ハリウッド映画(2022年)
トップガン マーヴェリック
『トップガン マーヴェリック』とは
『トップガン マーヴェリック』(原題:Top Gun: Maverick)は、2022年公開のアメリカ合衆国のアクション映画。
1986年の『トップガン』の36年振りの続編。
監督はジョセフ・コシンスキー、脚本はアーレン・クルーガー、エリック・ウォーレン・シンガー、クリストファー・マッカリーが務める。
トム・クルーズとヴァル・キルマー(アイスマン役)が前作から続投し、ジェニファー・コネリー、マイルズ・テラー、ジョン・ハム、グレン・パウエル、ルイス・プルマンらが出演する。
前作でマーヴェリックの年上の恋人のチャーリー役を演じたケリー・マクギリスによると、彼女には出演オファーは来なかったという。
その理由として彼女は、自分が年齢相応(撮影時に61才)に容姿が変わり、加えて肥満してしまっていることが原因だと思う、としている。
カメオ出演※1も叶わなかった。
男盛りのマーヴェリック(トム・クルーズは撮影時に56歳)の相手役には前作では名前が二度出ただけで画面に登場しなかったペニー・ベンジャミン※2(演じたジェニファー・コネリーは撮影時に48歳)が新たに登用されている。
パラマウント・ピクチャーズの製作・配給により、2022年5月27日にアメリカ・カナダ・日本で劇場公開。
本作は、前作で監督を務めたトニー・スコットに捧げられている。
俳優や歌手・監督・漫画や小説などの原作者、時には政治家やスポーツ選手などがゲストとしてとても短い時間、映画やドラマ・アニメ・舞台に出演すること。
※ペニー・ベンジャミン
映画『トップガン』の冒頭、マーヴェリックが相棒のグースと共に上官スティンガーから呼び出されるシーンで、マーヴェリックはスティンガーに「管制塔をかすめ飛ぶこと5回、さらに低空飛行で脅かした相手が司令官のお嬢さんときた」と叱責される。
するとグースは「ペニー・ベンジャミンか?」(字幕版では「ベニーか?」)とマーヴェリックの耳元で囁く。
その後もメグ・ライアン演じるグースの妻キャロルが「あなたペニー・ベンジャミンにすごかったんですって?みんな聞いた。他の子のことも全部聞いている」とマーヴェリックをひじで小突くシーンがある。
あらすじ
ピート・"マーヴェリック"・ミッチェル海軍大佐は、米海軍の過去40年間において空中戦で3機の敵機撃墜記録を持つ唯一のパイロットである。
本来なら将官になっていてもおかしくない輝かしい戦歴とは裏腹に、ひたすらに現場主義を貫き昇進を拒み続けている彼は部隊で一悶着起こした関係で左遷され、スクラムジェットエンジン搭載の極超音速テスト機「ダークスター」のテストパイロットを務めていた。
しかし、最高速度がマッハ10に達していないのを理由に、計画が凍結されることを伝えられる。
マーヴェリックは、チェスター・"ハンマー"・ケイン海軍少将が計画凍結を言い渡しに来る前にマッハ10を達成すべく離陸し、見事成功させるが、独断でそれ以上に記録を伸ばそうとした結果、ダークスターを空中分解させてしまう。
無事脱出し帰還したマーヴェリックは飛行禁止を言い渡されてもおかしくない立場だったが、かつて戦闘機パイロットとしてマーヴェリックと共に戦った、太平洋艦隊司令官トム・"アイスマン"・カザンスキー海軍大将の強い要望で、かつて自身も派遣されていたノースアイランド海軍航空基地の「トップガン」における教官職を命じられ、三十数年ぶりに戻ることになる。
とあるナラズ者国家がNATO条約に違反するウラン濃縮プラントを建設し稼働させようとしていたため、それを破壊すべく特殊作戦が計画されており、マーヴェリックは、同作戦に参加させるためにトップガン卒業生から選りすぐられた若き精鋭パイロット達に対し、特殊対地攻撃作戦の訓練を施す教官として抜擢されたのだった。
この任務は、基地周辺の強力な防空網を避けるために険しい渓谷を超低空・超高速で飛行しなければならず、電磁波妨害も行われているため、GPSを用いる最新鋭機のF-35は役に立たないという極めて困難な任務であった。
さらにマーヴェリックは、参加するパイロットの中にかつて事故で亡くなった親友ニック・"グース"・ブラッドショウ海軍中尉の息子、ブラッドリー・"ルースター"・ブラッドショー海軍大尉がいることに困惑する。
マーヴェリックはルースターの母に請われ、彼をグースと同じ目に遭わせないため、海軍兵学校への志願書が受理されないように工作していた過去があった。
ルースターはこの一件のほか、グースがマーヴェリックの後席に乗っていて事故死したことを知って以降、マーヴェリックが父の死の原因を作ったとして一方的な恨みを募らせていたのだった。
マーヴェリックは、電磁波妨害に左右されないレーザー誘導爆弾を運用できるF/A-18E/F スーパーホーネットを任務に使用する機体として定め、ルースター達若きパイロットに厳しい訓練を課すが、彼らは作戦を成功に導けるだけの練度に達せず、ルースターは過去の因縁からマーヴェリックに対して反抗的な態度を取るばかりだった。
