アニメ〈物語〉シリーズ
化物語
『〈物語〉シリーズ』とは
『〈物語〉シリーズ』は、『化物語』を始めとする西尾維新先生による小説シリーズ。
『化物語シリーズ』とも呼ばれる。
イラストはVOFAN氏が担当。
講談社BOXより刊行。
シリーズ第1作である『化物語』は、2006年11月に同レーベルの最初の刊行作の1つとして出版された。
2009年のテレビアニメを皮切りに、ドラマCD・ゲーム・劇場版アニメなど他媒体へも進出している。
21世紀初頭の日本の田舎町を舞台とした、阿良々木暦(あららぎこよみ)と彼に出会った少女たちの、「怪異」に関わる不思議な物語。
サブタイトルは、メインキャラクターの名前+怪異の名前で構成されているのが基本(例えば第五話なら羽川翼の「つばさ」と、彼女が出会った怪異の「猫」を合わせて「つばさキャット」)。
同作者による作品『戯言シリーズ』が多くのキャラクターを登場させているのに対し、本作品は1話ごとに1人の登場人物にスポットを当てるという「アンチ戯言シリーズ」の一面を持っている。
ライトノベルとは言っても挿絵は少なく、パッケージに使用されているカラーイラストの他には、1話につき1枚のモノクロイラストが収録されているのみである。
本作に登場する「怪異」のモチーフは民間伝承であるが、基本的には西尾先生の創作。
怪異と戦って倒すような展開はほとんど無く、怪異の出現した原因を探ったり、謎を解いて事件を解決するというのが本作のストーリーであるが、コメディ要素が強く押し出されており、少女のボケに対して暦がツッコミを入れる夫婦漫才のようなギャグが続く会話シーンが延々と続くなど、怪異の謎解き以上にページが割かれている。
これには数々のパロディや文章ならではのメタフィクショナルな表現も多く、作者の西尾先生は「メディアミックス不可能な小説」というコンセプトで書いたと語っている。
メディアミックス作品の発表以降はそれらをネタにした描写も多い。
更にはラブコメ要素やアクション要素も含まれており、西尾先生は書きたいことを書き連ね、楽しんで書いた作品であると語り、自ら「自信作」と評している。
シリーズは2014年刊行の『続・終物語』で完結となったものの、同作の巻末では「ネクストシーズン」の『接物語』(2021年7月現在未刊行)が発表され、2015年には「オフシーズン」として新たな作品が刊行された。
また2017年から2021年にかけては「モンスターシーズン」が刊行された。
漫画版は大暮維人先生の作画で『週刊少年マガジン』に、2018年15号(2018年3月14日発売、講談社)から連載中。
当初は空き時間を利用して書かれた短編3部作として「メフィスト」投稿用にイラストが無いことを前提に作成されたが、イラスト付きでシリーズ化された。
前作『戯言シリーズ』がライトノベルとして受け入れられていったため、西尾先生は方向転換して堅い小説を書くことを考え、そのアプローチで文学的作品を意識して書かれたのが第1話「ひたぎクラブ」であった。
単純なライトノベルから文学への移行ではなく、活字だけでライトノベルは実現できるのか、という実験の面もあった。
ただ、そのような方向性で書かれたのは『化物語(上)』収録の第3話「するがモンキー」までであり、『化物語(下)』は執筆する段階でイラストがつくことが決まっていたため、話の方向性が変わっている。
また、アニメ化されることを知らなかった時点で書かれた『傷物語』と、アニメ化されることを知った時点で書かれた『偽物語(上)』でも、雰囲気は変わっている。
本編は2021年10月現在でファーストシーズン、セカンドシーズン、ファイナルシーズン、オフシーズン、モンスターシーズンからなる五部構成である。
ファーストシーズンは『化物語(上・下)』、『傷物語』、『偽物語(上・下)』、『猫物語(黒)』の6巻。
全9話で構成されている。
阿良々木暦と怪異に纏わる6人の少女たち(ひたぎ、真宵、駿河、撫子、翼、忍)の出会いと、2人の妹(火憐、月火)について描かれる。
各巻のタイトルは当初は「人偏(亻)の字のつく漢字+物語」だったが、最後のエピソードのみ獣偏となっている。
セカンドシーズン発表後に便宜上「ファーストシーズン」と呼ばれるようになった。
物語は全て暦の一人称視点で語られる。
時系列は暦の高校二年生から三年生になる春休みの時期に始まり、1学期、そして夏休みの時期までを描く。
