アニメ
モノノ怪
秀逸な映像美が生み出す独特の世界観に魅了される名作アニメ
『モノノ怪』とは
『モノノ怪』は、2000年代後期の深夜系テレビアニメ番組として作られた、和製ホラーアニメ作品。
フジテレビ系列「ノイタミナ」枠の第8作目として、2007年7月12日から同年9月27日までの期間に放送された。
5エピソード、12話からなる。
本作は、ノイタミナ枠で以前に放送された『怪 〜ayakashi〜』のエピソード「化猫」の続編で、制作スタッフもほぼ同じである。
前作に続いて、謎の薬売りを主人公とし、近世(江戸時代)の日本をモチーフにした世界(ただし、最後のエピソードのみ近代)を舞台に、「座敷童子」「海坊主」「のっぺらぼう」「鵺(ぬえ)」「化猫」という5つの怪異エピソードがオムニバス形式で描かれる。
退魔の剣の声を担当する竹本英史氏は、全話において何らかの役との一人二役となった。
和風をベースにした独特の世界観の形成
本作は和紙の質感をテクスチャーとして取り入れている他、和風をベースにした独特な世界観を支える美術やデザインにおいても評価が高い。
「海坊主」ではクリムト風な絵。
「のっぺらぼう」では能や屏風絵や表現主義をイメージしたという筆使い。
「鵺」では他の回とは打って変わったモノクロを意識した押さえたカラーと水墨画。
「化猫」では時代に合わせた大正モダンやパブロ・ピカソのゲルニカ風な絵などを効果的に使っている他、各所に様々に解釈可能な暗喩や隠喩を含ませたアイコンを散りばめている。
モブキャラクターの描き方もメインキャラクターとは別を画し、「座敷童子」では黒く潰した顔に回転する小花を散りばめ、「のっぺらぼう」では顔を白地を十字に区切った面布で隠し、「化猫」ではマネキンにして描いている。
メインキャラクターに関しては、デザインした橋本敬史氏は主役の薬売り以外はポンチ絵のつもりで作成したと語っている。
あらすじ
モノノ怪を斬ることができる退魔の剣を携えて諸国を巡る薬売りの男がいる。
薬売りは妖異が現れる場を訪れる。
モノノ怪を成すのは、人の因果と縁(えにし)。
人の情念や怨念にあやかしが取りついたとき、モノノ怪となる。
薬売りはモノノ怪の形と真と理を明らかにし、退魔の剣でモノノ怪を斬っていく。
モノノ怪とアヤカシの違い
第4話での薬売りと柳幻殃斉の説明によれば、アヤカシとはこの世の道理とは別の世界に存在する物の総称であって、その行動原理などを人が理解することは困難であるという。
また、その成り立ちは千差万別であって、人の霊から成るモノや付喪神のように物が古くなって魂が宿ったモノなどがある。
一方でモノノ怪については、まずモノノ怪の "モノ" とは荒ぶる神のことを指し、"怪(ケ)" とは病のことを指す。
人を病のように祟るのがモノノ怪で、激しい情念や怨念がアヤカシと結びつくことによって生まれるモノとする。
そのため、モノノ怪には真(事の有様)と理(心の有様)が存在する。
アヤカシであればまだ封印の呪符などが効く余地があるが、モノノ怪を退治できるのは退魔の剣となる。
秀逸な映像美が生み出す独特の世界観
ジャンルとしてはホラーにカテゴライズされる上に、独特の世界観がで描かれるストーリーには若干の癖があることは否定できない。
だから正直、この作風が苦手な人も多いかとは思う。
それでも『モノノ怪』の映像美が描く独特の世界観は一見の価値があると著者は思う。
エピソードごとに変化する表現法。
表現法が変化しても一貫性のある世界観。
一見すると不可解にみえて、実は解釈可能な暗喩や隠喩を含ませたアイコンは、秀逸以外の言葉を持たない。
和製ホラーといえば、真っ先に映画『リング』の表現法が思い浮かぶが、そういった固定観念を『モノノ怪』は見事に覆してくれた。
和製ホラーには、こんな表現法もあるのか。
あまりに先鋭的すぎて、著者には少し理解するのに苦労するシーンも多々あるが、優れた映像美がそれ以上の刺激と感動を与えてくれる。
気になった人は是非。
しつこいようだが『モノノ怪』の映像美と世界観は一見の価値ありだ。
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