さらにパイロットの一人で、僚機を見捨てるなどの行動から問題児扱いされていたジェイク・"ハングマン"・セレシン海軍大尉が、マーヴェリックとグースの過去をネタに軽口を叩いたことで、パイロットたちの間に摩擦が生じる。
自らの過去が招いたトラブルに悩むマーヴェリックを自宅に呼び出したアイスマンは、闘病中の体に鞭打ってマーヴェリックと面談し「過去は忘れろ」という助言を与え、数日後に息を引き取った。
その直後、若きトップガン達を所要練度に到達させられなかったことを理由に、マーヴェリックは教官職を剥奪されてしまう。
マーヴェリックは元ガールフレンドのペニー・ベンジャミンに悩みを打ち明け、二度とグースのような犠牲者を出さないことを誓うとともに、一人のパイロットとしてルースターと向きあうため、そして作戦が必ず成功させられることを証明するために、無断でF/A-18Eを使用して作戦のデモンストレーションを行い見事に成功、パイロットたちの信頼を勝ち得て、任務の際に編隊長として飛ぶ許可を上層部から取り付ける。
そして訪れた特殊任務の日、マーヴェリックたちは空母セオドア・ルーズベルトから飛び立ち、プラント破壊に成功するが、プラント周囲に配置された大量の対空ミサイルからの攻撃にさらされる。
その最中、マーヴェリックとルースターはお互いをかばう形で撃墜されてしまい、敵の航空基地近くでベイルアウトする。
森で再会した2人は敵基地に無傷で残っていたF-14を強奪し離陸、迎撃にやってきた敵の第5世代戦闘機との性能差を腕前とコンビネーションでカバーし撃墜していくが、最後の1機を相手にするときには武装を使い果たしており、さらに脱出装置も故障し進退窮まってしまう。
ルースターを死なせてしまうことをグースに詫び、撃墜されるのを待つばかりのマーヴェリックだったが、そこに空母で待機していたハングマンが駆けつけて敵を撃墜し、窮地を免れる。
無事に空母に帰還した2人は過去を払拭して真の和解を果たし、若き頃のマーヴェリックとグースのように親友となった。
その後、マーヴェリックはペニーの店を訪れるが、あてもなくヨットでのクルーズに出ていた。
そこで、自らの家でルースターと共にP-51の整備等をしながら過ごしていたが、ある日ペニーが娘と共に訪ねてくる。
2人はお互いの帰還を噛みしめるように見つめあい、キスを交わす。
そしてマーヴェリックはP-51にペニーを乗せ、夕日に向かって飛び立って行く。
一方ルースターは、若い頃のグースとマーヴェリックが写った写真の横にピン留めされた、ミッション成功時の自分たちの写真を見つめ、笑顔で亡き父に思いを馳せるのであった。
『トップガン』の36年振りの続編
本作は映画『トップガン』の続編だ。
言うなれば「トップガン2」である。
通常なら、続編制作というのは前作の成否によって決定される。
売れれば続編、売れなければそれきりだ。
そして続編、特に2の場合は視聴者の熱が冷めないうちに制作されるのがセオリーである。
たとえ制作に多少の時間は掛かったとしても、少なくとも制作発表だけはしておくものだ。
しかしその点において本作の制作は、非常に稀有なパターンといえる。
例えば、3まで制作された作品の続編が、時を経て4を制作する…なんてことは、ごく稀にあり得る。
しかし単独作品の続編が、36年も経って改めて制作されるなんてことはまず無い。
ほぼ無い。
無いはずだ。
しかし続編制作までのこのあり得ない年月が、本作の魅力となる最強の副産物を生み出すことになった。
36年の年月によってもたらされた壮大な伏線の数々
続編と銘打うからには、物語の繋がりが必須条件である。
オリジナルキャストの登場はもちろん、前作の設定が引き継がれなければならない。
結果的にはその点において、前作の設定が本作における大変かつ壮大な伏線となっている。
それも36年分の伏線だ。
並の伏線ではない。
オリジナルキャストの登場はさすがに少なかったが、初代『トップガン』から引き継いだ演出や人間関係が、『トップガン マーヴェリック』でそっくりそのまま再現されているから実に面白い。
名シーンの再現
例えば、主人公・マーヴェリックが再び「トップガン」へ配属された時のシーンは、初代『トップガン』と完全にリンクした。
飛び立つ戦闘機向かって腕を振り上げなかったことには過ぎた年月の長さを感じたが、頭の中ではあの頃のマーヴェリックの姿そのものだった。
またマーヴェリックの初講義シーンでは、座っている生徒たちがかつてのマーヴェリックの姿と重なる。
過去にマーヴェリックは教官とは知らずに近づいたシャーロットの登壇に驚いていたが、本作ではその逆で、マーヴェリックの方が何かを思い出したかのように苦い顔をしているのが非常に印象的だった。
まるで初代『トップガン』をなぞるような進行は、ファンなら泣いて喜ぶ名シーンの再現だらけ。
これなら本作の人気も頷けようというものだ。
初代『トップガン』からの因縁
初代から引き継いでいるのは人間関係も然り。
アイスマンの登場に胸を熱くしないファンなんて、いやしないだろう。
当初こそ自信過剰の嫌味な奴だったが、最後は立派なエースの貫禄を湛えていたあのアイスマンが、本作では太平洋艦隊司令官にまで立派に昇進。
これが熱くならずにいられますか?
