アニメーション映画
ジョゼと虎と魚たち
『ジョゼと虎と魚たち』とは
『ジョゼと虎と魚たち』は、田辺聖子先生の短編恋愛小説、及び本作を表題作とする短編集。
「月刊カドカワ」1984年6月号に発表、角川書店より1985年3月27日刊行の同名短編集に収録された。
足が悪いためにほとんど外出をしたことがないジョゼと、大学生・恒夫との純愛を描くラブストーリー。
2003年に実写映画化され、2020年には韓国で実写映画がリメイクされている。
また、同じ2020年には原作小説から新しく脚色した劇場アニメ版が公開。
劇場アニメ版は同タイトルでコミカライズ、および再ノベライズ化されている。
アニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』
タムラコータロー監督により映画化された、長編アニメーション作品。
2020年12月25日、全国150館で公開。
略称は「ジョゼ虎」。
実写映画版のリメイクではなく、短編である原作小説を基に制作されている。
先行作品とは結末含め、全く違うアプローチで脚色されているのが特徴。
主演は中川大志氏と清原果耶さん。
主題歌と挿入歌はともにEveが担当。
脚本はアニメーション作品初参加の桑村さや香さん。
絵コンテは監督のタムラコータロー氏が一人で手掛けた。
制作はボンズ。
同社においてTVシリーズと関連のない独立した劇場作品は2作目であり、初の全編シネスコ作品となった。
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あらすじ
海洋生物学を専攻する大学生の恒夫は、ある夜のバイト帰りに坂道を猛スピードで下ってくる車椅子の女性、ジョゼを助ける。
坂道の上から降りてきたジョゼの祖母曰く、散歩中に目を離した隙に、誰かが車椅子を坂道に向かって押したのだという。
アルバイトとしてジョゼの相手をするように依頼された恒夫は留学費用のためにその依頼を承諾するが、ジョゼの可愛らしい容姿とは裏腹な高飛車な言動に閉口してしまう。
一度はアルバイトを辞めようとしたものの、ジョゼに言われるがままに様々な場所へと外出に付き合わされるうちに距離を縮めていく。
しかし、ジョゼの祖母の死を切っ掛けに、2人の関係に決定的な変化が生じ始める。
登場人物
鈴川恒夫
声 - 中川大志
大阪の大学で海洋生物学を専攻する22歳の大学4年生。
幼少の頃、メキシコの海のみに生息する「クラリオンエンゼル」を近所のアクアショップで見かけて以来、その群れを自分の目で見ることを夢に抱いている。
ダイビングショップを始め複数のバイトを掛け持ち、スペイン語を勉強しつつメキシコの大学への留学費用を貯めている。
1月31日生まれ。
水瓶座。
A型。
ジョゼ
声 - 清原果耶
本名は山村クミ子。
幼いころから車椅子生活を送り、現在は祖母と二人暮らしの24歳。
明るい髪色をしており、色白で華奢な体格と可愛らしい容姿をしているため、恒夫からは年下だと勘違いされていた。
一見高飛車な性格をしており、初対面時は恒夫にきつく当たる。
日中のほとんどを家で過ごしているため外の世界に対する憧れが強く、自室で様々な絵を描いては、自分が自由に好きな場所へ赴く様を想像している。
3月3日生まれ。
魚座。
AB型。
二ノ宮舞
声 - 宮本侑芽
恒夫のバイト先のダイビングショップの後輩。
恒夫に片思いをしているが、想いを打ち明けられずにいる。
東北出身で感情が昂ぶると訛りが出てしまう。
8月3日生まれ。
獅子座。
O型。
松浦隼人
声 - 興津和幸
恒夫のバイト先のダイビングショップの同い年の友人。
茶髪でノリが軽く、言動から女好きであることが伺える。
舞の恒夫に対する想いを察している。
5月27日生まれ。
双子座。
B型。
岸本花菜
声 - Lynn
ジョゼが恒夫と共に訪れた図書館で司書をしている女性。
ジョゼと同い年で、さらにフランソワーズ・サガンのファンであることからジョゼと打ち解け、友人関係となる。
7月14日生まれ。
蟹座。
A型。
山村チヅ
声 - 松寺千恵美
ジョゼの祖母。
ジョゼ想いで優しいものの、障碍者に対する悪意や無思慮を避けるため、ジョゼを夜間にしか散歩へと連れ出さない。
諭吉
声 - 河西健吾
ジョゼ宅の庭に住み着いている野良の黒猫。
