地の塩
ドラマ『地の塩』とは
『地の塩』は、WOWOWの連続ドラマWで2014年2月16日から3月9日まで放送されたテレビドラマ。
出演は大泉洋氏。
連続ドラマW『パンドラ』シリーズをはじめ、数々のヒット作を手がけてきた脚本家・井上由美子さんによる、全4話のオリジナルストーリー。
ドラマには珍しい考古学を材にとり、捏造問題、未解決事件などが複雑に絡み合うヒューマンミステリー。
主演は、連続ドラマW『プラチナタウン』で熱き町長を好演した大泉洋氏。
共演陣には、WOWOW初登場となる松雪泰子さん、そして田辺誠一氏、田中圭氏、板尾創路氏、陣内孝則氏と豪華キャストがラインナップ。
大泉氏が今回演じるのは、勤勉で人望が厚い考古学者。
そんな彼が発掘作業の中で偶然人骨を発見し、これがきっかけで社会を大きく揺るがす事件へと発展してしまう。
あらすじ
3年前、山梨県の塩名町で遺跡の発掘作業をしていた考古学者の神村賢作は、日本にはないとされていた前期旧石器時代の遺物を発掘した。
今もなお専門家による検証作業が続いているが、教科書編集者の佐久間里奈の尽力により、歴史の教科書に掲載されることになる。
塩名は遺跡の町として沸き上がり、観光の町へと変貌を遂げていた。
そんなある日、西多摩の桑見遺跡で発掘作業をしていた神村は、13年前に誘拐・殺害された女子高生の遺骨を見つけてしまう。
当時、未解決に終わったこの事件を担当していた行永刑事は再びやる気を取り戻し、捜査を始める。
そんな中、神村らが唱える前期旧石器時代の学説に否定的な立場を取る国松が、神村の発見は捏造だと里奈に訴える。
教科書は多くの発注を受け、今さら捏造だなどととても言い出せる状態ではなく、里奈は一人で悩む。
真夜中、桑見遺跡の一角で一人土を掘り返す男の姿があった。
13年前に女子高生を殺した犯人が、残る手がかりを隠滅しようとしていたのだ。
神村の捏造の証拠を掴もうと探っていた国松は、男に遭遇し殺されてしまう。
同じ頃、神村の助手を務める馬場は、神村の3年前のある行動を思い出し、「神の手」への疑惑が大きくなっていき、神村の恩師でもある桧山に相談する。
里奈に直接捏造疑惑を問い質された神村は、考古学の発展のために必要な捏造だったと主張する。
栄える塩名町を見てきた里奈は言下に否定できない。
そして遂に神村が、塩名遺跡で本物の前期旧石器時代の人骨を発掘する。
歓喜する神村を見て、馬場は「またやったのか」としか思えなかった。
そんな中、女子高生の遺骨を掘り返され、神村を逆恨みした犯人が馬場を拉致し、神村の命も狙っていた。
旧石器捏造事件
旧石器捏造事件とは、日本の前期・中期旧石器時代の遺物(石器)や遺跡とされていたものが、それらの発掘調査に携わっていたアマチュア考古学研究家の藤村新一氏が事前に埋設しておいた石器を自ら掘り出すことで発見したように見せていた、自作自演の捏造であることが2000年(平成12年)に発覚した事件である。
藤村氏は発掘に携わった遺跡から次々と「新発見」をしたことから「神の手(ゴッドハンド)」と呼ばれ、一躍脚光を浴びたが、後に自作自演によるものだったことが判明した旧石器捏造事件を引き起こした人物として知られる。
1970年代半ばから各地の遺跡で捏造による「旧石器発見」を続けていたが、石器を事前に埋めている姿を2000年(平成12年)11月5日付の「毎日新聞」朝刊にスクープされ、不正が発覚した。
これにより日本の旧石器時代研究に疑義が生じ、中学校・高等学校の歴史教科書はもとより大学入試にも影響が及んだ日本考古学界最大の不祥事となり、海外でも報じられた。
火山灰層の年代のみに頼りがちであったことなど、旧石器研究の科学的手法による検証の未熟さが露呈された事件であった。
なお、縄文時代以降では明確な遺構が地下を掘削して造られており、土の性格から直ちに真偽が判断可能なため、捏造は不可能である。
捏造が与えた影響