アニメ『化物語』とは
西尾維新アニメプロジェクトの第1弾として企画され、2009年7月よりUHF系ほかMBS、BSジャパン、AT-Xにて放送。
BSジャパンでのUHFアニメの放送は『かんなぎ』以来2回目となり、これ以降はなく、続編作品である『偽物語』のBS放送局もBS11に変更されている。
ハイビジョン制作で全15話。
第12話までがTV放送され、13話から15話までは公式ホームページ上で無料で期間配信された。
13話は当初は2009年10月28日より配信予定であったが都合により11月2日に変更され、さらに作業の遅れにより1日ずれ11月3日より配信開始。
15話は、2010年6月26日深夜に配信され完結に至った。
さらに、2010年10月1日から11月5日まで、バンダイチャンネルにて第壹話から第伍話を期間限定で配信。
アニメ化にあたり登場人物のセリフの改変を避けるなど、原作をほぼ忠実にアニメ化しているが、「なでこスネイク」はセリフの削除やシーンの追加などが多数行われ、原作と異なる個所が多い。
また第壹話冒頭では『傷物語』が90秒のダイジェストで描かれている。
手描きのアニメーションがメインだが、シーンによっては実写やCG、正字体による文章、文字そのものを記号的に使った演出を交えた新房昭之監督作品らしい絵作りが特徴である。
また、シリーズディレクターは『さよなら絶望先生』や『まりあ†ほりっく』のオープニングなどで個性的な映像表現が話題を呼んだ尾石達也氏である。
「HGP明朝B」のフォントを用いた真っ黒な背景に「黑齣 kuro.(629)」と書かれたカットが代表的(時折背景の色によって「赤齣 aka.(135)」「白齣 shiro.(4646)」などとなったりする)。回想シーンや怪異がらみのシーンの一部には劇団イヌカレーが参加しており、独特の演出がなされている。
テロップや神原の部屋の赤い本のイメージはジャン=リュック・ゴダールの映画から来ている。
なおパッケージの際の修正(おもに後半の放送分)や、インターネット配信の大幅な遅れがみられ、「つばさキャット 其ノ伍」のコメンタリーでも「好みのシーンから完成させてる」、「線画だけで色が付いてないのにコメントできない」、「重要なシーンにだけは色が付いている」とコメントされている。
また尾石氏は特に12話以降の作成スケジュールは厳しかったとコメントしている。
次回予告は原作者の西尾先生による脚本であり、本編にはほとんど登場しない火憐と月火の掛け合いという形をとった。
西尾先生は次回予告の脚本作成時、月火が主要人物となる『偽物語(下)』の執筆をしておらず、この脚本の執筆により月火のキャラクターが見えてきた面もあると語っている。
また、予告においては針玉ヒロキ氏による登場人物のデフォルメキャラが登場している(ひたぎのデフォルメキャラだけは、第六巻特典のブックレット内漫画にのみ登場する)。
『化物語』『偽物語』『猫物語(黒)』「セカンドシーズン」『憑物語』『終物語』『暦物語』はテレビ放送およびインターネット配信された。
あらすじ
高校3年生の阿良々木暦は春休みにとんでもない「事件」に巻き込まれて以来、人とは少しだけ異なった部分があった。
「事件」を通じて親しくなったクラス委員長の羽川翼と共に文化祭の準備をしていた5月のある日、ひょんなことから2年間ろくに会話すらしたことがない病弱なクラスメイト戦場ヶ原ひたぎの秘密を知る。
彼女には、およそ体重と呼べるものがほとんど無かったのである。
暦は秘密を知った日の放課後、ひたぎから秘密をばらさないようにと猟奇的な脅しを受け、口許をホチキスで刺される。
それにもめげずに彼女の問題解決に対する協力を申し出る。
暦は事件の後遺症として他人よりも異常に傷の治りが早くなっており、ひたぎの負わせた傷もすっかり塞がっていた。
ひたぎによると、2年前に1匹の不思議な蟹に出会い、重さを根こそぎ持っていかれたのだという。
彼女の体重は平均的な体格にもかかわらず5kgしかなかった。
春休みに遭遇した事件解決に際し、暦と翼は怪異に詳しい忍野メメという風来坊のオッサンの力を借りた。
暦とひたぎはメメに相談するため、彼がねぐらにしている学習塾跡の廃墟ビルに向かう。
メメはそこで金髪の少女で「吸血鬼の成れの果て」という忍野忍と暮らしていた。
「助けるんじゃない。君が勝手に助かるんだ。ボクは力を貸すだけだ」と語るメメ。
