西田敏行主演映画
火天の城
史上最も山場のない時代劇も壮麗にして威風辺りを払う圧巻の安土城天主は必見!
洋画の派手さこそないがどうしようもなく心にしみる
洋画の派手さこそないがどうしようもなく心にしみる…
それが邦画の良さだと思う。
昔は当たり前のように洋画一択だったが、近年の邦画はなかなかバカにできない。
製作費でハリウッドに勝てないならシナリオと演出と演技で勝負といわんばかりに、邦画のクオリティーは年々高くなっている。
たしかにハリウッド映画は華やかで見栄えもするが、どうしても大味になってしまっているように感じる。
演出的にはどうしても地味な邦画ではあるが、シナリオ的に感性が合うのはやはり制作者が同じ日本人だからだろうか。
もちろん作品によるが、邦画には洋画のクライマックス的派手な見せ場がほとんどない。
ドッカンドッカン爆破しないし、ガガガガ派手な銃撃戦もない。 カッコいい戦闘機も、イカツイ戦車も邦画とは無縁に近い。
だが、最近そんな邦画が観ていてとても心地よい。
ガチャガチャとうるさいだけの映画は苦手だ。
時には深く考えさせられ、じわじわ心にしみてくる映画を好むようになってからというもの、邦画が面白くて仕方ない。
日本人ならではの感性で演出し魅せていくのが邦画だ。
ここではまったく派手ではないけれど、どうしようもなく心にしみて今なお強く記憶に残っている邦画をご紹介したいと思う。
『火天の城』とは
『火天の城』は、山本兼一先生による小説、およびこれを原作とした日本映画である。
第11回(2004年)松本清張賞受賞作、第132回直木三十五賞候補。
映画『火天の城』とは
映画『火天の城』は山本兼一先生による同名小説を原作とした時代劇。
東映の配給により、2009年9月12日に全国公開された。
DVDは2010年2月21日発売。
映画公開に併せ、コーエーの歴史シミュレーションゲーム『信長の野望・天道』とタイアップし、岡部又右衛門の武将データが配信された。
登場人物・キャスト
(※敬称略)
- 岡部又右衛門 - 西田敏行
尾張国で代々「宮大工」として数々の建築に携わった岡部家の棟梁。
- 岡部田鶴 - 大竹しのぶ
又右衛門の妻。
- 岡部凛 - 福田沙紀
又右衛門の娘。
- 戸波清兵衛 - 夏八木勲
穴太の石工頭で、又右衛門の親友。
- 池上五郎右衛門 - 石橋蓮司
京の大工。岡部のライバル的存在。
奈良の宮大工。
法隆寺大工棟梁筆頭でもある。
岡部に安土城築城を命じるが、その内容は破格であった。
総普請奉行として安土城築城に携わる。
義昌配下の杣人(木こり)の長。
- 弥吉 - 上田耕一
又右衛門の右腕として活躍する老大工。
- 平次 - 寺島進
岡部一門の若頭。
あらすじ
1576年(天正4年)、尾張熱田の宮大工、岡部又右衛門は織田信長から、近江安土(現・近江八幡市安土町)に五重の天守閣を持つ城の設計・建築を命ぜられた。
「天高くそびえ立つ、天下一の城を作れ」…。
この物語は、立ちはだかる難問を岡部と周囲の人物たちの知恵と協力によって克服し、「安土城」として完成させるまでを描いたものである。
岡部又右衛門は実在した人物
岡部又右衛門(生没年不詳)は、室町時代から安土桃山時代の番匠。
正七位上修理亮の官位を得たという。
諱は以言、吉方とも伝わる。
『岡部家由緒書』に拠れば、岡部家は室町幕府将軍家の修理亮を勤めた家柄とされる。
天正元年(1573年)に近江・佐和山の山麓で長さ30間、幅7間、櫓100挺の大型軍船を建造(『信長公記』巻六)。
天正3(1575年)、信長の熱田神宮造営に被官大工として参加した。
安土城築城では大工棟梁として、5重7階の天守造営を子の岡部以俊(岡部又兵衛)と共に指揮し、その功により織田信長より「総大匠司」の位と「日本総天主棟梁」の称号を与えられ小袖を拝領した。
本能寺の変の際、本能寺に信長と同宿しており、以俊と共に戦死したとの説があるが、変後は織田信雄に仕え、天正11年(1583年)8月27日に尾張国中島郡赤池郷を、さらに9月17日に熱田にて200貫文の地を宛がわれている(張州雑志・分限帳)。
没年は不明だが、死後に以俊の子の宗光が相続し、「岡部又兵衛」を名乗った。
なお、現在の名古屋市熱田区にあった岡部屋敷跡には名古屋市教育委員会によって史跡表札が立てられている。
安土城とは
安土城は、琵琶湖東岸の近江国蒲生郡安土山(現在の滋賀県近江八幡市安土町下豊浦)にあった城(山城)。
城址は国の特別史跡で、琵琶湖国定公園第1種特別地域になっている。
安土城は織田信長によって現在の安土山に建造され、大型の天守(現地では「天主」と表記)を初めて持つなど威容を誇った。
建造当時は郭が琵琶湖に接していた(大中湖)。
地下1階地上6階建てで、天主の高さが約32メートル。
それまでの城にはない独創的な意匠で絢爛豪華な城であったと推測されている。
総奉行は丹羽長秀、普請奉行に木村高重、大工棟梁には岡部又右衛門、縄張奉行には羽柴秀吉、石奉行には西尾吉次、小沢六郎三郎、吉田平内、大西某、瓦奉行には小川祐忠、堀部佐内、青山助一があたった。
この城を築城した目的は岐阜城よりも当時の日本の中央拠点であった京に近く、琵琶湖の水運も利用できるため利便性があり、加えて北陸街道から京への要衝に位置していたことから、「越前・加賀の一向一揆に備えるため」あるいは「上杉謙信への警戒のため」などと推察されている。