実は劇中のみならず、現実でも病を患っていたアイスマン役のヴァル・キルマー。
もしかしたらトムさんは、ヴァル・キルマーのために続編制作を熱望したのではないのか?
そう感じられるほど、36年ぶりのふたりの邂逅は実に感動的なものだった。
そんなアイスマンと並ぶサプライズは、やはりルースターの登場だろう。
ルースターは、初代『トップガン』でマーヴェリックの独断専行が災いし殉職した、相棒・グースの息子である。
父・グースの脇ではしゃいでいた幼かったあの子が、いつの間にかこんなに立派な青年になって…。
そして、あの頃のグースと同じようにピアノを弾くルースター。
おまけに、初代『トップガン』の映像をフラッシュバックさせた演出はもはや反則級。
Goodness. Gracious. It's Baby Rooster. 🐓 #FathersDay #TopGun pic.twitter.com/XGBUXobqr3
— Top Gun (@TopGunMovie) 2022年6月19日
この他に気づいけていない初代との繋がりが、いったいまだどれほどあるのか。
それを探してみるのも面白いかもしれない。
このように『トップガン マーヴェリック』を観る上で、初代『トップガン』はマストな作品である。
初代『トップガン』観ずして本作は語れない。
秀逸な演出に古き良き格好良きアメリカを感じる
本作を観ていると、初代『トップガン』を幾度となく思い出す。
それは日本人が憧れたアメリカの姿でもある。
しかし最近の日本人は、何かに憧れる心というものを忘れてしまったかのように思う。
何かに憧れ、そうなりたいと願う心を忘れてしまったように感じる。
独自性を見出すのはもちろん結構なことではあるが、日本の作品ではせっかくの演出に無用な説明をつけてしまうことが多い。
とにかく無粋。
野暮でいけない。
それに反して『トップガン マーヴェリック』の演出は何とも粋であった。
こういう感覚は久しぶりだ。
例えばペニーが扉を開けたまま家に入るシーンには、無用な説明なんかいらない。
説明してはいけないし、もちろん本作に説明はない。
男女間の細かい機微は、そうやって学ぶものだからだ。
しかし日本人は、このようなシーンにすら説明を求める。
理解できないからだろうか?
自ら察すべき演出に無駄な説明を入れるから、日本は少子化が進んでいるような気さえしてくる。
粋な演出といえば、マーヴェリックが任務の際に編隊長として飛ぶ許可を上層部から取り付けるシーンは別格だった。
最難関ミッション。
軍規違反をおかしてまで、このミッションが遂行可能だと証明してみせたマーヴェリック。
そのことでマーヴェリックの処遇に悩んだサイクロン海軍中将が静かに語り出す。
パイロットたちの命も任務の成功も危険に晒すか?
もしくは私のキャリアを懸けて君を編隊長にするか?
その言葉を聞いたマーヴェリックが思わず口を開きかけた瞬間、そっとウォーロック海軍少将が諭す。
今のは答えを必要とする質問ではない。
そう。
この質問に他者の意見は必要ない。
発言することですら無粋である。
何故ならサイクロン海軍中将の答えは、はじめから決まっているのだから。
…最高の流れだ。
こういう演出を待っていた。
こんなやり取りをこそを観たかった。
こんな秀逸な演出を魅せられては、言うまでもなく、古き良き格好良きアメリカを感じざるを得ないだろう。
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