メメによるとひたぎの体重を奪った蟹もやはり怪異であるという。
ひたぎはメメの力を借り、自分の体重を奪った怪異と再会するのだが、それには彼女自身が抱え持つ別の問題が関係していた。
「事件」の影響から怪異に纏わり付かれるようになった暦。
暦に助けられて以降、毒舌ツンデレながら好意を抱くようになるひたぎ。
しかし、暦とひたぎが親しくなったことで暦の周囲は再び慌ただしくなっていった。
〈物語〉シリーズのテーマ曲は名曲揃い
supercell『君の知らない物語』
〈物語〉シリーズではテーマ曲の変わるスパンが非常に短い。
ストーリーが変わればテーマ曲も変わるといった具合で、2〜4話ごとに曲調のジャンルも雰囲気も変わる。
その中でもひときわ輝きを放ったのがsupercellの『君の知らない物語』だ。
大好きな曲で、このDL時代にCDまで手に入れたくらいだ。
『君の知らない物語』の歌詞の心情は『化物語』に登場する羽川翼、星座の件は戦場ヶ原ひたぎを連想させるが、作詞をしたryoは特定の誰かを想定して作詞したわけではないと言っている。
〈物語〉シリーズは『化物語』から観るべし
〈物語〉シリーズは個々に『〇〇物語』と銘打たれ、その数たるや非常に膨大だ。
作品のタイトルが似ていることや、そもそも放送順と時系列が一致していない。
シリーズの多さから「どこから見れば良いのか」と混乱しがちになる〈物語〉シリーズだが、基本的には放送順に追う事で物語を理解する事ができる。
〈物語〉シリーズの原点であり、戦場ヶ原ひたぎ・八九寺真宵・神原駿河・千石撫子・羽川翼と言った作品を代表するキャラクターが登場するのが『化物語』である。
〈物語〉シリーズを未視聴だという人はまずはここから観るといいだろう。
一見するとライトノベル
だが内容はまるで重厚な小説を読んでいるような感覚
西尾先生がライトノベルから方向転換して堅い小説を書くことを考え、そのアプローチで文学的作品を意識して書かれ、アニメ化されたのが『化物語』第1話「ひたぎクラブ 其ノ壹」である。
だが一見するとライトノベルそのもの。
およそ中二病のような稚拙な発想の主人公。
ギャルゲーファンをも取り込もうかという、多分なエロ要素。
そういう要素が嫌いではないが、本格文学作品とはほど遠いかと思われる。
しかし観進めるにしたがって、その考えは改まることになる。
いや、正確には前述したライトノベル要素が消えるわけではない。
だがただのライトノベル作品とは、完全に異なる印象に変わっていく。
基本的には会話もしくは独白形式で物語が進むのだが、会話の内容はまるで中二病そのものにもかかわらず、知的指数が異常に高い。
豊富な語彙力と巧みな言葉遊びによる会話シーンは『化物語』の最大の特徴といえる。
状況を事細かに説明しつつ、時折ギャグやパロディを織り交ぜ脱線しながらもしっかり本軸はぶらさない、小気味の良い会話劇には思わず引き込まれてしまう。
時折織り交ぜられるギャグやパロディも一筋縄ではいかない。
観ているこちらが版権問題を心配するほど、思い切り良く豪快にパクり、それを瞬間的に描写している。
また小気味の良い会話の中で、非常に繊細な問題に斬り込んでいるのも特徴である。
なかなかデリケートな話題にも大胆に踏み込み、一切の忖度なしで、過激とも受け取れるような表現になっている。
アニメ『化物語』を独断と偏見によってひと言で表現するなら、「低俗のようで実は非常に高尚なエロアニメ」である。
もの凄くアホらしく、もの凄くハイレベル。
映像センスも素晴らしい。
舞台は現代ながらも、まるで異世界のような世界観。
主要登場人物以外はその他大勢が一切登場しない独特の表現法。
それでいて、その他大勢の気配だけは感じられるから不思議だ。
あまりに振り切りすぎた表現法が故に、好みが分かれる作品ではあると思うが、個人的には傑作アニメ。
神谷浩史氏や櫻井孝宏氏、斎藤千和さんや坂本真綾さん、沢城みゆきさんや花澤香菜さんといった、超豪華な声優陣も見逃せない。
少しでも興味を持ったなら、第1話だけでも是非観ていただきたい。
きっと止まれなくなるだろう。
〈物語〉シリーズの名言
いつも変な会話ばかりしている〈物語〉シリーズだが、実は名言が多い。
しかもどこかで聞いたことがあるような言葉でもない。
なかなか独創的な名言にも注目だ。
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