城郭の規模、容姿は、太田牛一や宣教師の記述にあるように天下布武(信長の天下統一事業)を象徴し、一目にして人々に知らしめるものであり、山頂の天主に信長が起居、その家族も本丸付近で生活し、家臣は山腹あるいは城下の屋敷に居住していたとされる。
1582年(天正10年)、家臣・明智光秀による信長への謀反(本能寺の変)の後まもなくして何らかの原因によって焼失し、その後廃城となり、現在は石垣などの一部の遺構を残すのみだが、当時実際に城を観覧した宣教師ルイス・フロイスなどが残した記録によって、焼失前の様子をうかがい知ることができる。
日本の城の歴史という観点からは、安土城は六角氏の観音寺城を見本に総石垣で普請された城郭であり初めて石垣に天守の上がる城となった、ここで培われた築城技術が安土桃山時代から江戸時代初期にかけて相次いで日本国中に築城された近世城郭の範となった。
そして普請を手がけたとの由緒を持つ石垣職人集団「穴太衆」はその後、全国的に城の石垣普請に携わり、石垣を使った城は全国に広がっていった、という点でも重要である。
城郭遺構は安土山の全体に分布しており、当時の建築物では仁王門と三重塔が、現在 城山の中腹に所在する摠見寺の境内に残っている。
また二の丸には信長の霊廟が置かれている。
滋賀県は1989年(平成元年)から20年にわたって安土城の発掘調査を実施した。
南山麓から本丸へ続く大手道、通路に接して築造された伝羽柴秀吉邸や伝前田利家邸、天皇行幸を目的に建設したとみられる内裏の清涼殿を模した本丸御殿などの当時の状況が明らかとなり、併せて石段・石垣が修復工事された。
調査は当初予定通り2008年(平成20年)度の予算をもって2009年に終了した。
20年間で調査が実施されたのは史跡指定面積の約20%(17ヘクタール)にとどまったが滋賀県の財政事情から事業継続には至らず、全域の調査(50年から100年必要とされる)は将来にゆだねられることとなった。
壮麗にして威風辺りを払う安土城天主
天主のその具体的な姿については長年研究が続けられており、多数の研究者から復元案の発表が相次いでいる。
基本的には同時代人の記述にかかる「信長公記」や「安土日記」に基づき、イエズス会宣教師の記述を加味するところまでは一致しているが、解釈をめぐっては意見が分かれており未だ決着を見ない。
その姿は5重6階地下1階で最上階は金色、下階は朱色の八角堂となっており、内部は黒漆塗り、そして華麗な障壁画で飾られていたとされる。
信長が権力を誇示するために狩野永徳に安土城を描かせた金箔の屏風がアレッサンドロ・ヴァリニャーノに贈られ、彼の離日に同行した天正遣欧使節によりヨーロッパに送られて教皇庁に保管されているとの記録がある。
それは安土城の姿を知る決め手の一つと考えられ、現在に至るまで捜索が行われているが、未だに発見されていない。
極めて個人的に
史上最も山場のない時代劇
『火天の城』は織田信長の厳命を受け、安土城の築城という前代未聞の難事業に取り組むことになった宮大工と、その周囲の人々が織り成す人間模様を、ドラマティックに描いた話題の時代劇。
織田信長、羽柴秀吉、丹羽長秀など戦国時代好きにはたまらないパワーワードが並ぶなかで、本作の主役は武将ですらない大工の棟梁。
時代劇とは銘打つものの、合戦シーンは皆無に等しい。
もちろんチャンバラシーンもない。
極めて個人的にではあるが、史上最も山場のない映画と呼べるのが本作である。
日本初のイルミネーション・ライトアップは安土城
織田信長は天正9年(1581年)、7月の盂蘭盆会(うらぼんえ)での安土城をライトアップ。
これはルイス・フロイスの「日本史」に記録されている。
いかなる家臣も家の前で火を焚くことを禁じ、色とりどりの豪華な美しい提灯で上の天守を飾らせた
信長は無数の提灯で安土城を闇夜に浮かび上がらせて、人々の目を楽しませたという。
これが日本初のイルミネーション・ライトアップといわれている。
さすがは戦国の革命児・織田信長である。
考えることが先進的だ。
闇夜に浮かび上がる巨大な安土城をみた当時の人々の驚きと感動は計り知れない。
本作は安土城築城について描かれているだけあって、こんなマニアックな史実にも触れてくれていて、歴史好きとしては嬉しい作品だ。
まったく山場のない名作映画
前述した通り、本作はまったくと言っていいほど山場がない。
だが、結論から言うなら面白い作品であった。
築城というマニアックな題材を、ほとんど人間模様だけで描き切った。
我々現代人は、古の巨大建造物をみると「いったいどうやって建てたのか」と思いを馳せるだろう。
昔の人は便利な機械も重機もない時代に、知恵とマンパワーのみで巨大な建造物を作ってみせた。
その過程を現実にみているようで、非常に興味深い作品に仕上がっている。
もちろん好き嫌いはわかれるところだが、知られざる歴史の一幕を覗き見る感動は、本作を推す十分な理由である。
興味がある方は是非。
ちなみに豪華演者の中には、 "メロリンキュー" こと山本太郎氏の顔も。
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