日本列島の「前・中期旧石器」研究は、そのような古い時代の石器は日本にはないだろうという批判を当初は浴びていたが、藤村氏の発掘成果によって強力な裏づけを得て、1980年代初頭には確立したと宣言され、捏造発覚前は日本の旧石器時代の始まりはアジアでも最も古い部類に入る70万年前までに遡っていたとされた。
しかし捏造発覚により、藤村氏の成果をもとに築かれた日本の前・中期旧石器研究は全て瓦解し、東北旧石器文化研究所は「学説の根幹が崩れた」と解散に至っている。
さらに、捏造遺跡が学会から抹消されるのみならず日本史の検定済教科書の石器に関する記述さえも消されるに及んだ。
また、中国、韓国、北朝鮮といった歴史教科書問題で日本と対立している国々は、それぞれの国内マスコミで本事件を「日本人が歴史を歪曲しているのが証明された」「一研究家だけの問題ではなく、日本人の歴史認識そのものに原因がある」と大々的に報道した。
また、藤村氏の捏造発覚の翌年の2001年、週刊文春が大分県の聖嶽洞穴についても捏造の疑いありと3度に渡って誌面で展開し、この影響で発掘責任者であった賀川光夫氏が文春に対し、抗議の自殺をする事態が発生した。
歴史というものは…
本作では旧石器の捏造が主題に取り上げられている。
歴史好きとしては、非常に興味深いテーマである。
歴史がどのように事実認定されていくのかが、実によくわかる作品だ。
だが、主題の旧石器捏造については、本作に限って、さしたる問題ではなかったような気がする。
もちろん捏造はいけないことではあるのだが…
我々の歴代認識なんて、実は曖昧なものなのだ。
本作でのテーマとなった前期旧石器時代については、知識が足りないのでもう少し後世の事例を挙げてみよう。
教科書では、今川義元は上洛するために出兵したと教えられるが、最近の通説だとただの領土争いというのが有力だ。
教科書に載っている聖徳太子も足利尊氏も、すべて別人だという説の方が今では有力視されている。
源頼朝だって怪しいものだ。
坂本龍馬に至っては、そろそろ教科書から消えてしまうという噂だってある。
こんなものなのだ。
たかだか150年ほど前の歴史的大事件ですら、何にもわかっていなかったりするのである。
要するに歴史とは、事実が書いてあるかどうかすらわからない誰かの日記を頼りにし、後世の人間が勝手な推測で定めたものが大半なのである。
問題はそれだけではない。
あの『ジュラシック・パーク』でも描かれていように、考古学は金にならない学問で有名だ。
何かしら話題になって注目を浴びなければ、研究に多額の資金は割かれない。
考古学がメインのドラマではあるが、『地の塩』は歴史の話ではなく、考古学が抱えている様々な問題が描かれた作品といっていい。
絶妙なキャスティング
弁が立つ貴重な考古学者・大泉洋
本作は考古学の世界で旧石器の捏造という、実際に起きた問題を主題に置きながら、それにまつわる人間模様と、発掘現場で起こった事件が絡まり合って描かれた物語だ。
地上波でいうところの60分ドラマで全4話。
全4話のドラマというのは無駄がなくてちょうどいい。
映画では描ききれないが、連続ドラマだと尺が余るようなジレンマがない。
キャスティングも絶妙で、考古学界では非常に貴重らしい弁のたつ考古学者役に、大泉洋氏を起用したことはドンピシャの配役だったといえる。
『水曜どうでしょう』でみる、ボヤき・悪態・能書きばかりの大泉洋氏は鳴りを潜め、理知的な学者役に徹している。
だが弁が立つという点で、大泉洋氏の起用はベストキャスティングだったと思われる。
大泉洋氏主演作品の中でも、過去にあまり絡みのない俳優陣との共演も見どころのひとつだろう。
大泉洋×松雪泰子の絡みや、大泉洋×陣内孝則・田中圭の絡みは、なかなか新鮮だ。
普段はあまり見ることができない俳優陣にも注目の作品である。
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