、アフリカの飢饉救済のためにマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーが計画したもの。
彼らが制作した楽曲「We Are The World」を歌ったのは、スティーヴィー・ワンダー、ボブ・ディラン、シンディ・ローパー、ブルース・スプリングスティーン、スモーキー・ロビンソン、ディオンヌ・ワーウィック、ヒューイ・ルイスら名だたる超大物ミュージシャンたち。
本作では計画の初期段階からレコーディングの舞台裏までを未公開映像とともに振り返る。
たった一晩で行われたレコーディングでは事件続出!?
一癖も二癖もあるスーパースターたちが起こした珍騒動と感動秘話とは?
奇跡の一夜の知られざる真実!
プリンス不在の真相も!
監督は、ブルース・リーのドキュメンタリー 『Be Water』で知られるバオ・グエンが務めた。
本作公式あらすじには、参加アーティストたちが「自分たちのエゴを取り払い、アフリカ飢饉救済のために、世界のポップ・カルチャーの歴史を変えることになった楽曲のレコーディングに取り組んだ。"ポップスが最高に輝いた夜" には、この曲の企画と作曲の過程、そしてレコーディングが行われたヘンソン・スタジオの未公開映像が含まれている」と記されている。
「We Are The World」とは
「We Are The World」は、1985年に飢餓に苦しむアフリカを救うために制作された楽曲で、多くの著名なアーティストが参加している。
メンバーには、マイケル・ジャクソン、スティービー・ワンダー、 ブルース・スプリングスティーンなどが名を連ねる。
作詞・作曲はマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーが共作で行い、プロデュースはクインシー・ジョーンズが担当し、米国の代表的な歌手たちがノーギャラ※で歌った。
1985年当時、アメリカ国内だけでシングル400万枚、アルバム300万枚を売上。
最終的にはアメリカだけで800万枚のシングル(7インチと12インチの2形態)が売れ、全世界では2,000万枚以上の売上を記録している。
シングル・アルバム・ビデオ、さらにはトレーナーやTシャツなどの関連グッズも含めて合計で6,300万ドルの収入となり、これらによるすべての印税がアフリカの飢餓と貧困層解消のためにチャリティーとして寄付された。
※ノーギャラ
オールチャリティといわれているが、一通り活動が終わった後に参加者に24金のピンバッジが配られたと、当時(85~86年頃)のホール&オーツの雑誌インタビュー(FM STATION)の中で語られている。
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奇跡の名曲が生まれた瞬間
アメリカで800万枚、全世界では2,000万枚以上のシングル売り上げ、日本でも年間洋楽ランキングで1位を獲得している押しも押されもせぬ世界的大ヒット曲「We Are The World」。
だが、数字だけでは時代を覆った熱量までは伝わってこない。
たとえば同じく1985年にリリースされたおニャン子クラブの大ヒット曲「セーラー服を脱がさないで」のセールスが25万枚と聞かされても、1990年代のミリオンセールス連発時代を経た今ではその時代の熱狂が感じ取れないのと一緒である。
アメリカを代表する45名のスーパースターたちが集まり収録され、1985年4月5日に世界中の8,000以上ものラジオ局で世界一斉同時オンエアされた、このチャリティーソングがまとっていた数字には現れない圧倒的な熱量。
本作では当時の熱量そのままに、この奇跡的な一曲がどのようにして出来上がったかを、経緯から収録当日の異様な高揚感、参加アーティストの人間模様に渡るまでを多面的に描いている。
直前の機材トラブル。
通常なら一堂に会することのないスーパースターたちが集まる高揚と緊張感。
その中でプライドを傷つけられたスターの物語など、観ているだけでヒリヒリしてくる。
さらには招聘されたアーティストの心情。
マイケルの献身的努力、意外と仕切るスティーヴィー・ワンダー、かなり戸惑っているボブ・ディラン…。
現在のブルース・スプリングスティーンやシンディー・ローパーらが振り返るコメントも心に沁みまくる。
そしてそんなスーパースターたちをまとめ上げなければならないプロデューサー・クインシー・ジョーンズの重責は、想像しただけでも胃が痛くなる。
だが、一番印象的なのはやはり時代を覆う圧倒的な熱量だ。
「We Are The World」の参加アーティストが活躍したのは著者よりも上の世代で、だから全員をちゃんと知っているわけではない。
そんな世帯違いでも知っている超大物アーティストたちが、レーベルを超えて、たったひとつの目標に向かって手を取り合う。
かのスティーブ・ジョブズが自らレーベルを説得したiTunes Music Storeは音楽業界に革命をもたらしたが、その革命の際には音楽業界から痛烈な反対を受ける。
レーベルの垣根を越えるということは、アーティストにとって、それほど大変なことなのだ。
しかもそれが営利目的ではなく、チャリティーだというんだからアメリカの懐はやはり深い。
本作を観れば、なぜ「We Are The World」が規格外の奇跡の楽曲なのかがきっとわかるだろう。
さらには、これまでこれが当然のように感じていたあの歌唱順が、どれほど奇跡的な順番だったのかもわかるはずだ。
本作に収められた当日のレコーディング風景には、ビッグネームたちの素顔がたっぷり映し出され、1980年代ポップスを少しでも好きな人は感涙モノである。
世界にもう一度「We Are The World」を…
紛争やテロ、難民などの問題、国際協力の不足、利害や歴史的な対立、宗教の違い、貧困と格差、政治的な不安定などにより世界情勢が悪化の一途を辿る今。
日本国内でもグローバル格差、変容する社会、日米の労働市場、日本株上昇の必然、日米同盟の行方、製造業の未来など、様々な問題を抱えている。
そんな世界で生きる我々には、希望の象徴が必要だ。
団結の象徴が必要だ。
だからこそ、世界にもう一度「We Are The World」の精神が必要なのだ。
元々「We Are The World」は戦争ではなく、アフリカの飢餓と貧困問題の解消を目的として作られた曲だが、テーマが飢餓・貧困であれ、戦争であれ、また環境保護のようなその他のグローバルな課題であれ関係ない。
なぜなら「We Are The World」は、命を大切にすることと、すべての人が幸せであることを願うという普遍的なメッセージを伝えているからだ。
「We Are The World」に込められた平穏で幸せな生活の祈りが、届くべき場所へちゃんと届き、平和な世界が実現することを心から願いたい。
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