#30
停滞する思考に一石を投じる苦言
声にできない本音を言葉に…
何かと生きづらい世の中で、思ってはいても言葉にできない声がある。
感じていても声にするのが憚られる言葉がある。
それは耳障りが悪く、心地良い言葉ではないのかもしれない。
だが言葉にされて、はじめて気づくこともある。
本稿で取り上げる言葉は、ひとつ間違えれば暴言とも受け取られかねないものだ。
しかし何かを変えるためには、声に、言葉にしてより多くの人に考えてもらうべきだろう。
本稿が停滞する思考覚醒へのキッカケとなることを切に願う。
沢木耕太郎(エッセイ集「銀の森へ」より)
1947年、東京生れ。
横浜国大卒業。
『若き実力者たち』でルポライターとしてデビューし、1979年『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、1982年『一瞬の夏』で新田次郎文学賞、1985年『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞を受賞。
1986年から刊行が始まった『深夜特急』三部作では、1993年、JTB紀行文学賞を受賞した。
ノンフィクションの新たな可能性を追求し続け、1995年、檀一雄未亡人の一人称話法に徹した『檀』を発表、2000年には初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行。
2006年『凍』で講談社ノンフィクション賞を、2014年『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を、2023年『天路の旅人』で読売文学賞を受賞。ノンフィクション分野の作品の集大成として『沢木耕太郎ノンフィクション』が刊行されている。
「銀の森へ」(朝日文庫)
成功の果てにある地獄じみた世界、奇跡のような輝き、静かな悲哀──
映画は、いつも私たちに思いもかけぬものを届ける。
朝日新聞で15年続いた、映画評からはじまる名エッセイ二分冊のうちの一冊。
1999~2007年までの前半90篇を収載。
映画評から始まるエッセイ集。
『父親たちの星条旗』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『ロスト・イン・トランスレーション』などの作品に何を思い、読み取ったのか、独自の深い解釈と思索を端正な文章で綴る。
読めば映画が観たくなること必至。
本稿で取り上げる苦言は『父親たちの星条旗』の論評の中にある。
沢木耕太郎氏は「銀の森へ」の最後にこう綴っている。
"映画の表のメッセージは「祖国のために戦った若者たちは戦友のために死んだ」、もうひとつのメッセージは…"
戦争を美しく語る者を信用するな
彼らは決まって
戦場にいなかった者なのだから
「あなたは祖国のために戦えますか」。多くの若者がNOと答えるのが日本です。安全保障を教えてこなかったからです。元空将の織田邦男教授は麗澤大学で安全保障を教えています。100分の授業を14回、学生たちは見事に変わりました。https://t.co/L76ATs2Bai#言論テレビ #櫻井よしこ pic.twitter.com/6g9aaQ7DZh
— 櫻井よしこ (@YoshikoSakurai) 2024年1月19日
戦場に行かない者が「あなたは祖国のために戦えますか」と問うてくる。
歴史に学ばない愚かな大人が過去の過ちを繰り返そうとしているなかで、多くの若者がこの問いにようやくハッキリNOと答えられるようになった。
至極真っ当な、正常な国となったのだ。
それは喜ぶべきことであっても、嘆くべきことではない。
そもそも国のために戦えぬほど日本から魅力を奪ったのはいったい誰だと思っているのか?
『父親たちの星条旗』のクリント・イーストウッド監督はこう語る。
ずっと前から
そして今も
人々は政治家のために殺されている
先人たちの尊い犠牲を無駄なものにしてはならない。
愚弄してはならない。
『父親たちの星条旗』
第二次世界大戦中、日米がもっとも激しい死闘をくりひろげた島、硫黄島。
この山頂に掲揚された一枚の星条旗の写真、これがある種の「ヤラセ」であり、偶然にもその星条旗を揚げる役割を担ってしまった若い兵士たちの苦悩の物語。
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