恒夫に対しては激しい警戒を示すが、次第に懐いていく。
諭吉という命名は恒夫によるもの。
主題歌・挿入歌
主題歌および挿入歌は、シンガーソングライターのEveが本作のために書きおろした。
Eveにとって初めての映画作品参加となる。
レーベルはTOY'S FACTORY。
主題歌
- 「蒼のワルツ」
作詞・作曲・歌 - Eve / 編曲 - Numa
“祝福感” をテーマに作られた。
映画で使用する際にイントロが加えられている。
監督のタムラコータロー氏は「いきなりボーカルから始まるのが本来の形ですが、映画の演出に合わせてすてきなイントロをつけてもらいました」と語っている。
YouTubeで公開されているMVは、映画版に基づきイントロが入っている。
挿入歌
- 「心海」
作詞・作曲・歌 - Eve / 編曲 - Numa
挿入歌は当初予定されていなかったが、Eveと監督の顔合わせの際に制作が決定した。
その後2022年3月9日には、NTTドコモが「U30ロング割」のプロモーションの一環として、高校生たちが卒業を迎える姿をフィーチャーしたスペシャルムービー「卒業生 100万人の答辞」篇を公開。
合唱バージョンとしてアレンジされた「心海」が使用された。
にんぎょとかがやきのつばさ
劇中に登場する絵本「にんぎょとかがやきのつばさ」。
物語のキーアイテムであり、重要なシーンで使用されている。
そんな絵本「にんぎょとかがやきのつばさ」が、限定版Blu-rayにブックレットとして封入。
あの絵本が現実に。
また、2022年2月3日、ギャラリーOGU MAG+にて松田奈那子さんによる「ジョゼが描いた世界」展が開かれ、ジョゼが部屋に飾っていた絵とともに絵本の原画が展示された。
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ただの恋愛アニメ映画にあらず
多様性への固定観念
我々は多様性という言葉を勘違いをしているのではないだろうか?
思わず猛省してしまった。
本作は、障害者と、それを助ける健常者がどのように距離を取るべきかを教えてくれている。
助け過ぎてもだめ、しかし助けなければならない。
試行錯誤で適切な距離を見つける過程が、この作品では生き生きと描かれている。
そして障害者が、その行動が制約されているが故に、一層自由に願望や夢を膨らませている様も、生き生きと描かれている。
反面、障害者に親切ではない社会のリアルも同時に描かれている。
夢や希望を描くより、厳しい現実の方がむしろ多いくらいだ。
本作を観て確信するのは、求めるべき多様性とは、本来こういうことなのだろうということ。
誤解を恐れずいうなら健常者のアレコレ、例えば同性婚の可否で揉めている時点で、我々の多様性への認識はズレている。
本作はただの恋愛アニメにあらず。
社会の多様性について考えさせられる素晴らしい作品だ。
脇役の活かし方が秀逸
この手の作品に登場するおばあちゃんはだいたいがハマり役だが、本作も御多分に洩れず大当たり。
ジョゼの祖母・山村チヅがとにかく素敵すぎる。
初見は偏屈な婆さんという印象だが、どうしてどうして優しさに溢れている。
こういう年寄りが昔はたくさんいたんだろうに…。
また、当初はただの脇役かと思われた舞ちゃんと隼人。
二人とも恒夫の良き理解者であり最高の友人だが、後半の展開に重要な役割を果たすことになる。
舞ちゃんの不器用さと、隼人の男気は必見。
まさか二人に泣かされるとは思わなかった。
恋愛アニメの傑作
田辺聖子先生の原作が1984年、池脇千鶴さん主演の映画化が2003年。
そして劇場アニメが2020年と、各時代ごとそれぞれが傑作と評されている。
実際に本作を観ていただけたら、その理由がわかるだろう。
物語の展開、作画の美しさ、キャラクターの引き立て方、すべてが満足いく作品だった。
実は恋愛アニメと呼びつつも、恋愛要素はむしろ少なめ。
代わりに描かれる現代社会の分断。
それは偏見であり、差別であり、棲み分けであり…。
だからこそ、「分断の先」を求める心に突き動かされている姿が素晴らしく見える。
本作でもまた知らないことを教えてもらった。
多様性を認め合う社会実現のために、広く皆に知ってもらいたい作品である。
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